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編集所代表。書く人。編む人。「tuesday」共同主宰「HinT table」メンバー 元とびラー(6期) TOP画像:N.S.ハルシャ「ふたたび生まれ、ふたたび死ぬ」(2013年)

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    アートやアートプロジェクト、 アートコミュニケーションやらしきもの。 そんなものたちの感想や妄想や。

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    共同主宰・たかやまのアート・レポートなど *tabloidはメンバー個人が作成するマガジンです。 *マガジントップ画像:齊藤智史氏の“イシキ”より

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最近の記事

【文学フリマ東京38】出店します

文学フリマ東京38に出店します。 ここ三度ほど、文学フリマ東京に足を運び その面白さにはまってしまったので、 自分でも出てみたくなり とびラー仲間の方をお誘いして 「往復書簡」を引っさげて(鋭意制作中) 出てみることにしました。 すれ違いながらも「大人の事象」を語り続ける 往復書簡。書名は『野を恐れる』。 装画、装丁は東京藝術大学大学院を修了された 若き作家さんにお願いしました。 (FIXしましたら、公開していく予定です) もひとつおまけに、間に合ったら〝ビールZINE〟

    • コマとコマの間に潜み込むもの。

      アートプロジェクトハウス「Open Letter」で開催されている〝最後の手段〟の「NEW首都高」という展示を見に行った。 〝最後の手段〟とは何か。いや、誰か。 〝最後の手段〟は、有坂亜由夢、おいたまい、コハタレンさんの三人が二○一○年に結成したビデオチームだ。手描きのアニメーションと人間や大道具小道具を使ったコマ撮りアニメーションなどを融合させ、有機的に動かす映像作品がその特徴。人々の太古の記憶を呼び覚ますのが狙いだという。 〝最後の手段〟というユニット名は、行き先の定

      • 解いた周縁に起ち上がるのは線なのか。

        もう随分時間が経ってしまった。鎌倉に三瓶玲奈さんの個展を見にいったのは八月の下旬のことだ。その日は美学者で一般社団法人「哲学のテーブル」代表理事の長谷川祐輔さんと詩人のカニエ・ナハさんを迎えて三瓶さんが語るというトークイベントも用意されていて、一通り画を拝見した後にそこに紛れ込ませていただきもした。 三瓶さんは日頃、まるで修行僧のように線を描くプラクティスをこなしている。手首を固定してスライドした線や、キャスターごと身体を移動させたときの線など、とにかく線を引いている。その

        • 映像エスノグラフィーが捉えるもの

           久しぶりに映像エスノグラファーである大橋香奈さんと、大橋さんと同じ慶應義塾大学政策・メディア研究科で学んだジョイス・ラムさんの映像を見に、藤沢アートスペースまで出かけた。大橋さんは、私が何度か書いている〝Home in Tokyo〟のナビゲータを務めた、いわば私の先生のような立場の人だ。ジョイスさんとも〝Home in Tokyo〟で出合っている。 今回は、ジョイスさんの展示がメインで、その特別企画として〝家族を巡る2本の映像上映会〟が催され、そこに大橋さんの作品も掛かった

        【文学フリマ東京38】出店します

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        記事

          透けているけど、明らかにそこにあるもの。

          川端さんの絵は藝大の学部時代から拝見していて いつもその精緻な鉛筆の表現に驚嘆してきた。 しかしながら、川端さんはただ正確に対象物を描くということではなく 人と人(あるいは対象となるもの)との間に横たわる相互作用の不全を描いている印象がある。 歪んだ(あるいは歪められた)目元。その視線は行く先を失い、 見るものもキャンバス上の人物の目線を捉えることはできない。 やがてその視線が捉えたであろう人物たちが、霞の向こうに現れる。 けっして焦点が合うことはなく、ディテールは定かでは

          透けているけど、明らかにそこにあるもの。

          そこに封じ込められた時代感。

          パナソニック汐留美術館 開館二〇周年記念展 「ジョルジュ・ルオー かたち・色・ハーモニー」 汐留にジョルジュ・ルオーを見に行った。 パナソニック汐留美術館は、開館以来、ルオーの作品を継続的に収集し、 二〇二三年三月時点で二六〇点を所蔵しているそうだ。 今回は、フランスや国内の美術館などから、国内初公開作品含む 初期から晩年までの代表作約七〇点が展示される。 〝かたち・色・ハーモニー〟とは、ルオー自身の言葉。 理想の装飾芸術を目指すうえでのルオー自身が掲げたモットーだという

          そこに封じ込められた時代感。

          測れない距離感の向こう側。

          インスタで開催されていることを知ったムラタ有子さんの展示に伺った。 六本木通りを西麻布方面へ。けっこう歩いたところで、右に折れてすぐ。 ギャラリーサイド2。初めて伺うギャラリー。 ギャラリーには鍵が掛けられていて、インターホンを押して来訪を告げる。 すると二階からギャラリストの島田さんが下りていらして解錠してくれる。 この展示は、新作油彩画一四点と新旧ドローイング六点で構成されている。 ムラタ有子さんを拝見するのは初めてだと告げると、 基本的な情報を的確に伝えていただいた。

          測れない距離感の向こう側。

          オフの微笑みにほっとする。

          三好桃加 初個展「仁王像たちのオフの日」  寺院の山門に二体一対で立つ仁王像。ここから先に仏敵を入れないために日々守護についている。現代ではこの仁王像たちもそれほどの激務をこなしているわけではなく、休日には休日の仁王像たちがいる。それをユーモラスな視点でものにしたのが、東京藝術大学大学院文化財保存修復彫刻研究室を二〇二二年三月に修了した三好桃加さんだ。  彼女の作品は、藝大の卒展・修了展で大いに話題になったそうだが、事前予約のチケットが取れずそれを真に受けて当日に行ってみる

          オフの微笑みにほっとする。

          まさかの、3331 Arts Chiyoda閉館

          「地域に開かれたアートセンター」を標榜していた3331 Arts Chiyodaが閉館するという。思いもよらぬアナウンスに接して、本当に驚いた。千代田区との契約が満了となるためだというが、なぜ更新されなかったのかはわからない。とにかく3331のこれまでを振り返る最後の大型特別企画展「3331によって、アートは『    』に変化した」が開催されていて、私がそのことに気づいたのは、最終日の二日前だった。  3331の存在を知って行き始めたのは、「とびらプロジェクト」のメンバーに

          まさかの、3331 Arts Chiyoda閉館

          アーティストZINEの発行

          共同主宰として関わっている「tuesday」という アートコミュニケーション・ユニットで 藝大卒の若きアーティスト小久江峻さんの ZINEを刊行しました。 ぜひ、記事をご覧ください。

          アーティストZINEの発行

          誰かに違いない「彼女」たち。

          江口寿史 イラストレーション展「彼女」 千葉県立美術館に江口寿史イラストレーション展「彼女 〜世界の誰にも描けない君の絵を描いている〜」を見に行った。 いやぁ遠かった。 約500点もの作品が展示されている。 いろいろと引っかかるものはあったのだが、 “ライブドローイング”のドキュメンタリー映像がまずもって面白かった。 目から描く場合があるかと思えば、髪から書き始めるときもある。 どの絵も江口寿史の中にある“彼女”なのだが、 ペン先(おそらくボールペンの類)の微妙なタッチ

          誰かに違いない「彼女」たち。

          時空冷凍庫から取り出された、解凍できないメッセージ。

          キンマキさんの画をはじめて拝見したのは、五美大展だった。 「木を見て森を見ず」という作品である。渓谷の河原に、豆粒のような人物たちが描かれている。自然の大きさを感じさせる画だ。もう一枚のキャンバスには、その人物たちがバーベキューをしているシーンが描かれている。背後に川が流れている。そしてもう一枚。今度はバーベキューの網の上がクローズアップされている。バーベキューをやっている人物のスニーカーがわずかに描かれている。 あたかもドローンで空に舞い上がったごとく、あるいは河川敷数十セ

          時空冷凍庫から取り出された、解凍できないメッセージ。

          洞窟と窓。あるいは夢について。

          移転後のTAKU SOMETANI GALLERYに初めて伺って、内田麗奈さんの個展「クロマニヨンの夢」を拝見した。 内田麗奈さんは、2019に東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻(油画第一研究室)を修了し、現在は、東京藝術大学油画科助手を務めている作家だ。 壁にかかるベロア生地を支持体としたカーテンのようなものは、洞窟壁画をイメージしたものだとか。内田さんにとってカーテンは瞼のようなものであるらしい。 閉じているカーテンを洞窟壁画に見立て、そのカーテンの影に隠れている窓

          洞窟と窓。あるいは夢について。

          子どもの頃と交信する、私小説のような作品たち。

          上北沢にあるギャラリー「Open Letter」で室井悠輔さんの「Bサイ教育」(会期終了) という展示を見た。室井さんは1990年、群馬県生まれ。2019年に東京藝術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻を修了した作家だ。 それにしても、いつも「Open Letter」にお邪魔するのは、展示最終日になってしまう。なぜだろう。 ま、それはともかくまずは、室井さんのステートメントから言葉を抜き出してみよう。 室井さんの展示作品数は、このギャラリーとしては多い方

          子どもの頃と交信する、私小説のような作品たち。

          境涯から生み出された稀有な短編たち。

           ルシア・ブラウン・ベルリン (Lucia Brown Berlin)の『掃除婦のための手引き書』を読んだ。  彼女は1936年生まれのアメリカの短編小説家だ。彼女には少数の熱烈なファンがいたらしいが、名声を得るには没後11年の歳月が必要だった。そのきっかけとなったのが短編集『掃除婦のための手』だ。  日本でも同書は、岸本佐和子さんによって翻訳され、二○二○年本屋大賞翻訳小説部門第二位、第一○回Twitter文学賞海外編第一位など、それなりの評価を得て、話題にもなった。  そ

          境涯から生み出された稀有な短編たち。

          「私東京」という極私的まなざし。

          考えてみれば、「東京」などという巨大なものを生きる術を私はもっていない。極私的な、その昔、椎名誠が半径5メートルの世界を書くと宣言していたように思うが、そのような個人的な世界を生きているのみだ。 そういうナノ的な世界が絡まりあって「東京」というものはできているのだろう。だからこそ、東京の一分子として、私たちが認識するもの。まずはそこにまなざしを向けようとしなければ、何も見えてこない。 「私東京」というのはおそらくそうしたアプローチだ。 雨の銀座。森岡書店。 ここで展示され

          「私東京」という極私的まなざし。