かゆみ (超ショートショート)

その男は3才の頃に頭の中、脳の部分がかゆかった。しかしある日家にあったピアノの鍵盤を偶然叩き音が出ると、脳のかゆみが一瞬和らいだような気がした。それからピアノばかり弾いていたのだが、そのうち作曲をするようになり、発見した。自分でいい曲が出来たと思った時にかゆみが大分おさまるようなのだ。しかし、しばらくするとまたかゆくなる。これは究極的な曲を作ればかゆみから完全に開放されるのではと思い、それから一生作曲し続けた。結局死ぬまで脳のかゆみはとれなかったが、その事は生涯誰にも言わなかった。だって恥ずかしいから。そう、モーツァルトは恥ずかしがり屋。

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