松井 孝憲│越境学習×社会投資

グロービス経営大学院 准教授/KIBOW社会投資ファンド プリンシパル。社会起業家への…

松井 孝憲│越境学習×社会投資

グロービス経営大学院 准教授/KIBOW社会投資ファンド プリンシパル。社会起業家へのベンチャー投資(社会インパクト投資)と、異業種チーム(越境学習)におけるチームワークの研究、2つの領域を軸に活動しています。

最近の記事

ジョブ・クラフティング:仕事を自分で「創り直す」ことから見える可能性

東京都立大学の高尾先生、藤澤さんより『ジョブ・クラフティング――仕事の自律的再創造に向けた理論的・実践的アプローチ』をご恵送いただきました。 本書は、今、経営学において、理論的的にも実務的にも注目の高まっている「ジョブ・クラフティング」について、日本の研究者が集って執筆した書籍です。こちら、実務の方々にも示唆深い内容だと思いましたので、本書の読了後の感想をシェアします。 本書のテーマ、ジョブ・クラフティング(JC)とは、一言でいえば、個人が仕事の内容・やり方・意味づけを見

    • 「幸せなキャリア」を科学的に考える:経済学・心理学・哲学のアプローチから

      これまで人事・組織コンサル、人材開発(越境学習・パラレルキャリア)とヒト系の分野に携わってきたからか、キャリアについてご相談を頂くことがしばしばあります。 また自分自身、人に比べて転職が多い経歴のため「キャリア」について考えるタイミングも多い気がしています。 そんな中、色々な学問分野を勉強するに「あ、これキャリアを考えるのに参考なる」と感じた議論にいくつか出会ったので、自分の整理も含めてまとめてみました。 取り上げるのは、経済学・心理学・哲学など、キャリアそのものを直接

      • 「週休3日制」が組織に及ぼす効果とは:科学的な実証研究から分かったこと

        1. 話題の「週休3日制」で語られていないこと社員の「週休3日制」。最近いくつかの企業が先進的に取り組み始めて注目を集めています。 その背景として、ここ数年間、企業人事の領域で“働き方改革”のテーマが上る中、新しい施策として話題になっているようです。 ただ個人的には、この成り行きは、話題先行となってしまっている感が否めませんでした。 というのも、これまで「週休3日制」については、いくつかの先進事例は発信されるものの「実際、週休3日制にどんな意味があるのか」については"体

        • 社会起業では、通常のビジネス以上に「丁寧な組織運営」が成功のカギになる

          先日、(社)KIBOW × BLP-Networ(※)共催のセッションがあり、自分もそこに同席させていただきました。 ※BLP-Network(BLPN):NPOや社会起業家を法務面で支援する弁護士のプロボノ団体 そのセッション中、BLPN代表の瀧口徹さんらとお話した「社会起業家の危機管理」の内容がとても勉強になりました。 少し実務的な内容ですが、社会起業に関心ある方へシェアしたいと思います。 1. 通常のビジネスと社会起業、世間の見方のちがい「年間売上5,000万~

        ジョブ・クラフティング:仕事を自分で「創り直す」ことから見える可能性

          社会起業家を輩出できるのは、どんな世の中か?:10万人のデータからの実証

          NPOやソーシャルベンチャーの経営を考える時、やはり外せないのは「社会起業家のリーダーシップ」です(自分のライフワークでもあります) 最近、この「リーダーシップ」について感じるのは、リーダーシップは個人単体では成立しないということです。 言い換えると、リーダーシップは、本人の資質だけでなく周囲の人々や社会との関係で生まれるモノ、と考えるようになりました。 だとすると、社会起業家のリーダーシップを考える時、彼らを取り巻く社会環境にも目を向けるべきでは?と考えられます。

          社会起業家を輩出できるのは、どんな世の中か?:10万人のデータからの実証

          リーダーシップ研究と実務の比較:「個人の資質」にリーダーシップを矮小化しないために

          最近、ちょっとリーダーシップ研究について調べて、「これ、実務にも重要だけど、結構見落としがちだな」というポイントがありました。 せっかくの研究知見が実務で活かされないのはもったいないので、「リーダーシップ研究の変遷」と「実務である状況」のギャップ、そして「両者のギャップを埋めるには」について、考えた点をまとめておきたいと思います。 1. リーダーシップ研究の変遷トレンドまず、リーダーシップ研究についてですが、これまでのリーダーシップ研究は、大別すると以下のような流れで進展

          リーダーシップ研究と実務の比較:「個人の資質」にリーダーシップを矮小化しないために

          ソーシャルイノベーションにおける知識マネジメントの役割

          これまで社会人×社会起業家の協働プロジェクトを推進する際に意識していたのは、できるだけ現場に近づいて実務を重視することでした。 ただ最近、これまでの実務を振り返ってよりブラッシュアップできるよう、理論も勉強しなきゃと感じています。 そんな中、「社会課題解決のためのイノベーションを進めるのに、組織のナレッジマネジメントがどんな役割を果たすのか」について理論的なフレームワークを提示した研究と出会いました。 「Knowledge-Based Social Innovation

          ソーシャルイノベーションにおける知識マネジメントの役割

          NPO・企業・行政のリーダーシップ比較と、今後のNPOの可能性

          少し前、「トライセクター・リーダー」に関する研究紹介をFacebookに投稿したところ、色々な方より反響・コメントいただきました(ありがとうございます<(_ _)>) なので、そこで出た議論を踏まえて、もう少し詳しく、研究内容や実務的な所感についてシェアしたいと思います。 とってもマニアックな内容ですが、セクターを越えた協働やリーダーシップについて興味ある方への参考になれば! 1.「トライセクター・リーダー」って?そもそも「トライセクター・リーダー」というコトバは、20

          NPO・企業・行政のリーダーシップ比較と、今後のNPOの可能性

          NPO経営に効くリーダーシップスタイルとは?

          「オーセンティックリーダーシップ」。昨年に『なぜ、あなたがリーダーなのか』の新版が出て注目されてました。この"価値観や信念に基づいたリーダーシップ"が、どうやらNPOやソーシャルベンチャー等のコミュニティ重視の組織運営に有効そうだと報告する調査に出会いました!ソーシャルとリーダーシップ論の結びつきが面白かったので内容シェアします! 「Managing People in Social Entrepreneurship Ventures」という研究ペーパー。ここでは146の団

          NPO経営に効くリーダーシップスタイルとは?

          企業・NPO・行政で、リーダーシップの形態は変わるのか?

          「トライセクター・リーダー」。1-2年前にHR/人事領域で頻繁に登場したコトバです。「ビジネス・ソーシャル・パブリックの3つをまたいでリーダーシップを発揮する人材が重要」というコンセプト、実は今まであんまりピンときてませんでした。というのも「3つのセクターでリーダーシップがどう違うの?」がイマイチ腹落ちしなかったのです。この視点がないまま「トライセクター」というコトバが一人歩きしてしまったので、最近あんまり言われなくなったのかなぁと感じていたんですが、先日この論点に関する2つ

          企業・NPO・行政で、リーダーシップの形態は変わるのか?

          「事例研究」には未来を創る力がある

          初めて、ビジネス書を読んで涙を流しました...『ブラックスワンの経営学:通説をくつがえした世界最優秀ケーススタディ』。経営学会の最優秀論文を基に「事例研究」の活かし方を示した本書、自分が悶々と抱え続けていた問題意識に、ストレートに回答を示してくれました! 近年、ビジネスでも「エビデンスベースド」の考え方が広がる中、統計分析や定量調査が注目を集め、調査/研究の主流となっています。僕も統計分析は大好きだし、定量調査の大切さは理解しているつもりです。 それでも、大学院で歴史研究

          「事例研究」には未来を創る力がある

          「組織の枠を越える」研究の集大成が出来ました

          この度、約3年半に渡って法政大学大学院 石山 恒貴教授とご一緒してきた協働研究が書籍化され、ついに献本いただきました!! 『越境的学習のメカニズム:実践共同体を往還しキャリアを構築するナレッジ・ブローカーの実像』。内容自体は編集確認の段階で拝読していたのですが、あらためて実物を手にすると、とても感無量です...。 2014年より二枚目の名刺で実践してきた「社会人× NPOのプロジェクトを通じた人材開発」のチャレンジが集大成になった気がしています! 本書では石山教授の提唱する

          「組織の枠を越える」研究の集大成が出来ました

          異業種プロジェクト運営のTips(案)

          いま、東京・仙台・大阪で7件の「社会人×NPO/ソーシャルベンチャー」のプロジェクトが進行中です!色んなプロジェクトを見る中、取り組みが上手くには共通項があるなぁと感じたので、自分の備忘も兼ねて、業種・セクターを越境するプロジェクト運営のTipsをまとめました。(同様の活動される皆さんの参考になれば!) ※写真は現在進行中のプロジェクトの様子。皆さんの実践、本当に素晴らしく尊敬しますm(_ _)m ◆異業種プロジェクト運営のTips(案)◆ ①プロジェクトはスタートが最も

          異業種プロジェクト運営のTips(案)

          NPO/ソーシャルベンチャーの組織特徴を測る方法

          最近「NPO/ソーシャルベンチャー × 企業」の協働を進める中で持つようになった問題意識。それは「社会課題に取り組む組織」って実は色んな形態があるのに、その多様性が企業から(あるいはソーシャルセクター内でも)なかなか理解されないこと。NPO/ソーシャルベンチャーの活動形態は、メンバーの出自や活動分野、目指す規模感によって全く違ったりするもの。その多様性を見落としてしまっていることが、企業×ソーシャルの協働が上手くいかない原因の一つなんじゃないかと。そんな中、ソーシャルセクター

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          "タイミング"を考えることは"生き方"を考えること

          ダニエル・ピンクの新刊読了!翻訳版が待ちきれず「日本語になる前にレビューしたろ!」という目標で読み始めた『When:The SCIENTIFIC SECRETS of PERFECT TIMING』。期待通り、科学的なエビデンスに基づいたビジネスライフの提案が満載です。めっちゃ素敵だったので少し内容をシェアします! 本書の構成は以下のとおり。 「Part.1:The Day(第1-2章)」では、人の1日のバイオリズムの波を解明して、3つのタイプ分け(朝型のヒバリ・夜型のフク

          "タイミング"を考えることは"生き方"を考えること