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【満員御礼】「中之島文楽」を振り返って 10月14日・15日

10月14日と15日の2日間、中之島の大阪市中央公会堂で「中之島文楽」が開かれ、光栄なことに司会を拝命した。

2日間ともに、ぎっしり満員のお客様!
この公演は、これまで文楽を見たことが無い人にも気軽に楽しんでもらえるよう、分かりやすく文楽に親しんでもらおうと企画された。

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シャンデリアが煌めき、黄金の装飾が施されている中央公会堂大集会室の舞台に文楽の床が作られ、定式幕が引かれている。ミスマッチなようで不思議と調和していて特別な空間になっていた。
 
今回は「道行」の名作を2本上演。1つは「妹背山婦女庭訓」から「道行 恋の苧環」。もう1つは「曽根崎心中」から「天神森の段」。
対照的な2つの「道行」を一度にご覧いただくことができ、満足感の高い舞台だったのではないだろうかと思う。
 
司会者として難しかったのは、30分間のトークコーナー。
文楽の技芸員さんお2人と直木賞作家の大島真寿美さんが加わってのトークショーである。
ラジオ番組でも、ゲストが3人いると大変。
話をどのように組み立てるか?しかも、文楽初心者向けに「技芸員さんに文楽の世界へ入ったきっかけなども聞いてほしいという協会側の意向がある一方、トークコーナーのタイトルは「ミミヨリな道行の話」。

間違いなくこれまでで最高難度だったが、ご出演の皆さんに助けていただいた。竹本織大夫さんは実演を交えて「天神森の段」の注目ポイントを解説して下さって、会場からは「へぇ~!ほぉ~!」と唸り声。

人形遣いの吉田一輔さんは、ずっと展示されていた人形の首(かしら)と、
お父様の桐竹一暢さんや吉田蓑助さんから譲り受けた人形の首では、顔つきが全然違うという…人形にはやはり魂が宿るのだという話をして下さった。
作家の大島真寿美さんは、とても可愛らしいお人柄で舞台袖で文楽を鑑賞するのは初めて。真横からかぶりついてご覧になった感想を楽しそうに語って下さった。
 
私も大島さんと一緒に初めて舞台袖から文楽を見せてもらったのだが、
一体の人形を三人で遣うので「道行 恋の苧環」で舞台上の三体が動きを揃えて踊る場面では、9人の人形遣いさんが激突しながら、ひしめき合っている。小道具を人形に持たせる役目の黒子さんは、ハイハイのような姿勢でお客さんに見えないように移動する。

人形は、人形遣いさんにお姫様だっこされているような恰好で舞台袖に運ばれるのだが、人形遣いさんが首を持って舞台袖に移動すると、怖いくらいに役者の顔つきになる。
そして、幕が「シャッ」と引かれて舞台上に飛び出した瞬間、魂が宿るように見えた。

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音響が良く、特に和楽器の音色が美しく響く中之島中央公会堂。
この空間に鶴澤燕三らの三味線の音色と、竹本織大夫さんの淀みない美声が響き渡れば、人形たちはだんだんと表情豊かに、自分の意思を持って動いているように見えてくる。

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あと、自分が結婚したからだろうが、曽根崎心中の天神森の段ではお初と徳兵衛が可哀想で、こんなに胸に迫るものを感じながら曽根崎心中を見たのは初めてだった。

ちなみに、『寛太郎とたかおのツレビキ』でご一緒している鶴澤寛太郎さんは参加せず。「お前 俺出ぇへんのに勝手に出んな。」という言葉を残して、彼は地方巡業へ旅立って行ったのだった。

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