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800人以上の相談に乗ってきて。相談に乗る時、わたしが気を付けていること

高校生の時、メールで相談に乗るボランティア活動を始めた。
相手は主に10代の方。それからの約5年、メールや対面、電話での相談に乗り続け、800人以上の方のお話を伺ってきた。

プライベートでそんなに相談されるタイプではないので、特に最初の頃は相手の求めていることとわたしの提供するものが合わないことがあって、迷惑もかけてしまった。

それでも人と向き合い続けることで、話を聴き続けることで、少しずつ「相談に乗るときに大切なこと」が見えてきた……と思う。

相談に乗るとき、わたしが気を付けていること

プライベートでも仕事でも、相談に乗るときに気を付けているのは以下の7つ。

①決定権は相手に委ねる
②解決する方法があると信じる
③「悩む人」ではなく「人」として接する
④冷静に言葉を理解する
⑤根本的な課題に向き合う
⑥共感と賛同を分けて考える
⑦余裕のないときは事前に伝える、断る

一つひとつについて、じっくりと向き合ってみたい。

①決定権は相手に委ねる

相談に乗る中では、必要に応じてアドバイスや提案をすることもある。
しかし、わたしの言葉はあくまで「提案」であり、「指示」じゃない。

わたしにできるのは、耳を傾け、口を出すことだけだ。
代わりに何かをしたり、痛みを肩代わりすることはできない。

あくまで決定権は相手にある。
わたしがした提案を採用してもいいし、聞き流してもいい。

それなのに、人はつい「せっかくアドバイスしたのに、行動してくれてない!」と感じてしまう。
でも、人の意見を鵜呑みにするのは危険である。それが自分にとって良いものか、そうではないのか、それは本人にしか分からない。
自分で選んで、決断して、行動を起こさなければ、意味がない。

だからわたしは、決断できるその時まで、相手の決定を待ちたい。委ねたい。その時まで、寄り添うと決めたから。

②解決する方法があると信じる

わたしが日頃向き合うのは、主に10代後半くらいの、中高生たちだ。
家や学校で悩みを抱えていても、保護者の承諾なくしては家を出ることさえできず、学校を変えることも容易ではない。

それでもわたしは、信じている。
彼ら、彼女らの悩みを解決する方法があると。
その苦しみは永遠に続くものではないと。

そう信じて、向き合い続けている。

もちろん、すぐに取れる方法は少ない。
気持ちを整理したり、視点を変えたり、ストレス発散したり。いろいろと試してみるけれどなかなか報われないときもある。
もしかしたら、根本的に解決する方法は、今すぐには見つけられないところに隠れているのかもしれない。

それでも、信じる。
豊かな未来があると。幸せを感じ取れると。人を愛され、人を愛せると。
そう信じて向き合うからこそ、見えてくるものもあるのではないだろうか。

③「悩む人」ではなく「人」として接する

悩んでいる人の人生は、100%悩みで埋め尽くされているわけではない。
声を出して笑う日があり、好きなものがあり、大切な人がいて、凹む夜もある。
さまざまな日々の中の一部分、「悩み事を抱えている」というページが見えているに過ぎないのだ。

なにより、わたしたちが「悩んでいる人」として接すると、相手もその枠に当てはまろうとしてしまう気がする。かえって、その人の自ら立ち上がる力を奪ってしまう。

傷口を抉らないよう気遣い、配慮することは大切。でも、枠に当てはめようとはしたくない。

あくまで相手は一人の人間だ。そのことを自覚して、人と人として向き合うことから、「相談」は始まるのだと思う。

④冷静に言葉を理解する

悩みを相談する人の中には、その悩みを整理しきれていない人や、気持ちが溢れすぎて言葉に落とし込めない人もいる。
攻撃的な言葉になったり、「ごめんなさい」しか言えなくなってしまうときもあるだろう。どうしようもなく申し訳ない気持ちになって、「大丈夫です!!」と笑っちゃう人もいるはずだ。

その言葉一つひとつの意味を、意図を、その奥にある感情を、丁寧に汲み取りたい

攻撃的な言葉を使うのは、これ以上傷つくことを恐れているからかもしれない。
「ごめんなさい」と言い続けるのは、何かひどく怒られたような経験があるからかもしれない。
「大丈夫です!!」と言っているけれど、わたしに遠慮しているのかもしれない。でも、ここではこの言葉を尊重して、一度距離を取ったほうがいいのかもしれない。

そんなふうに、模索する。可能性を踏まえて、どんな言葉や態度が相手にとってちょうどいいのかを考える。

同じ言葉でも、その意図は三者三様。パターンとか傾向とかに惑わされず、一人ひとりと向き合いたい。

⑤根本的な課題に向き合う

彼ら彼女らの告白する「悩み」と、根本的な課題が異なる場合もある。

例えば、「最近、友達とうまくいかなくて」という相談があると、だいたいは「友達との間にあったこと」について考えるだろう。トラブルが起きたのかとか、何か変化はなかったかとか。
でももしかしたら、その人のメンタルバランスが崩れていて、それがイライラに繋がっているのかもしれない。家族とのトラブルが他の人間関係にも影響しているのかもしれない。

根本的な課題は、認識しにくい。
「あ、今、自分のメンタルバランス崩れてるな」と即座に認識できる人は、そう多くないはずだ。

だからこそ、他者であるわたしたちが、少し俯瞰的な立場から考えてみる必要がある。

この人の本当の悩みはなんだろう?
何を解決すれば、気持ちを楽にできるんだろう?

今悩む相手にも寄り添いながら、その根本を掘り下げていくのはとっても大変だけれど。丁寧に掘り下げることを、忘れないでいたい。

⑥共感と賛同を分けて考える

わたしは相談を受ける時、よく相手に共感の意を伝える。

「それは、つらかったね」
「話すの、勇気いったんじゃないですか?」
「一生懸命、頑張ってこられたんですもんね」

わたしと相手は別々の人間だから、中には賛同しかねるものもある。でも、共感する。共感と賛同は別物だからだ。

例えば、「人に攻撃的になってしまう」という相談の時。
その人に必要なのは、「そんなのダメだよ!」という言葉ではない。
もちろんそれ自体は良いことではないが、その気持ちは理解できる。だからわたしは、「そういう時もあるね、しんどかったんじゃないですか」と伝えたい。

意見が違くても、共感はできる。
共に感じる、相手の気持ちを理解しようとする姿勢を示すことで、より深く相手の言葉を深掘りすることができるはずだ。

⑦余裕のないときは事前に伝える、断る

その場では、わたしは「相談を受ける人」であり、相手は「相談をする人」である。
しかし、時にはわたしも「相談をする人」になるし、相手が「相談を受ける人」になることもあるだろう。

そしてそれは、バランス良く分配されるわけではない。
相手が相談したいとき、わたしに相談を受ける余裕があるとは限らないのだ。

アンハッピーなのは、にも関わらずわたしが相談を引き受けてしまった時だ。
結局わたしは応えきれず、途中で相手の手を離すことになってしまうだろう。

だから、誰かから「相談したいんだけど……」と言われたとき、自分にその余裕があるかをよく考える。そして、それが無ければ、正直に伝える。
あなたの力になりたいとは思っていること、また元気になったらぜひ話を聞かせてほしいことを添えて。

相談を受けている途中で何か不幸な出来事があったときにも、なるべく早めに伝えるようにしている。

どんな人だって、他者の力になれるし、他者の力を必要とする。
「力にならなきゃ!!」と肩肘張らずに、等身大の自分を受け入れたい。

「相談の乗り方」に正解はない。これからも「向き合い方」を模索したい

ここまで書いたけれど、この7つはあくまで「わたしが相談に乗るときに気を付けていること」だ。

相談の乗り方に正解はない。(望ましい行動や、NGな言葉はあるが、「正解」ではなく「ヒント」として考えている。)
ましてわたしは相談のプロではないし、人によって大切にしたい部分は異なると思う。

だからこそ、模索し続けたい。
どう人と向き合うのか。どう話を引き出すのか。どう相手の幸せを願うのか。

相談に乗ることだけでなく、対話一つひとつにも丁寧に向き合いたい。

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