見出し画像

花占い

 好き、嫌い、好き、嫌い。

 花びらをむしりながら、あの人の気持ちをさぐる。

 好き、嫌い、好き、嫌い。

 花びらは、きっと私に、あの人の気持ちを教えてくれる。

 好き、嫌い、好き、嫌い。

 好きだと、良いな。

 好き、嫌い、好き、嫌い。

 嫌いだったら、やだな。

 好き、嫌い、好き、嫌い。

 嫌いだったら、無かったことにしよう。

 好き、嫌い、好き、嫌い。

 好きだったら、告白してくれるのを待とう。

 好き、嫌い、好き、嫌い。

 全然、終わんない。

 好き、嫌い、好き、嫌い。

 こんなにむしってるのに、まだ半分も減ってない。

 好き、嫌い、好き、嫌い。

 コスモスでやれば良かった。

 好き、嫌い、好き、嫌い。

 でも、花びらが8枚だから、嫌いになっちゃうんだよね。

 好き、嫌い、好き、嫌い。

 マリーゴールドがあれば良かった、あれは13枚だから。

 好き、嫌い、好き、嫌い。

 マーガレットでも良かったけど、今どっちも咲いてないんだよね。

 好き、嫌い、好き、嫌い。

 ああ、なんか、疲れてきた。

 好き、嫌い、好き、きら……。

「やだ!ちょっと!アンタおばあちゃんのダリヤむしってなにしてんの?!それ、明後日ブーケにするって言ってたよ?!」
「え?!うそ!…でもまだ他にもたくさん咲いてるし…」

「全部使うって言ってたから、千切ったこと知られたら…誕生日ケーキもスカートもなくなると思うけど!?」
「そうなの?!それは困る!お母さん、どうしよう…!」

「ダメダメ、そんなところに捨てたらバレバレじゃないの!ほうきで集めて、早く片付けなさい!」
「わ、わかった…!」

 花占いは、結局最後までできなくて。

 好きか、嫌いか、わからなかったんだよね。

 だから、なにも変わらない毎日を、ずっと過ごしていたんだ。ごく普通におしゃべりして、笑いあって、たまにケンカして。

 そうこうしていたら、誕生日がきて。

 無事、おばあちゃんのケーキも手作りスカートもゲットして。

 ウキウキして庭に出たら、となりのクラスのぼんやりした男子に…誕生日プレゼントをもらって。

 花占いをしなくても、気持ちを知ることができたんだよね。


「おばあちゃん、ここのお花、どれかひとつ、もらっても良い?」

「ああ、いいよ。…恋占いでもするのかい?」


 プレゼントは、花の種だったんだ。植木鉢に植えたら、きれいに咲いて。種を取って、また蒔いて。また花が咲いて。

 ……何度も花占いをしたっけな。


 花びらは五枚だから、毎回、好き、嫌い、好き、嫌い、好きってなるんだよね。


 本人が目の前にいるのにって、いつも笑われたなあ……。

 ……ふふ、なつかしい。


「…ッ!ち、ちがうよぅ、その、き、きれいだから?もらうだけ!!」

「そうかい?じゃあ…このおじいちゃんの白いお花をあげようね。」


 私は、孫に、大好きな白いスミレの花を一輪、差し出して……。


 空の彼方にいる、大好きだった人を思い出しながら、にっこりと……笑ったのだった。

↓【小説家になろう】で毎日短編小説作品(新作)を投稿しています↓ https://mypage.syosetu.com/874484/ ↓【note】で毎日自作品の紹介を投稿しています↓ https://note.com/takasaba/