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ゴミ屋敷をめぐるてんやわんや

旦那の兄が、頓死した。

真夜中にコンビニに出かけ、足もとの凹みに躓いて転び、そのまま頭部を強打して朝まで誰にも発見されず放置されていたのだ。

葬儀を済ませた後、兄弟一同が勢ぞろいして、義兄の家に出向いたのだが。


「ちょ……なに、これ……。」

長男が、言葉を失っている。三男も、四男である旦那も、嫁一同も、皆、あまりの惨状に言葉を失った。旦那の実家であるこの家、義兄が長きにわたって一人暮らしをしていたのだが、信じられないレベルのゴミ屋敷になっていたのである。

崩落した壁の一部が敷地外にはみ出しており、どぶの中に積まれている。
玄関ポーチにはおびただしい量のゴミ袋が積まれ、最下層は袋が劣化して中身が飛び出している。

昔車を二台停めることができたという玄関前のスペースには、段ボールや空のペットボトル、スプレー缶?弁当の殻などが都心部のゴミ処理場顔負けの状態で積み重なっており、切った木の束や庭から伸び放題の雑草、ホースに自転車……みっちりとモノが積まれていて、とてもじゃないが侵入経路が見つけられない。

「おいおい、マジかよ!!何この請求書の束!!!」
「久々に来たけど、このごみ屋敷は本当に……もう燃やすしかねえな!!」
「ダメでしょ、火災保険も入ってないのに。」
「ねえ、私こんなとこ入りたくない!!」
「俺このにおいダメだわ、吐いていい……?」

倒壊した柿の木を乗り越え、なんとか玄関にたどり着いたものの、ドアを開けた途端…凄まじい悪臭と目を覆いたくなる惨状が襲いかかり、すぐさま撤収を決めた。

どこから手を付けていいのか、これからどうしたらいいのか、敷地外の道路の端で頭を抱える、縁者一同。

ガス代、水道代の請求書が山のようにあり、止まっている?らしい。
…夥しい量のカセットコンロのガス缶と水のペットボトルが積まれているのは、そのせいだと思われる。

市役所からのお知らせ?の封筒が山のように放り出してある。
…税金などは一切支払っていないようだ。

そのわりには、電気は繋がっていて、自動でピカピカと点灯するサーチライトが実にうっとおしい。
…電源切ればいいのに…ってスイッチまでたどり着けそうにない。

「兄貴テレビ好きだったから、電気代だけは払ってたんだな。」
「スマホ代は兄ちゃんが払ってたんだっけ?ファミリー割使いたいって丸め込まれてたよね。」
「結局一度も電話代金払ってもらってないわよ……。」
「とーちゃんとかーちゃんの遺産全部持ってったから5、600万はあったはずなんだけどな。」
「通帳この中からさがすの?!絶対探せないよこんなの!」
「業者呼んで片付けてもらうしかねえな。」
「うちの実家片付けた時、めちゃめちゃきれいだったけど30万かかったわよ。」
「じゃあ俺たちで片付ける?」
「無理だろそんなの。太い木や動かせないようなでっかい棚もあるんだぞ?」
「こんなものすごい家、百万じゃ足りないと思うよ?」

完全に詰んでいる。

六人の中年がそろって頭を抱えていると、見慣れない車が一台、近くに止まった。中から、真面目そうな男性が二人下りてきて…こちらにやってきた。

「すみません、吾味碁未男さんのご家族の皆様ですか?わたくし、市役所の環境保全課のものですが。」
「「「はあ。」」」

義兄は、近所でも相当の鼻つまみ者だったらしい。

伸びに伸び切った庭の木は隣の家や近隣に落ち葉を落としまくり、実をつけすぎた柿の木は道路側に倒れ、その衝撃で崩壊した壁は完全スルー、回覧板は一度も回さず、台風が来るたびに電線を越える高さの木々が派手に揺れ、苦情が殺到していたとのこと。

兄弟が集まっているのを見かけた近所の人が、すかさず市役所に関係者がいるから話をするよう依頼の電話をかけたらしい。仕事の速さに感心するとともに、即刻動かねばならないほどの最優先事項として市から認識されている状況に、事の深刻さを知る。

「五味さんね、何度伺ってもご在宅じゃなくて、手紙も見て頂けず、電話も止まっていてどうにもお話ができなくて困っていたんです。危険なので、木の伐採と壊れた壁の撤去を、一刻も早くお願いしたくて。…と言いますか、撤去が決定してるんですけど、家主さんの許可がなくて困り果ててたんです。」

話を聞くと、通路にはみ出している部分に関しては市が撤去を行ってくれるらしい。住宅地のど真ん中であり、大きな木が倒れると多大な被害が出るというので、伸びきった木もある程度は電力会社が伐採してくれるとのこと。

「あの、もしこちらのおうちを片付けるご予定があるようでしたら、処分業者を紹介しましょうか。」

こちらがごみ屋敷を処分しようにも処分代が出せそうになくて困っていることをぼやいたら、格安の業者を紹介してもらえる事になった。市としても、このようなごみ屋敷を放置されてはたまったもんじゃないので、一刻も早く処分してもらいたくてたまらないのだろう。


……とんとん拍子で、片付けが進むと思われたのだが。


倒壊した木をどかし、壊れた壁材を処分し、玄関前のゴミを撤去し始めたあたりから、おかしな現象が起きるようになった。

庭の木を切っていると、突然チェーンソーの電源が落ちる。
庭の大きな石を運び出すときに、作業員の足の上に落下してけが人が出る。
昼間なのに、サーチライトが頻繁に反応して作業員の目をくらませる。
切っても切っても電気がつく。
誰もいないはずの家の中からおかしな音がする。
突如破裂した、止まっているはずの水道管。
いきなり鳴るピンポン。
つながっていないはずの電話が日に何度も鳴り響く。

もらい事故で入院することになった長兄。
尿管結石で入院することになった三男。
腸閉塞で入院することになった四男。
網膜裂孔で緊急手術することになった長兄嫁。
顎関節症の悪化で口が開けられなくなった三男嫁。
ゴミ捨ての手伝いに来ていた長兄息子は彼女にフラれ。
ゴミ捨てのために車を出した三男娘は脱毛サロンでやけどを負い。
興味本位で見学にやってきた三男息子は自慢のカスタム自転車を盗まれ。


「悪い……もう、お前しか残ってない、片づけ、頼む……。」

青い顔の旦那に頼まれて、最後の砦として私が参戦することになってしまった。庭の木をある程度伐採し、玄関前がすっきりしたところで、作業は中断されている。

誰もいない、玄関前でしばし一人で模索する。
……さあて、どうしたものか。

この、一連の怪奇現象は、まごうことなく義兄の仕業である。
……義兄は、ばっちりこちらの会話を聞いているのだ。

―――こんなゴミばっか集めやがって!!
―――ホントゴミはゴミ集めに夢中になるというか…。
―――こんなもん全部捨てなきゃダメなんだよ。
―――まず玄関先から捨てていこう、次に家ん中だな。
―――来月忙しくなるね、一か月で終わるかなあ?
―――こんなクソゴミ時間かける方が無駄なんだよ!
―――うーわ!SNSに上げてやろwww
―――この中に貴重品なんか一つもないからな、全部捨てりゃいいんだ。
―――ごみが無くなれば、土地は広いし角地だもんね、売れるんじゃない?
―――売れたら山分けしようぜ!
―――とーちゃんとかーちゃんの時は全部持って行かれたもんなあ、今回は仲よく三等分だ!


……私は、人見知りのぼっち属性だ。

和気あいあいとおしゃべりしながら作業するタイプじゃないので…黙って、ずっと旦那の横で佇んでいたのだが。

実は、ばっちり、義兄の鬼の形相を、見ていたり、する。

故人の前で、皆さん実に遠慮なく、言いたいことを言ってしまわれた。
……故人は、相当お怒りだ。

これはまずい…、怒りで怨念化していらっしゃる。
この怒りを鎮めるためには……。

義兄の尊厳を回復しつつ、義兄の望むような展開を見せつけて差し上げないとダメだろう。まずは、誰がどう見てもゴミでしかないものを、宝物として認識するところから始めねばなるまい。

玄関前で一人腕を組む私の前で、義兄が仁王立ちになってこちらを睨んでいる。
……生前は私と目を合わせようともしなかったくせに、怨念化するとずいぶん気が強いことだ。

おそらく、私が足元の落ち葉ひとつでも拾ってゴミ袋に入れようもんなら、すぐさま足を取ってぎっくり腰にでもするつもりなんだろう。
……あいにくだが、私は己の身を傷つけるつもりは微塵もない。

ただ、現状を確認するためだけに私はここに来たのだという体で、そっと玄関前から移動する。ゴミの山に危害を加えないことが分かりさえすれば、敷地外から出てしまえば、義兄は何もできない。

怨念化している義兄の力は、怒りがトリガーとなっている。

怒りがパワーの源になっており、怒りを感じた人に乗り移ったり、怒りを感じた人に恐怖を味わわせるために怪奇現象を起こすことができるのだ。
乗り移っては健康な皆さんの体の脆弱な部分をいじって、ダメージを与えてすっきり気分爽快になっているようだ…。

怨念を鼻くそみたいに飛ばし、ケツの穴の小さい不幸をお見舞いするあたり……ホントせせこましい。

まるで自分が神になったみたいに思っているみたいだけど、怨念としてはへっぽこだ。全然気づいてないようだけど、自分が長らく住んでいたこの場所から移動することもできないくらい、貧弱な怨念なのだ。むしろ、この場所を取られてなるものかという執念が、敷地内に魂をしばりつけている状態であり……。

『いやあ、なかなかいい怨念ですね、でもまだちょっとぬるいかなあ……。』
「やりようによっては、育つかもね?育てたい?私は一刻も早く処分したい派なんだけど。」

私の顔なじみの黒い人と、怨念でどろんどろんとしたオーラに包まれているゴミ屋敷をながめつつ、密談などしてみる。

この、全身全て真っ黒な人は、…まあ、いわゆる、人間じゃない、魂収集を好んでる存在で、私の長年の知人である。
困った時も困ってない時もなんてことない時も、いつでもどこでもふらりと現れては、私の周りでうろちょろしている魂をくすねていくのだ。

黒い人曰く、私は絶妙な、美味しい魂ホイホイなんだそうで……。

『育ちますよぉ、これは。僕協力しますから、育てさせてくださいよ。ね、お願い!!!』
「あんまり気乗りしないなあ、どこから人材引っ張ってくるの?できれば人間だけで解決したいな、親戚の事もあるし。」

ごく普通の一般人面をして過ごしている私、……あまり派手なことはしたくない。

『大丈夫ですよ、僕ねえ、いい業者・・・知ってるんです、そこらへんは抜かりないの。』
「じゃあ、資金を用意するところから始めようか……。」


義兄の怒りを最大限上げるために、緻密な計画が練られる。

ごみの処分は必ず完遂せねばならない。
だが、ごく普通に処分をさせない怨念が存在している限り、完遂は不可能だ。

怨念をまき散らした時点で、心安らかに昇天コースは存在していない。今この時点で黒い人に義兄を食ってもらってもいいが、それではいささか怨念レベルが未熟な状態であり、黒い人は魂の完熟を望んでいる。
さらに、ゴミ処理にかかる費用も兄弟で捻出しなければならなくなり、負担が大きい。

モノに執着する義兄、長年にわたって集められたゴミ、未熟な魂、古い家、つまんない怒り、クソみたいなプライド……。使えるピースを極力使い切り、全てが丸く収まる展開を探る。
……まずは持ち上げ、絶望のどん底に落として爆発させるパターンがよさそうだ。


『じゃあ、さっそく始めましょう、じゃあね、これ、当たる数字なんで、今から買ってきてください。僕ね、協力者集めときます。』
「なんとか一年で完了したいなあ、無理かなあ?」

こういうのは、とんとん拍子で行かないと…ごまかしがきかなくなる。
怒涛の流れで、少しの不自然をザバっと洗い流さないと、いろいろと、几帳面な奴らが嗅ぎつけてくるのだ……。

『初期動員がキモになりますね、まあ、そこらへんは僕の方で手配しますんで、奥さんは一般人の方を、よろしく。』
「わかった。」

……動き出した計画は、もう止めることはできまい。
私は、近所の宝くじ屋に、走った。



「これは、売ってはいけないってことなんですよ。」

ようやく一族全員が退院・快癒した日。ゴミ屋敷に集合した、長兄、その嫁、三男、その嫁、旦那を前に、少々大げさに語ってみた。

「お兄さんが怒っているから、この家には入らない方がいい。この家を愛していたんですね、夢に出てきて涙ながらに語られたんです。この家、残してあげましょう。」
「市から立ち退き指示が出てるんだ、呪い覚悟で撤去するしかない……。」

普段ダンマリの私が口を開いて怪しいことを言っているので、旦那以外全員驚いた様子でこちらの言葉に聞き入っている。
こういう効果があるから、普段私はぼっちを、無口を貫いているのだ。

「せめて、建物だけでも、移築してあげませんか。」
「そんな金どこにあるんだよ。」

……さて、ここにいる皆さんは、義兄の怒りを買うのか、それとも。

「実は、お兄さんが夢に出てきて…数字選択式のくじを買えというから買ったら、ほら。当たったんです。お金あるんです。私が全部お金を出しますから、やらせてもらえません?残った土地は売って、三等分したらいいんじゃないですか。」

ここで誰か一人でも…当たったくじを山分けしろと言えば。
義兄の怨念が少々増大して、黒い人ぱくーからのゴミ屋敷ぶっ潰し。

誰も反対しなければ、ゴミ屋敷移築ののち義兄大爆発、からの…黒い人大喜びパターン。

……縁者の皆さんの、選択は?

「兄貴の呪いは本物だ。舐めたらもっとひどいことになるって!!」
「じゃあ、俺たちなにも手伝わなくてもいいの?楽でいいけど。」
「ここ角地だから、きれいに更地にすれば値段つくはずだよ。」
「私、もうここに来たくない。」
「ね、丸投げみたいで申し訳ないけど、お願いしようよ!」

どうやら、黒い人が大喜びするパターンに持って行けたようだ。


「じゃあ、更地になったら連絡しますね。」

幾分満足そうな義兄の顔が見える。

ただ、腕組みをしてこちらを伺っているので、まだ信用はしてないって感じだ。…これはこちらも相当気合を入れて取り掛からねばなるまい。


黒い人の呼んで来た人たちに、くれぐれもお宝を粗末に扱わぬよう指示を出し。
きっちり細かいホコリまで回収させつつ、兄ちゃんの功績を称え。
大きな倉庫に分別しながら運び込み、使えそうなお宝は別途厳重に保管し。
再建築ができるよう丁寧に家を解体し。


「あとは、この土をあっちに持って行ったら終了ですね!」
「ええ、玄関にこの土で花壇を作ります、柿の木を植えないといけないんで。」

何もなくなった敷地で、腕組みをしている義兄に聞こえるよう、説明ったらしく大きな声を、あげる。

義兄には、この土地から移動してもらわねばならない。この場所に居座ってもらっては困るのだ。最近は、不動産屋にも見える人がいたりする。
近所に見える人が通りかかって大事にしないともいいきれない。

この土地がいい値段で売れてくれないと、ゴミ屋敷の移築代金を欲しがってしまう縁者が出る可能性もある。

今はまだ…安っぽいただの怨念だから、執着もそこそこ薄っぺらいはずだ。
自分の持ち物が、自分の生き様が、相当持ち上げられていい気になってるから、たぶん調子に乗って土に乗り移ってくれるはず……。

……赤土を、わざとらしくスコップですくったら。
……大成功だ。

自称【世紀の大怨念】が、赤土に無事乗り移った。
あとは、土をゴミ屋敷の移築現場にばら撒けば……。



いい感じに、とんとん拍子に乗ることができた。

土地は売れ、そのお金を山分けにして喜ぶ面々。
新しい土地で自分の財産が構築されて喜ぶ怨念。


「なにこれ、ゴミ屋敷博物館?!」
「お前良くこんなこと思いついたな……。」
「こんなの客来るの?!」

せっかくうまく行っているのに、邪魔はして欲しく…ない。

「お兄さんの功績を、この世界に公開してあげようと思うんです。」
「功績って……。」
「ゴミを集めたことが、誇れるって事?」
「まあ、普通の人間にはできん事では、ある。」

そう、人がしないことをできてしまう、たぐいまれな欲望にまみれたすごくなるかもしれない魂なのだ。

「こんなにお宝を溜め込んでくれたお兄さんの事、世間に知ってもらいましょう。」
「お宝、ねェ。」
「まあ、年代物もあるからな。」
「ある意味、学びにはなるかも?」

いままで注目されたことがないから、自分の話題で盛り上がっているのを見て…やや満足げな表情をしている、義兄。あちらこちらチェックするのに忙しそうだ。……今のうちに作業をすすめねばなるまい。

黒い人と共に、盛り上げるようなアイテムを発掘しては、一番活かせる状態に仕上げてゴミ屋敷に配置する。元の配置を派手に逸脱しては怒りを買う事になるので、そのあたりは、慎重に。……今は、怒りを増幅する時期ではない。


「ゴミ屋敷博物館、オープンできてよかったです。」

最後の仕上げの時がやってきた。

「ようやく完成しました、お兄さん喜んでくれてますかね?」
「そりゃ喜ぶだろ、再現度半端ねぇー!」
「すごいな、汚いのに清潔感のある通路とか……。」
「見世物として完璧だ……。」
「ここまでやったら、お兄さん喜ぶでしょう。」
「たくさんの人に見てもらえてうれしいかもね。」


かくしてオープンした、ゴミ屋敷博物館。

連日訪れる客を見て、義兄のテンションは上がりっぱなしだ。

クソぼっちだったから、人に囲まれているのが嬉しくてたまらないらしい。見学者に気軽に乗り移っては、つかの間のパリピ体験を楽しんでいる。

ド陰キャだったから、人に認めてもらえるのが嬉しくてたまらないらしい。蘊蓄を垂れるおっさんの横に立っては、鼻高々に胸を張り自慢の品を誇っている。

そもそもやる気も向上心も反省の心も労りの気持ちも感謝も学びも何一つ持ち合わせていない、ぺらぺらの薄い魂。あっちにふらふら、こっちでニマニマ、実に何も考えず、自由気ままに自慢の博物館内を飛び回っていらっしゃる。

さて、いつ頃、現実に気がつくのかな?
ふぅん、ようやく、気がつけたのかな?
でも、まだ、足りないかな?


「あいつもつまんねえ意地張らなきゃ恥かかずに済んだのになあ。」
「にーちゃん今頃フンがーってなってんじゃね?」
「昔から要領悪の意地汚い性格でさあ……。」

縁者の皆さんにご集合いただき、最後の追い込みなどしてみる。

「恵子ちゃんエグイなあ、こういう儲け方、よくないよ!」
「え?私は、本当にただ…お兄さんの事、知ってもらいたいって思って!!」
「ケイちゃん、なんか外国からオファー来てるって聞いたけど!俺行こうか?」
「そうですね、お兄さんの幼少期を知るお兄さん長兄なら、ぴったりだと思います、私は25年しか知らないし。」
「おい、ケイ!あの兄ちゃんの説明文のところに俺の事書くなよ!」
「だって、書いた方がお兄さんのやさしさがわかると思ったの。」


私は、お兄さんの素晴らしさを知らしめたかっただけなんです。
私は、お兄さんの功績を讃えたんです。
私は、お兄さんのために頑張ったのに、みんなひどいです。


……もう、いいかな?


どす黒い煙が、義兄から、もうもうと吹き出している。

……ああ、黒い人が、大喜びしているのが見える。


今からお食事の時間のようだ。

ずいぶん待たせてしまった。

調子に乗って、うまそうな魂になって来てたから…、我慢するの、大変だったんだよね。もうちょい待てって、爆発するまで我慢してねってね。


……いい感じに、みんなが満足できて良かった。


ゴミ屋敷は無事処分され。
悪霊は無事美味しくいただかれ。
博物館は無事私の手を離れ。

……なかなか、面白かった。
……でも、しばらくは、もういいかな?


『やあやあ、こんにちは!』

やけにむちむちとした、黒い人の、陽気な声が聞こえてきた。
……なかなか、私は、のんびりさせてはもらえないらしい。


『いやぁ、怨念ってね、兄弟で似通うんですよね~!』

……めんどくさいことには、しばらく巻き込まれたくない。

私は、何かぶつぶつ言っている黒い人の前から、逃げ出したのであった。


※こちら複数の物語と連動しております※

ハイハイ、悪霊悪霊wwwってねwww


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