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つかむ、そして、つかまれる


手を、伸ばす。

手を、伸ばして、みた。

手を、伸ばして、何かを、摑みたいと願った。


手を、伸ばす。

手を、伸ばして、みた。

手を、伸ばして、手を、握る。

伸ばした手を、胸の前にもってきて、そっと、手を、開く。


なにも、ない。

なにも…ない。


手を、伸ばす。

手を、伸ばして、みた。


何度も、何度も、手を伸ばした。

何度も、何度も、手を握った。

何度も、何度も、手を開いた。


なにも、ない。

なにも…ない。


何も摑めないまま、顔を上げた。

何も摑めないまま、前を向いた。

何も摑めないまま、一歩、踏み出した。


何も摑めないまま、歩き続けた。

何も摑めないまま、年を重ねた。


なにも、つかめないまま、何も、摑めなくなった。


私は、何を、掴みたかったのだろう。

私は、何を掴もうとして、手を、伸ばし続けたんだろう。


目を閉じると、手を伸ばし続けた日々が、浮かぶ。

目を閉じると、手を開いてしわを見続けた日々が、浮かぶ。

目を閉じると、顔を上げて見た青空が、目に浮かぶ。


青空の、鮮やかさが…目に、染みた。

青空の、鮮やかさに…目が、眩んだ。


青空に、手を、伸ばした。

手を、伸ばして、みた。

手を、伸ばして、手を、握る。


伸ばした手を、胸の前にもってきて、そっと、手を、開く。


何度も、何度も見た、しわが、見えた。

何も摑めなかった、手の平が、見えた。


一度も見たことの無い、透き通るしわが、見えた。

一度も見たことの無い、透き通る手の平の向こうに広がる世界が、見えた。


青空の、鮮やかさに、体が、とけてゆく。

青空の、鮮やかさに、私が、とけて…逝く。


青空に、混じった、私。


誰かが、手を、伸ばしている。

誰かが、手を、伸ばして、いる。


誰かが、手を、伸ばして。

・・・何かを、摑みたいと願って、いる。


誰かが、手を、伸ばして。

・・・手を、握った。


私は、誰かの手に、握りしめられた。

私は、誰かの手で、握りしめられて、いる。


誰かが、伸ばした手を、胸の前にもってきて、そっと、手を、開いた。


誰かが、手の平をじっと…見つめている。

誰かが、手の平をじっと見つめたまま…下を向いている。


ああ、この、光景は。

私が、よく知っている…光景だ。


何かを摑みたいと手を伸ばし、何も摑めなくて、下を向いていた、あの日。

何かを摑みたいと手を伸ばし、何も摑めない現実を、見つめていた、あの日。


私は、あなたに、摑まれたというのに。


あなたは、私に、気が付かない。


あなたは、私に気が付かずに、目を、閉じる。


私は、私を掴んだ誰かを、そっと…包み込む。


…どうか、どうか、この人が。


顔を上げることが、出来ますように。

前を向くことが、出来ますように。

一歩踏み出すことが、出来ますように。

自分の人生を、歩んで行けますように。

自分の人生を、自分で切り開いていけますように。

自分の人生を、自分の力で、全うできますように。


…私の願いが、少しでも届きますように。


私を摑んだ人が、目を開ける。

私を摑んだ人が、顔を上げる。


私を摑んだ人が、青空を、見つめている。


私を摑んだ人が、ふわりと、笑って、歩き出した。


…ああ、なんだ。

…私も、こんな風に。

…何かを、摑んで、いたんだ、きっと。


見えない何かを、しっかりと摑んで。

見えない何かに、包み込まれて。

見えない何かが、私を応援して。


見渡せば、青空には、たくさん…たくさんの心が、溶け込んでいる。


願う気持ち。

祈る気持ち。

慈しむ気持ち。

労う気持ち。

寄り添う気持ち。


手を伸ばせば、いつだって、摑めたんだと、気が付いた。

手を伸ばして、いつも、摑んでいたんだと、気が付いた。

手を伸ばして、摑んでいたものがあったのだと、気が、付いた。


手を伸ばして、摑んでいたから、私はわたしという人生を、生き抜くことができたのだと、気が、付いた。


手を伸ばす誰かは、たくさん…たくさん、いる。

……私が、何度も何度も…手を伸ばしたように。


手を伸ばす、誰かは、たくさん…たくさん、いるはず。

……私が、何度も何度も…顔を上げたように。


手を伸ばす、誰かは、たくさん…たくさん、いるから。

……私が、何度も何度も…前を向いて、一歩踏み出せたように。


私は、誰かに…摑まれることを……願って。

誰かの、力になることを…誓って。


たくさんの仲間が溶け込む…青空に……混じった。




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わりと真面目な話をすると、スピリチュアル的な本を小説として読むことが多いです。なんていうんでしょうか、教科書を読んで二次創作するのが好きだったタイプなんですよね…。


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