消費税

軽減税率導入とレジ袋有料化の矛盾 -元東大生マック店員の視点-

こんにちは、元東大生マック店員の清原です。マックバイトによって鍛えた「マーケット感覚」や「オペレーションスキル」をフル活用して、独自の視点で物事を見ていけたらと思いつつnoteを書いています。バックナンバーもぜひご覧ください。


今回は巷で話題の「軽減税率導入」「レジ袋有料化の義務化」について考えていきます。


これら2つの政策の導入によって、店舗オペレーションが煩雑化し、コンビニが混乱すると言われています。しかし私は、その問題点はオペレーションの煩雑化だけでなく、3つあると思っています。
後ほど話しますが、この軽減税率導入レジ袋有料化の政策を同時に導入しようとしていることがあり得ないと思っています。言うなれば、「二兎追うものは一兎も得ず」という状態そのものなのです。


さて、その3つの問題点とは、「環境問題」、「オペレーションの煩雑化」、「セルフレジの効果減少」です。


まず、「環境問題」についてです。

レジ袋有料化は、環境問題対策の一つとして義務化が検討されています。有料化という「市場の規制」でもって、レジ袋消費量を抑えようという試みです。それ自体は問題ないですが、軽減税率導入がまさにその目的と反対の効果を持つのです。
軽減税率とは、ニュースでも報道されている通り、消費税増税後も「生活必需品」は消費税が8%に据え置かれる制度です。この制度により、テイクアウトは消費税が8%なのですが、店内で食べる場合は適用外で10%となってしまいます。
店内で食べるより、テイクアウトにしたほうが、2%安いのですから、お客さんには、たとえ店内で食べるとしても、テイクアウトと嘘をつくインセンティブがあります
しかし、テイクアウトだと、店内より多くの資材(紙袋やレジ袋、プラスチックカップなど)を使うので、かえって環境に悪い影響を与えてしまいます
レジ袋有料化の義務化によってもたらせる環境への正の効果が、軽減税率によって打ち消されてしまうのです。
めまいを治す薬と、副作用でめまいを引き起こす薬を同時に飲んでいるようなものです。


次に、「オペレーションの煩雑化」についてです。

オペレーションの煩雑化で、現場が混乱すると言われていますが、マックに限った話をすると、大きな混乱は起きないと思います。というのも、マックはおそらくイートインでもテイクアウトでも価格を統一するからです。
そう考える理由は以下の4つです。
もし、価格を区別すれば、①商品提供時間が長くなる、②イレギュラーケースが増える、③メニューコストがかかる、④資材費が増えるからです。

についてですが、テイクアウトの方が紙袋に入れたりする分時間がかかってしまいます。お客さんにはテイクアウトにするインセンティブがあるので、テイクアウトのお客さんが増えるでしょう。そうするとその分待ち時間が長くなってしまいますが、これは避けたいでしょう。

についてですが、価格区別をすることで、「ビッグマックセットは店内で食べるけど、アップルパイは持ち帰る」ケースや、「食べきれなかったからやっぱり持ちかえる」といったケースの対応がかぎりなくめんどくさくなってしまいます。そのイレギュラーケースに対応するぐらいなら、価格と統一しようと考えるはずです。

についてですが、全店のメニュー(クーポンも?)を書き換える必要があります。このようなコストをメニューコストと言いますが、これが大きいので、できれば避けたいでしょう。

についてですが、テイクアウトが増えれば、紙袋代などが余計にかかってしまうので、避けたいでしょう。

マクドナルドのPOSのシステムは、店内か持ち帰りかのボタンを押すことによって合計金額が表示されるようになっているため、軽減税率への対応は容易だと思います。しかし、価格区別をすることによる他の部分でのデメリットがあまりに大きいので、価格を統一した上で、現在の価格を据え置くか、一律の値上げをするでしょう

一方コンビニでは、レジ袋の枚数の確認と、どこで食べるかを尋ねるオペレーションが追加されるので、みなさん考えている通り、オペレーションは煩雑化します

「それなら、もういっそセルフレジにしてしまえばいいんじゃないか?」という考えはありでしょう。
セルフレジにするこで、オペレーションの煩雑化は関係なくなってしまうので、コンビニ各社が協同で開発し、同時に導入したらどうでしょうか?

しかし、現在普及しているセルフレジをそのまま使うと面倒なことになります

常連客でなければ、これは袋◯枚に収まるだろうという判断は難しいので、会計後にやっぱりもう一枚欲しいとなった場合はどうするんでしょうか?
列に並び直して袋もう一枚を会計するのでしょうか?
商品を全部袋に詰め終わってから会計するシステムにすると、会計時間短縮効果が薄れてしまいます。
なら、東急ストアのようにセミセルフレジにすればいいのではないかと考えるかと思いますが、店員はトラブルを避けたいので袋を多めに渡したい一方、お客さんは少ない枚数で済ませたいので利害の衝突が起きてしまいます。

これも言うなれば、セルフレジ導入という志向性を持つ軽減税率導入が、レジ袋有料化によって妨げられてしまっているのです。そしてこれが3つ目にあげた問題点です。

この問題には、①どの袋にするかを考えさせないほど十分大きいレジ袋を用意する、②マイバッグを普及させる、③袋詰めまでしてくれる次世代セルフレジを導入する、④Amazon GO方式のコンビニを普及させるという解決策はありそうです。
①は環境問題的にあり得ないとして、②〜④があり得そうです。

小売店の立場では、②に乗じて自社ロゴが乗ったバッグを普及させるという戦略がありそうです。自社マイバッグを持ってるお客さんは割引などと言って、一旦普及してしまえば顧客の囲い込みを図れると同時に、持ち歩く際の宣伝効果はめちゃくちゃ大きく、またそう簡単にマイバッグ市場のシェアはなくならないので、いいこと尽くしでしょう。
Trader Joe'sのエコバッグが日本土産として流行るぐらいなので、日本でのマイバッグ市場は小さくないと思います。


というか、本論からは外れてしまいますが、レジ袋を有料にして得たお金って誰の懐にいくんでしょうか
案外ここがこの政策の効果の有無の分かれ目になる気がしてなりません。


それではこの辺で失礼します。なるほどと思った方はぜひTwitterやFacebookなどでシェアお願いします!
最後までお付き合いくださりありがとうございました。


清原

最後までお読みいただきありがとうございます。引き続き面白いnoteを投稿していくので、ぜひフォローお願いします!