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看護師ってマーケティング職としては最高難易度なのではないかという話

こんにちは、本を執筆中の清原です。

執筆中の本のあらすじはこちら。


本のテーマのひとつが「現場」なので、看護という現場を、マーケティングという観点から考えてみました。

マーケティングスキルとは?

このnoteでは、マーケティングスキルを、「他者への想像力を巡らせて、相手の隠された、または抑圧されたニーズを探る能力」と広く定義します。

この意味においてマーケティングスキルは、ほぼ全ての職業に要求されるだけではなく、日常生活で人と関わる時には常に要求されているスキルだといっても過言ではありません。

マスとパーソナル

マーケティングスキルと一口に言っても、影響を与える人数によって、その意味が変わってくるように思います。
企業の広報やアーティストといった、マスに対して働きかける仕事は、「他者への想像力」という言葉は、自身の言動がどう見られているのかという「メタ認知力」の意味を強く持ちます。
ある特定のひとりを意識するよりは、ひとりひとりの総体である何かになって自分を見る、いうならば「空気」になりきって自分を見るような感覚です。

一方、パーソナルに働きかえる、対人営業や、看護師といった仕事に関しては、「他者への想像力」という言葉は、「特定の個人になりきる能力」の意味を強く持ちます。
本当にその人と同じ状況になったり共犯関係に持ち込むことで、相手のインサイトを考えるような感覚です。

高度なマーケティングスキルが要求される看護師という職業

私は、パーソナルに働きかける職業において看護師は最も難しい職業であると考えます。
マスに対するマーケティングの最高難易度職が、究極的なブランド人といい得る「アーティスト」であるとしたら、プロの「看護師」という職業は、逆方向に究極的なブランド人であると思います。

医師が、前提があって解釈して結論を導き処置方法を指示するという演繹的なアプローチの仕事であるのに対し、看護師は、処置後のケアをしつつ目の前の患者のひとつひとつの反応に対応する帰納的な仕事であるということができます。

もちろん医師の処置によって患者は完治へと向かうのですが、帰納的アプローチである処置後の現場においては、診断時には無視していたような様々な「摩擦」が生じます。

例えば、患者さんが清拭を拒否した場合。
何故拒否されたのか?それを考える事なく「拒否されたので、やめ」じゃダメですよね。
気温が寒かったので、ハダカになりたくなかった
体の調子が悪いので動きたくなかった
すでに自分で拭いていた
異性にハダカを見られるのがいやだった
面会人がいた
看護師の口調が気にいらなかった
着替えを持ってきていなかった
他にすることがあったから
ただ、なんとなく
などなど、理由は考えればキリがありませんが、何かそこに理由があるから、「ケアを拒否」というアクションが起きているわけですよね。
(看護に必要な力より引用)

患者さんを拭くという行為ひとつ取ってもこのようにマーケティングスキルを要求されます。
このような、実際に現場で生じる「摩擦」と絶えず向き合って対応するのが看護師の仕事なのです。

まして、難病にかかって「死にたい」と言ってる患者が、本当に死にたいと思っているのか、本心は生きたいと思っているのかなんてのは、全マーケティング職種で看護師しか遭遇することのない状況です。

このように看護の現場では、患者によって欲望が何重にも隠されており、かつ重くのしかかって存在しているのです。

看護師は患者にはなれない

さらに看護の難しいところは、相手の立場を直接的に経験できないということがあると思います。

相手の気持ちを手取り早く知る方法として、その相手に自分がなってしまうという方法があります。
ピコ太郎は、PPAPをYouTubeにアップロードする前に、修正しては、視聴者の気持ちになって見て、また修正するということを何十回も繰り返したそうである。

一方、看護の世界では、相手と同じ状態を経験することができないため、かなり高度な想像力が要求されるのです。

まとめ

このように、看護の現場は、大量の秘匿された欲望が渦巻いており、なおかつ、直接的に経験することができないことから、マーケティングスキルが要求される仕事としては最高難易度の仕事だと思います。

ただ残念なことに、看護の現場は、やるべきことが多すぎて、このマーケティングスキルを鍛えるという感覚になかなかなれないのではないかと思います。
ましてや、マーケティングスキルを高めることが、直接的に現職の給料を上げることには繋がらないのですから、自分からマーケティングスキルを高めようと思わないのも自然です。

しかし、人間の一番の機微に触れ得る看護の現場では、普通の人は一生することのない体験が溢れています。なので、大変であることを承知の上ですが、看護師こそマーケティングスキルを積極的に高めていくべきだと思います。

また、マーケティングスキルを高めるための体験ができるのは、看護の現場だけでなく、あらゆる現場に落ちています
現場で実践するときには、理論では無視していた「摩擦」が常時生じており、そのような「摩擦」こそが、次の理論を組み立てるヒントになり得るからです。

現場は仕事量が多く、イレギュラー対応も大変なんだ!という意見は大いに分かりますが、そのような環境にいるが故に、少し頭を使えばとんでもないスキルが得られると考える次第です。

自分自身は、看護とはほど遠い生活を送っているので、皆さんからぜひ意見をいただけたらと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。

清原(@Takashi0Zo)

続編

皆さんのコメントをまとめました。
【続編】看護師ってマーケティング職としては最高難易度なのではないかという話

参考文献・サイト
・陣田 泰子著 「看護現場学への招待」
・看護に必要な力 https://seesaawiki.jp/w/meiwa330/d/%B4%C7%B8%EE%A4%CB%C9%AC%CD%D7%A4%CA%CE%CF
・医療現場の行動経済学
・ピコ太郎のつくりかた
画像
フリーサイトより引用

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