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レコード・コレクターズ 2024年5月号 フュージョン特集 洋楽編

界隈の動向に鋭い人なら、ここしばらくフュージョンが来ていることに気づいていたでしょう。
ということで、レココレでもフュージョン特集です。

でも、心配だったんですよね。
レココレはこの手の特集をやる時、ブームの本質が見えていないことが多い。
正確にいえば、多くのライターさんが書いているので、人それぞれに捉え方が違う。
そんなわけで、今回は特にそうなりそうな気配がしてました。

ナツメロ・フュージョン特集になったら、なぜ今、フュージョンが話題なのかが伝わらない。
シティポップの時も最初は本質からは遠いところにいて、何回も特集するうちにようやく的を得てくるという感じだった。
フュージョンは何回も特集することもないだろうから、さて、どうしたものかと思ったのですが。

今回の特集は、参加ライターがそれぞれに30枚のランキングを作り、それを編集部でまとめるという形で100枚をセレクト。
セレクトの条件は、1969年から1989年までの作品から、ヴォーカル作品は除くというもの。
69年スタートなのは、フュージョンの原点と言われるマイルス・デイヴィスの『In A Silent Way』と『Bitches Brew』が69年の作品だからでしょうね。
ここでもう不安になりました(笑)。
なぜなら、今のフュージョンの流れは、インストであることが前提になっていないから。
サウンドとしてのフュージョンなんです。
それはクロスオーバーとは意味するところがちょっと違う。

これじゃ重要な盤が落ちるなと思ったので、編集部にその旨伝えたところ、楽器主体であれば歌入りがあってもOKということになりました。
それでも、例えばフローラ・プリンやタニア・マリアなどのブラジル勢や、マリーナ・ショウの「ビッチ」のような大名盤も選外になってしまう。
まぁ、シンガーの作品はなしでというのは仕方ないのかなと割り切って選んだ自分のリストが以下の通りです。

1.Paul Jackson, Jr. / I Came To Play / 1988

2.Pierre Moerlen's Gong ‎ / Gazeuze! / 1976

3.Rodney Franklin / Rodney Franklin / 1980

4.Sea Lavel / Sea Lavel /1977

5.Lisette Wilson / Now That I’ve Got Your Attention / 1981

6.Tom Browne / Love Approach / 1980

7.Joyce Cooling / Cameo / 1988

8.Allan Holdsworth / i.o.u / 1982

9.Phillip Upchurch / Darkness, Darkness / 1972

10.Richard Galliano / Spleen / 1985

11.Hiroshima / Odori / 1980

12.Cornell Dupree / Teasin’ / 1974

13.Shakatak / Night Birds / 1982

14.Judy Roberts / The Other World / 1980

15.Mark King / Influence / 1984

16.Herbie Hancock / Sunlight / 1978

17.Earl Klugh / Finger Paintings / 1977

18.Joe Beck / Beck / 1975

19.Chick Corea / Return To Forever / 1972

20.Al Di Meola / Elegant Gypsy / 1977

21.George Benson / Breezin / 1976

22.Cortex / Troupeau bleu / 1978

23.The Crusaders / Those Southern Knights / 1976

24.Joe Sample / Carmel / 1979

25.Deodato / Love Island / 1978

26.Stuff / Stuff / 1976

27.George Duke / Brazilian Love Affair / 1980

28.Gato Barbieri / Ruby Ruby / 1977

29.Airto Moreira / Touching You Touching Me / 1979

30.Hiram Bullock / Give It What U Got / 1987

※太字が掲載された作品

30枚中18枚掲載だから、なかなかの的中率w
ただ、レココレらしさもある程度は考慮したので、狙い通りな側面もあります。
いま「フュージョン」と言った時には、クロスオーバーは選外でスムースジャズはOKといった感じがあるから、マイルスのような作品はあえて外し、ソウル系のインストやスムース・ジャズ的な作品を多めにしました。

しかしなんと、1位が選外というw
スタジオ・ミュージシャンのポール・ジャクソン・ジュニアの初ソロ作品なんですが、88年ならではのニュージャック・スウィングのインスト版のような作品です。
これ、なんとかぶち込みたかったんだよなぁー。

その後も、これは残したい!と思ったものがなかなかの確率で敗北(笑)
例えば、
Lisette Wilson / Now That I’ve Got Your Attention / 1981
Hiroshima / Odori / 1980
Judy Roberts / The Other World / 1980
Mark King / Influence / 1984
Cortex / Troupeau bleu / 1978
あたりですかね。

特に、Mark KingはLevel42が完全に歌モノなので、ソロは半分インストだからとこっちを入れたのに敗北w
今、ブリティッシュ・ファンクはフュージョンの文脈で語られることが多いからね。
そういうイマならではの解釈は残したかったんだけどなぁ。

一方で、
Rodney Franklin / Rodney Franklin / 1980
Tom Browne / Love Approach / 1980
Joyce Cooling / Cameo / 1988
が入ったのはよかった。
特にジョイス・クーリングは、ぶっちゃけ歌モノの「It's You」の人気ありきなんだけど、昔のランキングだったら入ってこないでしょう。

あと、ピエール・ムーランズ・ゴングが入ったのは嬉しかった。
自分には回ってこなかったけど(笑)
一方で、ホールズワースとかシー・レヴェルは落ちました。
シー・レヴェルはオールマンズの残党バンドで、チャック・リーヴェルがいました。
後に歌モノが多めになっていくんだけど、このファーストはインスト主体で、オールマンズのフュージョン的な部分を拡大したような感じ。

今、昔の音楽を聴くときは、当時と同じ感性で聴くということはなく、今の時代ならではの着眼点で新しい解釈で聴くことが当たり前になりました。
リアルタイム世代の人にはそんなのは違う!と言われそうですが、その価値観を否定するつもりはないけど、新しい解釈も許してほしいなぁと思います。

ということで、次号は「日本のフュージョン」特集です。
実は、今のフュージョン・ブームの中では、日本のフュージョンの独特なサウンドは大きなウェイトを占めているので、洋楽以上にシビアに選ばなくてはなりません。
さて、どうなるのか・・・。
実は、もうその号の原稿は入稿済みなのでわかってるですけどね(笑)

ということで、次号を震えて待て!(笑)


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