012-Aurolaの少女

012 芳本美代子「Auroraの少女」(1986年)

作詞:松本隆 作曲:筒美京平 編曲:船山基紀

1回飛びましたが、船山さんの3曲目です。
想像ですけど、この曲、大瀧さんの「さらばシベリア鉄道」へのオマージュのような感覚で作られたんじゃないかって気がするんですよ。

まず、この曲と前作で6枚目のシングル「青い靴」は、ミッチョンのシングルの中では初めて、作詞:松本隆 作曲:筒美京平 編曲:船山基紀という同じメンツでの連作となったのですが、この2曲は世界観があまりにもかけ離れているのが不思議です。

松本隆は詞先で作ることが多い作家であること、デビュー曲からシングルA面曲はすべて松本さんが担当してきたことを考えると、この曲も松本さんの主導のもと方向性が定められたのではないかと思うのですが、一体なにが起きたのか。それともただの気まぐれでしょうか。

松本さんが「さらばシベリア鉄道」を意識していたのかはわかりません。サビの<Lonely Girl From North Country>というフレーズは、おそらくボブ・ディランからの着想でしょう。「木綿のハンカチーフ」もディランからの影響でできた曲ですし。さて、松本さんは京平先生に曲を発注するときに、「さらばシベリア鉄道」で、と伝えたのか。それとも、京平先生が歌詞からイメージを汲み取ったのか。京平先生にしては抑揚の少ないひんやりしたメロディの楽曲です。

船山さんのアレンジは、フェアライトのひんやりした音色と、全体的にあえて単調でメカニカルな雰囲気で、これでもかと寒そうな空気感を演出。サビ前のブラス系のシンセのフレーズとティンパニの音はいつもの船山節ですが。こういうバランス感はさすがです。

問題点がいくつか。まず、イントロあたまのボリューム奏法のギターは、おそらく船の霧笛を模したものだと思いますが、このような導入部を作った点。「さらばシベリア鉄道」も同じような展開で始まりますよね。イントロからAメロのまるでベースの役割を果たしていないベース・リフは、船のメカニカルなエンジンの動き。「さらばシベリア鉄道」では、汽車の駆動とリズムパターンを同期させています。そして、間奏のシンセのフレーズは「さらばシベリア鉄道」の曲あたまの部分の音を意識している気がするんです。

もしかしたら、京平先生がそういうイメージでって指定したのか、船山さんが勝手にそういう風に作ったのか。ん~考え過ぎかも(笑)根拠がないので妄想ですけどね。

そして、この曲を最後に、松本さんは担当を降りてしまいました。いやほんと、何があったんですかね?

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