016-雨音はショパンの調べ

016 小林麻美「雨音はショパンの調べ」(1984年)

作詞・作曲:Gazebo・P.Giombini 日本語詞:松任谷由実 編曲:新川博

「雨音はショパンの調べ」といえば、イタリアのシンガー、ガゼボの大ヒット曲「I Like Chopin」にユーミンが日本語詞をつけ、小林麻美の歌手復帰作となった作品です。

小林麻美はもともとプライベートでユーミンと仲が良く、ユーミンからこの曲を歌うことを勧められたといいます。しかし、アイドル歌手として成功しなかった小林は、歌うことに抵抗感があったようです。

しかし、大したプロモーションもされなかったにも関わらず(こういうところにも消極的な姿勢が見て取れます)、オリコンで3週連続1位、年間12位、52万枚を売り上げます。歌った小林の気持ちはどうあれ、原曲の大ヒット、印象的なユーミンの日本語詞、原曲を遥かに超える凝ったアレンジと作品の出来は素晴らしく、ラジオからイントロが流れてきた途端、多くの人の耳を奪ったことは間違いありません。アレンジを担当したのは、Hi-Fi-Setのバックバンドから出発し、ユーミンのバック、アレンジャーとしては打ち込みによる完パケ納品という新たな手法を作り出した新川博です。

しかし、これだけのヒットになったにも関わらず、結局、小林がテレビで歌うことはありませんでした。ということは、人前で歌ったのはたった1回だけ行ったコンサートのみということでしょうか。

ここで1つ疑問が。よく見れば、名義は小林麻美 with C-Pointってあるじゃないですか。C-Pointって誰?

ふと思いついたのは、過去にそういうグループがいたことです。佐野元春と伊藤銀次がプロデュースしたレコードを出していたバンド。確かレコード会社も同じだよな…と思ったら、まさにそのC-Pointなのでした。

C-Pointは、川端康仁、百田忠正、恒見コウヘイによるコーラスグループで、80年にPIEという名前でトーラスからデビューし、81年にソニーへ移籍すると共に、グループ名をC-Point(Crossing Point)に改めます。そして、82年に佐野元春と伊藤銀次のプロデュースでシングル「We Can Love」とアルバム「High Tune」をリリース。この時代ならではの爽やかなAORサウンドです。

そんなグループがなぜ小林麻美の、ヨーロッパが匂うアンニュイな楽曲のコーラスを担当したのか。それだけならコーラス担当として、パーソネルにクレジットされればいいのに、なぜ小林との連名でのリリースとなったのか。これが謎です。

例えば。この曲はもともとC-Pointが歌う予定だった。小林がソロでのリリースを拒んだので、連名にした。スタッフが同じで、自分が担当するアーティストの名前を出したかった。なんとなく思いつくところを挙げてみましたが、本当のところは本人に聞いてみるしかないんでしょうね。

C-Pointのメンバーは解散後、川端康仁は和歌山、恒見コウヘイは福井を拠点に活動中。百田忠正は東京で、今も伊藤銀次の周辺や様々なセッションで活動しています。百田さん、共通の知り合いも多そうなので、どこかで会えないかな?

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