見出し画像

夢語りシリーズ 1

        
                                                               

【死ぬとはこんなにやさしいものなのか】

私と友人は薬を飲んで二人とも死ぬことにした
薬は薄い肌色の小さな錠剤
六時ちょうどに飲み六時半に死ぬことになっていた
存在の意味を見いだせず失格した二人
そもそもそんなことを考えることが罪であった
この時のために用意された錠剤
肌色を手のひらで転がしてみる
背後には私たちの死を確認するための自殺立会人

「さぁ、いよいよだな」と彼。
時計を横目で見ながら頃合いを図っている
この薬を飲んでから死ぬまでに
誰も知らないような苦しみでもがくことはないだろうか
生きることと同じように死ぬことにも意味はあるのだろうか
自殺立会人は私の迷いを諭すように
「時間です。くすりを飲んでください」
私はその言葉で急に死にたくなくなった

六時ちょうど
彼は無表情に薬を口の中に放り込んだ
私はあっと思ったがもう遅かった
彼は地べたに柔らかく横になった
私も薬をそっと自分の舌の上に置いた
耳鳴りがやんだ

私は紐のほどけたコンバース
ひらひらと海の底に沈んでいく 
時折 きらきらと降る光が私を反射させる
眠い ゆっくりと安定したはやさ
重力のない闇を抱えて私は背骨から溶けてゆく
何も考えることはない 苦しいこともない
美しい 美しいだけだ
無音 らせん あたたかく ゆるゆると 
絶対的な大きな力に抱擁されて
死ぬとはこんなにやさしいものなのか

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

読んで下さりありがとうございました!
3

中島あす香

夢を詩や物語にすること、即興演奏(ドラム)をすることが好き。発達障害を抱えながら、言葉を綴ることや演奏することで「生きにくさ」と付き合っている日々です。マクロビを本気で取り組んだ時期もあり。ボチボチ書いていきますので、よろしくお願いします。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。