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安易にお店で本の貸出をしない方がいい

薬剤師として働く中で、どうにか本に関われないかと考えてきました。

その過程で思い付いたのが「薬局に本を置いて、それを無料で貸し出してはどうか」との案。


結論を先に述べると、「著作権法」に抵触する危険性があり、本の無料レンタルは断念することにしました。

本の貸出に関わる「著作権法」

著作権法26条の3には、「著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあっては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。」との定めがあり、これは、通常、「貸与権」と呼ばれています。

要するに、本を著作者の許可なくして貸出してはならない、ともいえるでしょう。


貸出について考えると、美容院や診療所などで本を置いてあるところも今や珍しくはありませんが、これはどうなるのでしょうか?

こちらは、店内で読む分に関しては、著作権侵害でないと解釈されているようです。

【ブランシェ国際知的財産事務所様のブログ『美容院で客に本を閲覧させることは著作権法上問題とならないのか?』より引用】

ではここからが本題。

例えば、美容院のお客さんがカット中に読んでいた本があって、カットが終わってもどうしても続きが気になるため、

「次来るまでにこの本、貸してくれない?」

とお願いされたと仮定します。

一人に貸す分には大きな問題にならないような気もしますが、厳密にいうとおそらく店外に持ち出してしまうため、著作権法に抵触してしまう可能性があります。


「何をそこまで細かいことを…」と感じたかもしれません。

しかし、何人までならOKで何人以上がNGという線引きもないため、このような形になってしまうのです。


その数がどんどん増えて、

「あそこの美容院、色んな本を無料で貸してくれるらしいよ!」

なんてことになれば、美容院はそれを名目にお客さんを獲得できるかもしれませんが、本屋さんや出版社、ひいては著者からしてもたまったものではありません。


回し読みされるため本が売れなくなるからです。

このような事態を防ぐべく、出版物を守るために「著作権」が機能してくれるといえます。

「図書館ではタダで貸してくれるのはどうして?」

こう思われた方もおられるかもしれません。

著作権法を確認したところ、以下のような、非営利・無料の貸与を例外的に認める規定がありました。

■著作権法第38条
「4 公表された著作物(映画の著作物を除く。)は、営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあっては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供することができる。」


この規定は、著作権法上、貸与権が認められるようになったとき、図書館等については例外扱いにする必要があるために設けられた規定のようです。

また、図書館に関する法律として、「図書館法」という別の法律が存在し、そこで以下のような規定があります。

■図書館法第17条
「公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない。」


以上のような法律上の規定により、図書館は、著作権法に抵触することなく、書籍を貸与することができているようです。

どうしても本の貸出を行いたい場合

本の貸出を行いたい場合、無料有料それぞれの方法を紹介します。

①無料貸出をしたいケース

「私立図書館」を開設する、これが無料貸出を行う一つの手段としてあり得ると、以下のブログでは紹介されています。

ぬるで様「私立図書館の作り方」より引用

このブログ記事によれば、私立図書館を作るには、まず一般社団法人か一般財団法人を作る必要があるようです。

確かに、先程ご紹介した図書館法の第2条1項の図書館の定義にも、『「図書館」とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設で、・・(省略)・・又は一般社団法人若しくは一般財団法人が設置するもの』との記載がありました。

そして、同法第2条2項には、このような一般社団法人や一般財団法人によって設置された図書館は、「私立図書館という」と記載されています。

このような法人設立を要する時点で、すでにハードルが随分高くなったようにも感じます。

②有料貸出をしたいケース

以下のサイトによれば、レンタルブック事業だと有料貸出が可能です。

こちらの登録を行うと、著作権者の許可もすでに得られているため、スムーズに貸出ができるようになるようです。


ここまでお読みいただき、本の貸出に慎重にならざるを得ない背景がお分かりいただけましたでしょうか。

なので貸出は取りやめ、他に本に関わる方法を模索して、最終的に「販売」に考えがまとまりました。

今回の記事は、法律の専門家ではない自分が、法律を見ながら、自分で調べた範囲の知識で作成しており、信ぴょう性に欠ける恐れがあります。

また、当然ながら、あくまで一般的な情報に過ぎません。

詳細を知りたい方は、必ず、弁護士などの専門家にお問い合わせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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