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日本語にはなぜ「けれけれ」が無いのか

喉がからから。
胃がきりきり。
目がくるくる。
球がころころ。

なぜ、ないんだろう。
けれけれ

あっても良さそうなのに
聞いたことがない。
辞書にも載ってない。

なぜ。

いや待てよ。
他のエ段はどうだ。

うるうる。
おろおろ。

えれえれがない。

さらさら。
するする。
そろそろ。

せれせれもない。

ねれねれも。
へれへれも。
めれめれも。

エ段は皆無?
いや……

ひとつだけあるぞ。

でれでれ

にしてもエ段が少ないな。
なぜ。誰か教えて。

「うむ、それはな」

あなたは。

「通りすがりの者じゃ」

なぜエ段だけが極端に
少ないのですか?

「ア段、イ段、ウ段、エ段、
そしてオ段は五人姉妹なのだ」


??

「次女のイ段と四女のエ段は
顔立ちは違うが声が似ておってな。
電話に出るとよく間違えられる」


あのぉ……

「あまりに間違えられるので
エ段は電話に出なくなってしまった」


喩えがわかりづらっ。

「つまり、聞き間違えられやすい
エ段の単語はイ段に押されて
淘汰されていったのじゃよ」


けれけれ。
けれけれ。
きりきり。

なるほど。
けれけれはきりきりが訛ったように
聞こえなくもないですね。

でも、どうしてイ段が消えずに
エ段が消えたんだろう。

「四女のエ段は控えめな娘じゃったからな」

またその喩え。
だとしても、じゃあなぜ
でれでれは生き残ったんですか?

「良い質問じゃ。
でれでれのイ段の姉は誰かな」

ぢりぢり。

「ブブーッ。でれでれの姉は
ぢりぢりではない」

え? えーと。

「でぃりでぃりじゃよ。
アルファベットに置き換えてごらん」

でれでれ DERE DERE
ぢりぢり JIRI JIRI
でぃりぃり DIRI DIRI

ぢりぢりは音の成分が違う……!

「その通り。誰かが遠くででれでれと
叫んでも、ぢりぢりと聞き間違えられる
心配がないのはそれ故じゃ」


ってことは……あっ。

てれてれも有りですよね!
ちりちりに聞き間違えられる
心配がないんですから。

「うむ。辞書には載っておらぬが
そのうち新語として生まれるかもな」


エ段は控えめで目立たないお姉さん
だったんですね。

「そうでもないぞ。エ段の音が放つ
柔らかな存在感を侮ってはならん」


「江戸時代は300年続いたし、
日本史上最強のスーパーマンは
役行者と呼ばれておった」


あ、あなたはもしや。

「さらばじゃ」

ひゅーん。



というわけで本日のまとめです。

ワーディングやネーミングの参考になれば幸いです。


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