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2023年上半期注目の新人アーティスト25選

今年も早くも半年が経過して、多くの方が上半期のベストアルバムを発表する季節がやってまいりました。本ブログでもやろうと思いましたが、去年と同様に2023年の上半期の注目の新人アーティストを独断と偏見で25組まとめてみました〜。UKの新鋭アーティストから、USやヨーロッパやその他の国々、そしてジャンルの垣根を超えてさまざまなアーティストをセレクトしてみました。
もしかしたらここから見逃した作品やグッとくる新人アーティストに出会えるかもしれません。ですので、長くなってしまいましたが、ぜひ最後まで読んでくれたら嬉しいです。

Kara Jackson

イリノイ州のオークパークという、シカゴから少し離れた町で生まれ育ったシンガー・ソングライター。Kara Jackson。デビューアルバム『Why Does The Earth Give Us People To Love?』を今年リリース。今作はJai PaulやMorMor、Orion Sunなどを擁するレーベル〈September〉からのリリースとなります。今作はシカゴ周辺の天才たちが集結したようなアルバムで、Sen MorimotoやKAINA、NNAMDÏがプロデュースやレコーディングで参加、そのほかNick Levine(a.k.a. Jodi / ex: Pinegroveのメンバー)やMacie Stewart、ELSZといった錚々たるアーティストが同じくレコーディングに参加。
そんな今作は2020年のコロナ禍という中で制作され、主に彼女の幼少期からのベッドルームで録音したとのことで、全体的にローファイで温かみを持った質感に。M2「no fun/party」からKara Jacksonの本領発揮といったところでしょうか。アコースティック・ギターの深く沁み渡るようなアルペジオと濃密なストリングスという非常にシンプルなもの。そこに伸びやかでソウルフル、唯一無二な彼女の歌声が加わるだけで、一瞬にして音世界がガラリと変わる。そのくらいインパクトのある神々しい美声が身体を覆っていくよう。


King Isis

USのオークランド生まれ、現在はLAを拠点に活動するシンガー・ソングライター、King IsisがデビューEP『scales』をPigeons & Planesのスタッフが運営するレーベル〈No Matter〉と最高のアーティストを輩出し続けるレーベル〈Dirty Hit〉からの共同リリース。
今作ではインディーロックやグランジ、オルタナ、ジャズやR&Bなどのそれぞれの要素が美しく溶け合った作品に。タイトなビートともに疾走感あふれる爽やかな楽曲「in my ways」から、インディーR&Bのような陶酔的なムードとオルタナなサウンドが合わさった「taste of u」など、独創的で鮮やかなサウンドが展開されています。Isisの歌声はソウルフルで芯がありつつも、流麗で透明感のある声質も兼ね備えていることで、作品全体的に淡く神々しいムードが漂っていますね。Isisについては別の記事で深掘りしようと思います。


Lucinda Chua

名門レーベル〈4AD〉が送る、サウス・ロンドン拠点に活動するシンガー・ソングライター/マルチ奏者/プロデューサーであるLucinda Chuaがデビュー作『YIAN』をリリース。これまでにDeerhunterなどを輩出したアメリカの名門レーベル〈Kranky〉から2作のアルバムを発表しています。その後は写真家としての活動やFKA twigsの作品『MAGDALENE』の時にチェリストとしても参加。
中国とマレーシアをルーツに持つ父とイギリス人の母の元で生まれ育った彼女は、今作で自身のそのルーツと、トラウマからの解放を描いているそうです。それもあって中国語の"ツバメ"を意味する『YIAN』をタイトルにつけています。アルバム全体的にも希望と多幸感漂う作品になっていて、春の到来を知らせる渡り鳥として有名な"ツバメ"のような、まさにタイトル通りのアルバムに仕上がっています。弦楽器の壮大なストリングスや空間を漂う幽玄なアンビエント。そして耽美的で澄み切った流麗な歌声。そんな最小限に抑えたオーガニックなサウンドは、まさに山紫水明のような優雅で穏やかなもの。


Bickle

Roy Blairの盟友でもあり、ベッドルーム・ポップ界でも天才的才能と謳われ、数々のミュージシャンからも絶賛される、アトランタ拠点のアーティスト、Bickleがデビューアルバム『Biblickle』をリリース。
彼がとうとう満を辞して、やっとストリーミングサービスにアルバムをドロップしたわけですよね。。。3年待った。。本当に嬉しくて舞い上がってましたね。今作はBickle特有の独特のポップさが滲み出た作品で、チープでローファイなトラックで、レイヴやハウス、ダンスミュージックなどの多彩なビートアレンジも最高。そしてThe Beatlesのような耳に残りやすいポップなメロディーが特徴となっていて、とてもアンセミックな仕上がりとなっています。9曲全てが最高なんですよ。本当にまじでありがとうBickleさん。


Sandrayati

フィリピンとアメリカにルーツを持ち、インドネシアのバリ島やジャワ島で育ったシンガー・ソングライター、Sandrayatiがデビューアルバム『Safe Ground』をリリース。プロデュースにはグラミー賞ノミネート経験もあるアイスランド/レイキャビクの音楽家Olafur Arnoldsを招いています。
フォークやポスト・クラシカル、アンビエント、エレクトロニカなどのエッセンスを組み合わせた音楽性に、彼女の透明感漂う流麗な歌声が溶け合い、美しい浮遊感のある世界を生み出しています。ピアノやアコースティック・ギター、そして神々しく優雅な彼女の美声のみという最小限のセットでも非常に聴き応えがあるのですが、そこに弦楽器のストリングスアレンジが加わることでより壮大で幻想的な音像に仕上がっていますね。


Cisco Swank

NY・ブルックリン生まれのマルチ奏者/プロデューサー/SSWであるFrancisco Hayeによるプロジェクト、Cisco Swankがデビューソロアルバム『More Better』をリリース。Luke Titusとのアルバム『Some Things Take Time』でも有名で、去年多くの方がベストアルバムに挙げていましたね。今作でもLuke Titusが参加しており、そのほかMalayaやMorgan Guerin、本ブログでも紹介したYoshi T.などがアルバムに参加。Cisco Swankはこれまでに、SabaやBraxton Cook、Julius Rodriguez、そして最近アルバムが出て注目を集めているKassa Overallと言った、アーティストらと共演。
さまざまなジャンルを横断する彼の作り上げる音楽は、メインとしてジャズをベースとしつつ、メロウでとろけるようなソウルから、気怠げなフロウを乗せたラップや、技巧的に洗練された楽曲まで、幅広くも親しみやすいポップなもの。


Nourished by Time

USのメリーランド州のボルチモア出身でサウスロンドンとの2拠点で活動するMarcus Brownによるプロジェクト、Nourished by Timeがデビューアルバム『Erotic Probiotic 2』をリリース。彼は最新のYaejiのアルバム『With A Hammer』のM11「Happy」で客演で参加したり、最近のDry CleaningのUSツアーのオープニングアクトに抜擢されるなど、幅広いジャンルのアーティストから支持を得ている音楽家です。
2021~2022年にかけてボルチモアの実家の地下室で制作されたというデビュー作は、DIYプロダクションを感じられるローファイな温かみを保ちつつ、強靭さと脆弱さが表裏一体となったようなユニークなサウンドを奏でています。ニュー・ウェーヴやソウル、ヒップホップ、Vaporwaveなど多岐に渡る音楽性が絡み合った、ノスタルジックで鮮やかなメロディー。そして彼のソウルフルだけど淡さも含んだ美声が融和し、身体にじわじわと沁み渡るような耽美な作品に仕上がっています。


quinnie

ニュージャージー出身のシンガー・ソングライター、quinnieがデビューアルバム『flounder』をリリース。音楽的な影響源は主にフォークで、お気に入りのバンドはThe Innocence Missionで、アンビエントも聴くのが大好きなようで、Brian Enoからもインスピレーションを受けています。
そんな彼女の作り上げる音楽は、繊細でセンチメンタルなサウンドスケープで描く、煌びやかさと淡さが表裏一体となった叙情的なサウンドに仕上がっています。甘美で可憐な歌声から紡がれる歌詞は、ストレートな想いやもどかしさなど甘酸っぱさも含んだ青々としたもの。そしてストリングスアレンジやアンビエントの取り入れ方などの凝り方も素晴らしく、それがより彼女の音楽をシネマティックで奥行きのある音楽へと昇華させています。まだ寒い冬ですが、春が芽吹く頃の暖かなムードのときに改めて聴いたら最高だと感じる音楽かと思います。


Nate Brazier

サウスロンドン出身のSSW/プロデューサー、Nate BrazierがデビューEP『YSK』をリリース。客演に現在絶賛活躍中のLouis Cultureを招いています・彼は既にKojey RadicalやJ Rickなどの作品に関わってきたよう。
それも納得というか、「デビューEPでここまで仕上げてしまうのか」というくらいハイクオリティーな出来となっています。全体的に深夜帯のダークでメランコリックな空気感が漂っていて、ロンドンのアングラさがぷんぷん匂ってきます。UKガラージやダブステップ、2ステップ、ジャングルなどのクラブカルチャーのビートを巧みに駆使したバウンシーなトラックに、R&Bやジャズ、ファンクなどを織り交ぜた音楽性には腰を抜かしました。ビートの組み方や音作りはウィットに富んでいて、非常に繊細で精巧です。彼のダウナー調の優美な歌声も楽曲にフィットしていて、より彼の世界観に引き込まれていきます。


Afternoon Bike Ride

カナダのモントリオールを拠点とするトリオ、Afternoon Bike Rideが新作アルバム『Glossover』をリリース。彼らは毎作出すたびにジャンルの広がりや音の緻密さなどが進化していくのですが、今作は特にバンドとしての化学反応がさらに爆発したと感じた一作に。
フォークの生感あるサウンドをベースに、アンビエントやエレクトロニカ、電子音楽、ポスト・ロック、ローファイなどをブレンドさせて、幽玄だけど煌びやかな音楽性に仕上げています。たゆたうような透明感漂う美声やアコースティックの温かな旋律、繊細な電子音。それぞれが程よい距離感で絡み合い、それがAfternoon Bike Rideの独創的なムードを築き上げています。


Elmiene

ロンドン拠点に活動するアーティスト、ElmieneがデビューEP『EL-MEAN』をリリース。彼はすでに昨年のLil Silvaの名作『Yesterday Is Heavy』のM10「About You」にフィーチャリングで参加して脚光を浴びています。それよりも前に彼のデビューシングル「Golden」は、ヴァージル・アブローが亡くなったわずか2日後にマイアミで行われたルイ・ヴィトンの最後のショーで未発表の状態でかかり、それが彼が注目されるきっかけだったそう。
天賦の才能を持ち合わせた彼の歌声は、ソウルフルで迫力あふれる声から、繊細で澄み切ったハイトーンボイスまで、機微な歌い分けをする、表情豊かなもの。今作はBurialとの共同プロデュース作品「Night Air」などで注目を集めたJamie Woonがプロデューサーで参加しているそうで、豪華絢爛で優雅なサウンドに仕上げた素晴らしいEPに。


Slowspin

パキスタン出身で現在はアメリカを拠点に活動するシンガー・ソングライターZeerak Ahmedによるプロジェクト、Slowspinが新作アルバム『TALISMAN』をリリース。実際の音楽活動は2013年からで、そこからSoundCloudやBandcampでの作品の発表を重ねていました。今作は5年以上の歳月をかけて綿密に制作が行われたそう。
彼女は15歳の頃からパキスタンやインドなどのアジアの伝統的な音楽について学び始め、ボーカルや作曲法など会得。その東洋音楽的なサウンドに、フォークやドリーム・ポップ、アンビエント、エレクトロニカなどを編み込んでいき、幽玄で幻想的な音楽性に昇華させています。彼女の民謡的な歌い方は伸びやかでシルキーな美声で、それもあってかいつの間にかSlowspinとして作り上げる世界観に引き寄せられているよう。夢見心地なアンビエントやストリングスのアレンジ、アジアの伝統的な楽器の数々、それを現代的なサウンドの手法に違和感なくのせ、耽美な音楽に仕上げています。Arooj AftabやSandrayati、Raveenaなどに通ずるような神秘的かつ底知れぬ作曲センスを持ったアーティストかと。


Jim Legxacy

2021年の作品『CITADEL』が記憶に新しい、サウスロンドンを拠点に活動するラッパー/プロデューサー、Jim Legxacyが新作ミックステープ『homeless n*gga pop music』をリリース。UKのラップシーンでもひとつ頭抜き出た存在で、ラップシーンに止まらずロンドンのアングラのポップシーンでも異彩を放っています。
今作ではアフロビートやジャージー・クラブ、ラテン、トラップなどのリズムに、エモ、インディーなどのフレーバーを織り交ぜた、斬新でメロディアスなミックステープに。彼の浮遊感のある甘美なフロウは自由自在で、ときには矢継ぎ早に、ときには甘くメロウな歌声まで、その技量にも驚かされます。ちなみにM4の「miley's riddim」はHannah Montana のMiley Cyrusの「Ordinary Girl」のスピードアップバージョンがサンプリングされているらしく、そういうカラクリも含めてカラフルな彼のパレットが反映された、ノスタルジアでエッジーな作品にまとめ上げています。


ENNY

サウスロンドンを拠点に活動するラッパー、ENNYが新作EP『We Go Again』をJorja Smithなどを輩出したレーベル〈FAMM〉からリリース。そんなJorja Smithと共演した「Peng Black Girls」でも話題となりましたが、ENNYはなんといっても矢継ぎ早でオリジナリティーの高いラップスタイルが魅力で、それを武器にUKのラップシーンを席巻しています。今作ではあのLoyle Carnerもフィーチャリングで参加しているという最高の作品に。
ENNYはラップスタイルだけでなく、トラックも非常に趣向の効いたもの。R&Bやソウル、ジャズ、エレクトロニカ、Lo-Fiヒップホップ的なものなどを、クールで多幸感漂うサウンドにまとめ上げています。M5「Champagne Problems」のリリックで"Priceless, just got them gems from Simz / There’s a war going on in my mental"とLittle Simzの「Introvert」から引用して敬意を示しているのもそうですが、もうENNYはネクスト・Little Simz的な、唯一無二なラップスタイルを確立していますね。


Bawo

ウェストロンドン出身のUKのグライムシーン期待の新人アーティスト、Bawoが新作EP『Legitimate Cause』をリリース。彼は今ではUK屈指のラッパーKnucksの昨年のツアーの前座を務め、またあのKojey RadicalもThe Great Escapeのイベントに彼を招き入れるなど、お墨付き感が強い、今後見逃すことのできないアーティストです。
彼の最大の魅力は、低体温ながらもその中に密かな熱を帯びさせたメロディアスなラップです。そのクールで味わい深いフロウは唯一無二で、さらにポップなメロディーラインの歌唱まで担ってしまう幅広さにも驚いてしまいます。テクノやUKガラージなどのUK独特のダンスビートや808のトラップなど、さまざまなリズムを駆使したバウンシーなトラックから、ゴスペルやソウルなどを取り入れたしっとりとした幽玄な楽曲まで、そこのレンジの広さも最高です。


Unflirt

ロンドンを拠点に活動するベッドルーム・ポップ・アーティスト、UnflirtがデビューEP『Bitter Sweet』をリリース。beabadoobeeのライブのオープニングアクトも務めたことのある実力派のアーティストでもあります。
爽やかでロマンティックなムードを内包したシネマティックなサウンドと、蜂蜜のように甘く透明感ある美声が重なり合った、「もう最高じゃん」の一言に尽きる音楽性。ほどよいテンポの疾走感ある曲や、淡く歪んだギターが心地よい曲など、それぞれの曲がドラマティックで、EPタイトル通りのビタースウィートな雰囲気を感じます。そして何より鳥肌モノの美声です。記名性のある唯一無二な歌声で、今後より注目が集まること間違いないです。「あーもうbeabadoobeeと対バンしたら絶対いいに決まってるやん…」というアーティストですね。


Shalom

アメリカのメリーランド州で生まれ、その後サウスアフリカで育ち、現在はNYを拠点に活動するシンガー・ソングライターShalom Obisie-OrluによるプロジェクトShalomが、Big Thiefなどを輩出したレーベル〈Saddle Creek〉よりデビュー作『Sublimation』をリリース。プロデューサーにRyan Hemsworthを招いています。2022年に〈Saddle Creek〉と契約したShalomは、シングルでHovvdyの「True Love」のカバーや、Glass Animalsの「Agnes」のカバーなどを発表するなど、生粋のインディー好きで、今作にもド直球のタイトル「Soccer Mommy」があるほど。
作品自体は非常に多彩なサウンドが詰め込まれていて、彼女才能に驚くことは間違いありません。90年代のオルタナのような痛快なドライブギターが鳴り響くM1「Narcissist」から、ニューウェーヴから00年代のNYインディーを取り込んだM5「Dit it To Myself」、USインディー系譜の牧歌的なM6「Concrete」、トラップビートを取り入れたベッドルーム・ポップ風のM11「Mine First」など、バラエティーに富んだアルバムに。


Malady

個人的に勝手に〈Bloc Partyの正式な後継者〉と思っているロンドンの4人組の新星バンド、Maladyがとうとう!待望の!デビューEP『All Pressure, No Diamonds』をリリース。去年コラムで書いたBloc PartyからJean Dawsonを繋げた「ブラックコミュニティーでのインディーの息苦しさ」のコラムの続編「人種によるジャンルの固定概念をぶち壊すアーティスト特集」でも挙げたアーティストです。
彼らの音楽性は、ハウスやテクノ、UKガラージといったダンスミュージックや電子音楽をベースにしたサウンドに、そこにインディー・ロックやポスト・ロックなどを織り交ぜたもの。ダンサブルだけどUK独特のダークでアングラなムードが漂っていて、さらにKing Kruleを彷彿とさせるレイジーなクールなボイスも最高にかっこいいです。ちなみに今作のテーマが「現代の若者が抱える試練や困難」とのことで、その鬱屈とした感情や悩みを見事に今作で表現されていると思います。


Azamiah

グラスゴーを拠点のボーカルIndia Blueを中心とするJosef Akin(Key.)、Norman Villeroux(Ba./オカリナ)、Alex Palmer(Dr.、Romy Wymer(ハープ)の5人組のコレクティヴ、Azamiahがデビューアルバム『In Phases』をリリース。「自然への旅と夜の散歩」をテーマにしたそうで、まさにその雰囲気にぴったりな作品に。
ジャズやソウルをベースに、ネオソウルやニューエイジ、ラテンミュージック、アンビエントなどさまざまな音楽をブレンドさせた、オーガニックで幽玄なサウンドが魅力です。フィールドレコーディングをした音源も取り入れていて、ハープのたゆたうような音、オカリナのエキゾチックな響きなど、それぞれが交錯して、奥ゆかしい癒しのサウンドアレンジも印象的。さらにIndia Blueのシルキーで耽美な歌声には驚かされるばかり。


Bricknasty

ダブリンを拠点に活動する5人組のソウル・ヒップホップコレクティヴ、BricknastyがデビューEP『INA CRUELER』を、Jorja SmithやENNYらを擁するレーベル〈FAMM〉からリリース。作品にはKhakiKidやTomike、Chi-Chiが参加。バンドの中心人物でもあるFatboyがダブリンの中でも郊外のBallymunという地区で育った経験からきているそう。この地区は、薬物乱用、失業、犯罪率の高さなどの社会問題で知られていて、自身のそういった重い経験や社会問題も反映させて今作を制作。
D’AngeloやMF Doom、Timbalandなどから影響を受けたという彼らの奏でるサウンドは、ネオ・ソウルやジャズ、ヒップホップ、サイケ、UKのダンスミュージックなどを織り交ぜた、ダークだけど多幸感あふれる音楽性に仕上げています。ジャジーで陶酔的な曲から、ダンサブルなビートを駆使した曲やアコースティックの弾き語りの楽曲までとさまざまで、その幅広さも驚かされます。


Annahstasia

ナイジェリアをルーツに持つLAを拠点に活動するシンガー・ソングライター、Annahstasiaが新作EP『Revival』をリリース。今作ではM2「While You Were Sleeping」にRaveenaが客演で参加。今作は自身の原点に立ち返ったフォーク作品を見据えて作り上げられ、タイトルも『Rivival』と"自分に立ち返る"という意味でつけられています。
そんな今作はフォークをベースとした、アコースティック・ギターの滑らかな響きと、Annahstasiaのソウルフルで壮大な歌声にフォーカスしたオーガニックなEPに。そこに豪華絢爛なストリングスや荘厳なアンビエントなども絡ませて、耽美的で幽玄さも感じられるムードがとても素晴らしいです。フォークロア的なスタイルも垣間見られて、彼女のボーカルのストリーテリングの力強さと、繊細な歌い回しによる機微など、その技量の高さにも驚かされます。


Santangelo

アメリカのフロリダ生まれ現在はLAを拠点に活動するアーティスト、Santangeloが、Pigeons & Planesのスタッフが運営するレーベル〈No Matter〉から5年以上の制作期間をかけたアルバム『AdWorld』をリリース。客演には盟友でもあるZach VillereやQuiet Lukeが参加。彼は元からBROCKHAMPTONのメンバーやRoy Blairとも関わりのアーティスト。
アルバムのサウンド自体は、一言では表せないほどカオスな音世界が繰り広げられていて、さまざまなジャンルが緻密に交錯したSci-Fi的な音楽性にまとめ上げています。ゲーム音や環境音など数多くのサンプリングが使用され、それがスムースでスペイシーなトラックから幽玄なアンビエント、ベッドルーム・ポップ的な曲、そしてUKガラージ風のビートまでに組み込まれ、今までにない想像を超えたアルバムに仕上がっています。


waterbaby

スウェーデン・ストックホルムからのベッドルーム・ポップの新星、waterbabyがデビューEP『Foam』を名門レーベル〈Sub Pop〉からリリース。幻想的でたゆたうようなシンセや、レイドバックなムードが折り重なったベッドルーム・ポップ・サウンドが特徴です。
何よりも一度聴いたら忘れられないような、彼女のポップなメロディーセンスも秀逸です。フォークとR&Bの中間を縫うような唯一無二な音楽性も面白いですね。可憐でビタースウィートな声質も音楽にあって最高です。


Khamari

ボストンで生まれ育ち、現在はLAを拠点に活動するアーティスト、Khamariがデビューアルバム『A Brief Nirvana』をリリース。Stevie WonderやSly Stone、Kid CudiからMac Millerまで、クラシカルなソウルやファンク、そして現代的なポップスやヒップホップから影響を受けたという彼の奏でる音楽は、深みのある優美なR&Bサウンド。
軽快でグルーヴィーなフロウから、ソウルフルできめ細やかな美声までレンジのある歌声を武器に、流麗なトラックからメロウなサウンドまでこなす懐の広さには驚かされます。Frank Ocean以降のR&Bをしっかりと昇華しつつ、Daniel Caeserといったアーティストにも負けない、オリジナリティーをKhamariは持っていると個人的には思います。


Sword II

アトランタを拠点に活動する4人組バンド、Sword IIがデビューアルバム『Sprit World Tour』をリリース。今年出会ったバンドの中で、最高にカオスでジャンルレスなバンドで、ハイセンスな匂いがぷんぷん香ってきます。インディーやローファイ、インダストリアル、ヒップホップ、ゲーム音楽など、彼らのさまざまな音楽のバックグラウンドが窺える作品に仕上がっています。男女の混成ボーカルなのですが、どちらもレイジーな雰囲気が個人的にツボでした。


いかがでしたでしょうか?個人的にはかなり濃密なアーティストをセレクトしてみましたが、皆さんのディグのお役に立てたのなら本望です。これからもこのブログでは新人アーティストを中心に紹介していきますのでぜひチェックしてみてください。

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