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気持ちを演じるな!!関係性を演じろ!!

こんにちは。
ST Acting Studioスギウチ タカシです。
今日は「気持ちを演じる」演技法と「関係性を演じる」演技法の
違いについて書いてみようと思います。

気持ち?関係性?

脚本の読解法、分析法はたくさんありますが
今日はそこがメインではないので。

何はともあれ脚本を読んで
自分の演じるキャラクターをつかんで
自分の身体に落とし込む作業までクリアして
実際に演じる段階にまで来たとします。
(そこまでの道のりもホントはいろいろあるんですが・・・)

そしていざ演じるときに
俳優が、キャラクターが今感じている
「気持ち」をベースに演じようとするのと
相手役との「関係性」の中から生まれた
衝動をベースに演じるのでは
パフォーマンスに大きな差が出てきます。

気持ちを演じる

「気持ちを演じる」演技法のわかりやすい例を出すと
昔のサスペンスドラマによくある犯人が崖の前で
「なぜ殺人に手を染めたのか」その理由を
長々と語るシーンなどでよく見られる演技法です。

演じる俳優はキャラクターの気持ちに集中し
キャラクターの感情を『表現』しようとします。

その結果
演技は内向的になってしまい
相手役に影響を与えないので
相手役はセリフが終わるまで待っているしかなくなり
結果的にシーンのテンポは落ちてしまいます。

それを見かねた監督から
「もっとテンポあげて」などと言われ
より早口に、感情を込めて演じてしまうと
もう目も当てられません・・・

最近あまり見なくなった演技法ですが
たま〜に見かけますね(T . T)

個人的にはあまりおすすめ出来ない演じ方です。

関係性を演じる

「気持ちを演じる」のに対して
「関係性を演じる」演技法は
キャラクターの気持ちに集中するのではなく対象は相手です。

そして相手役のセリフ、表情、その他の行動から
影響を受けてそれに対して『反応』していきます。

相手に対して注意を向けるので
自然と演技は外向的になり、
『反応』⇔『衝動』の良いサイクルも
生まれ続けるのでシーンがイキイキとしてきて
テンポも自然とあがっていきます。

厳密にいうと
相手にビビットに反応するには
シーンに入る前の『仕込み』や
反応できる『身体』も必要になってくるのですが

その条件が揃ってくればくるほど
演じているキャラクターが魅力的になっていきます。

ふたつの演技法の違い(具体例)

この演技法の違いを
実際のセリフを使ってもう少し具体的にしてみましょう。

A「どうしたの、何かあった?」
B「ちょっと聞いてくださいよ。昨日ダンナが連絡もなく飲みにいったまま
  帰ってこなかったんですよ。それで心配になって何回もケータイに
  かけたんですけど、全っ然出なくて!!それで結局一睡も出来ないまま
  朝になっちゃって。で、朝だから『ゴミ出ししなきゃ』とか思って
  ゴミ捨て場に行ったらダンナがそこで酔い潰れて寝てたんですよぉ!!」

こんなやり取りがあったとします。
このBのキャラクターを演じるときに「気持ちで演じる」のと
「関係性で演じる」のとではどうアプローチが違うでしょうか。

『気持ちで演じる』篇

『気持ちで演じる』演技法でBを演じると
大抵の場合Bは登場してきた時点で怒りや悲しみなど
何かしらの感情を持って出てきます。

そしてAのセリフをキッカケにして
キャラクターの気持ちを表現しはじめます。

「ちょっと聞いてくださいよ〜」
あたりまではAを見ているかもしれませんが

徐々に自分の気持ちに意識が向きだし
Aのリアクションはほったらかしになり
どんどん自分の世界に入っていきます。

そして最後の
「〜酔い潰れて寝てたんですよぉ!!」
あたりでAを再び見て終わり、といったところでしょうか。

Aを演じる俳優もリアクションに困り
不必要に頷いたり不自然な笑顔を作ったりして
何とか間を埋めようとしますが

Bが気持ちを演じてしまうと
シーンが前に進まないので
なんとなくダラっとしたシーンになってしまいます。

また気持ちを演じているので
AとBの関係性がどうであれ(「先輩、後輩」「お隣さん」など)
あまり言い方などに変化はありません。

『関係性で演じる』篇

『関係性で演じる』演技法の場合
その後のセリフに出てくる出来事は
身体に落とし込んだ状態で登場しますが
怒りや悲しみなどの感情を表そうとはしません。

しかし通常の状態とは明らかに様子が違うBにAが
『反応』してAのセリフが発せられます。

そのAのセリフのニュアンス、表情などに
Bがまた『反応』して思わず次のセリフを言ってしまいます。

セリフを言っている間もAの表情や
頭に浮かんで来る映像(ケータイに出ない、ゴミ捨て場で寝てる)に対して
『反応』することで怒りや悲しみなどの感情が生まれてきます。

Aも自分のリアクションに対して
Bが『反応』してくれるので不自然に頷いたり表情をつくる必要がなく
お互いに影響を与え合いながらシーンが進んでいくので
非常にテンポが良くなります。

また『仕込み』は必要ですが
お互いの関係性(「先輩、後輩」「お隣さん」)によって
『反応』の仕方も微妙に変わってきます。

例えば「お隣さん」であっても
普段、挨拶程度の仲であればBが話している時のAのリアクションは
ちょっと引き気味かもしれませんし
よく井戸端会議をするような仲であれば
前のめりなリアクションに変わってくるかもしれません。

ちょっとしたセリフのやり取りであっても
情報量が多く密度の濃いシーンになっていきます。

さいごに

「気持ちを演じる」演技法と
「関係性を演じる」演技法の違いについて
書いてみました。

作品のテイストや演じるキャラクターによって
求めれられる演技も変わってきますが

「関係性」を演じる演技法で演じると
キャラクターが多面的になり
より日常の人間に近いキャラクターになっていくので

そういう演技が映画やドラマで
頻繁に観られるようになって
面白い作品がたくさん出てくると
良いなぁ〜と思っています。

では!!

ST Acting Studio
スギウチ タカシ

8/5(土)
ワンデイWS『バイプレイヤーの演技法』開催決定!!

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