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「ラベル」で見る日本人、「関係性」で見る華人-深圳の仲間と会食-

深圳に戻ってきてから、だいたい月1回ぐらいで大人数で広東料理・潮州(福建)料理を食べる会食を開いている。深圳が位置するエリアである広東・潮州はどちらもダシの味が強く日本人に向いている。(この地域は日本が中国から最も多くを学んでいた唐や隋という国のベースであることから、おそらく日本料理の原型かもしれない)
広東料理と潮州料理の味の組みたてはよく似ていて境界がハッキリしないが、広東料理のほうがなるべく手間をかけるほう、潮州料理のほうがなるべく素材の味を活かす方であるように感じる。ずっと豊かなエリアだった広東に比べて潮州は中国の近代ではずっと貧しく、深圳の電気街は潮州商人たちでできている(スタートアップはそうでもない。福建人は目端は効くがあきらめがはやくリスクを嫌う。シンガポールでキアスーと呼ばれるそれは福建語)。また、タイ、ベトナム、マレーシア、シンガポールほかの東南アジア華人の多くが潮州にルーツを持つ。そのせいか、より和食に近いシンプルな調理のものが多く、また海外華人から逆輸入された、ココナツミルクやカレースパイスなどを使った潮州料理もある。

僕はいつも世界中を移動しているけど、基本的にはこの南洋エリアにもう6年も住んでいる。特にここ半年ずっと連続して深圳にいることで、広東料理・潮州料理の解像度が上がってきた。

中国の取引先を集めて、福建会館/広東会館の会食を再現する

取引先や仕事で出会った人たちを中心に、広東・福建エリアの中国人を集めて、月に1回程度会食を呼びかけている。wechatグループにいるのはだいたい30人ぐらい、会食はいつも10名ぐらいだ。
今回は2週間も前に予定が決まり、华强北のSEGビルでメイカー向けパーツを扱う電気屋をやっているMJが仕切ってくれ、彼も家族を連れてきたので、16人とかなり大きな会食になった。

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集まったのはMJやラズパイケースを作っているフィリピン華僑のArgon40組、myCobotElephant RoboticsのHenry, 藤岡さんのところでShigezone Chinaを仕切っているSally、iMakerBaseのZoeyといった取引先や、村谷さんや鈴木さんといった深圳での友達たちだ。3割ぐらいが知り合い、7割が初対面、でもかなりの割合が興味関心を共有しているいいメンバーになった。

圧倒的に美味しいごはんがリスクテイクを加速させる

MJが推薦してくれたここは、コロナ前はいつも香港から海鮮を食べに来る人たちでいっぱいだった、新鮮な海鮮を指定して調理してもらう潮州料理。テンションが上がるし、何しろ圧倒的に美味しい。
华强北にも系列店があるが、MJは「こっちのほうがうまい」という。来てみたら、両隣もそっくりな店で、なるほど海鮮みたいな食材コンディションが日々変わるようなところは、こういうトップレベルの切磋琢磨がダイレクトに効くにきまっている。

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どれも信じられないぐらいうまい。魚もシャコもうまかったけど、個人的なMVPは腐乳のソースにつけて食べる牡蠣オムレツ。なるほど、サワーチリの原型はここにあったのか。。
香港さらには南洋さらにはインドからの逆輸入、Roti Prata(薄いナンというか厚いクレープというかというかんじのインドパン。店でお好み焼きみたいに焼く)があったのも嬉しい。お子様用かなあ。

多くの商談は一瞬で決まる。たとえば「华强北のリアル店舗でmyCobotのデモ置いてくれない?」とか「このメタルケースいいから仕入れない?」「自分いま日本語を習うつもりなんだけどオススメの教室ない?」とかだ。それは会食しながらでもできるし、このぐらいの人数で雑に自己紹介して雑談しながらすすめるのがいい。
こういう紹介ベースの場所なら信用の第一歩はクリアできてるし、実際に仕事してどうかはやってみないとわからない。僕が見る限り華人たちは、一回一緒に仕事して以降は、仕事の量に応じて他人の紹介をはじめる。
その際に出身地や大学はあまり考慮されず、「どんな仕事ができて、自分はこういう仕事を頼んだ」がもっとも優先される。僕が紹介するなら、「Argon40のラズパイケース、金属製でファンもついてて、ラズパイをしっかり使うためにはとてもよいし、こういうちょっと高いけどホントに良いもの、中国で探すのは大変なんだよ」みたいな感じだ。

今回はMJの入居しているSEGビルが揺れて営業停止中(彼は隣のビルにもオフィスがあって今はそこで仕事してる)なので、彼の話をみんなききたかった。今も閉鎖中のSEGでは、てっぺんの避雷針に人間が登って調査している写真が出てきたり、MJの話はなにしろリアルで面白い。

ラベルと関係性

恵州の客家とクアラルンプールの客家、潮州でもアメリカ帰りのヘンリーと叩き上げのMJでは通じる言葉も通じない言葉もある。さまざまな言語がテーブルを飛び交い、そのわからなさがまた面白い、いい会食になった。

肩書はみんなバラバラなんだけど、1stepぐらいで一緒に仕事できたり、仕事が始まる出会いをつくれるぐらいの距離感にはみんないる。もちろんビジネスだからうまくいかないこともあるけど、そのリスクとの距離感はなんとなく「ウマがあう」ところがある。僕の友達たちは、相手を紹介する時にたいてい、「自分とこんな仕事をしたことがある」と紹介する。逆にラベルにあたるような、たとえば学校名や会社名はそこまで大きく言わない。僕は外国人だし中国ではラベルに当たるようなものがほとんどないが、ここの人たちとは長い短いを問わずちょっとずつ仕事したことがあって、その仕事の大きさに応じて関係性が決まっている。

別のマレーシア華人の友人Shee Jinは、「こういう福建会館で行われていた集まりは、インキュベーションやアクセラレーションでもあるんだ。近代的な銀行がなかった頃は、ファンディングやファイナンスもこのテーブルで解決していた」とよく語る。

深圳でも、8人以上ぐらい集めて食べる本気の中華料理では、食べるだけで気分が変わるようなびっくりするほど美味いものに出会える。
忙しい深圳の中国人たちをご飯に招いて喜んでもらえるのもいい気分だし、中国人の練習にもなるので、今後も続けていきたい。

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自分の中で整理がついてまとめたものは、何かしら記事やレポートにするけど、「まとまるまえのものや小ネタをすぐ見たい」という要望を聞いて、フォトレポートを始めることにしました。

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