裏モモについて整理しよう!(理論編)

前回は足が速くなりたい選手向けに、上半身を固めないという視点からトレーニングを紹介しました。


今回はトレーナーやセラピスト向けに


裏モモ


つまりハムストリングスについて
具体的な部分を私自身の知識の整理も含めて説明していきます。


ハムストリングスの筋膜連結


アナトミートレインで有名な筋膜という観点では、
SBL(Superficial Back Line)とSPL(Spiral Line)のライン上に記載されています。

                              SBL   

                                                   SPL

近位へはSBL、SPLともに仙結節靱帯を介して脊柱起立筋へとつながっています。
ただし、SBLは同側ですがSPLは対側の脊柱起立筋へとつながります。


遠位へは、SBLでは腓腹筋、アキレス腱、足底腱膜へと続きます。

SPLでは外側の大腿二頭筋が長腓骨筋へと続きます。


両ラインの特徴として、近位とは仙結節靱帯を介してつながり、遠位は足底まで続いています。


これを知るだけでも、ハムストリングスの問題に対しては頚部から足底までは最低限チェックしないといけないことがわかると思います。


実際にハムストリングス肉離れの選手で足底や背部に問題がある選手は非常に多いと感じています。


ハムストリングス周辺の組織


続いて周辺との関連を見ていきます。

            Visible bodyから抜粋
まず一番わかりやすいのは、大殿筋の下を潜るように坐骨へ付着していくことです。

大殿筋下部線維はハムストリングスと同様、股関節伸展作用を持っていますので、基本的には共同で働くことになります。


しかし、モーメントアームや力学的な研究によると、股関節屈曲位からの伸展動作ではハムストリングス(と大内転筋)が優位、伸展位からの伸展動作では大殿筋が優位に働きやすいと言われています。


また、ハムストリングスが優位で大殿筋の収縮が弱いと大腿骨頭の安定性が低下し、股関節伸展動作で大転子の前方移動が増大することも報告されています。


以上の性質を考慮すると、
股関節伸展という動作は同じでも担う役割は異なっているとわかります。

しかし臨床上、大殿筋下部線維とハムストリングスはかなり分離できていないことが多く、特に肉離れやGroin painなどの選手に多いように感じます。

続いて、坐骨神経が大腿二頭筋長頭の真下、半膜様筋の外側を走行しています。

この周囲の滑走性が悪いと前屈やハムストリングスのストレッチなどで坐骨神経痛が生じます。

さらに、内側・外側ハムストリングスを避けていくとその下には大内転筋が触れます。

大内転筋は伸展のモーメントも大きく、特に中部と後部はハムストリングスの一種という報告もあるくらい大きな伸展作用を持っています。

そして膝窩部ではそれぞれの腓腹筋と交叉するように走行しています。

このハムストリングスと腓腹筋の癒着や滑走不全は臨床的に非常に多く、下腿の回旋制限を引き起こします。


膝関節へ対する作用


ハムストリングスは股関節を越えて膝関節へ付着しているため、膝関節への作用も無視できません。


まず当然ですが膝関節屈曲の作用があります。


そして内側ハムストリングスは下腿の内旋、外側ハムストリングスは下腿の外旋作用が報告されています。

回旋作用に関しては主に膝関節屈曲に伴い起こることは実証されていますが、伸展位での回旋作用については意見が分かれているようです。


そしてハムストリングス全体として下腿を後方へ牽引するため、ACL(前十字靭帯)損傷時には重要な代償機構として作用しています。


半膜様筋はMCLや内側半月板の一部に付着し、半腱様筋は鵞足、大腿二頭筋は腓骨頭へ付着するため、多くの膝関節疾患との関りが深いことがわかります。


まとめ


いかがでしたでしょうか。


なるべく簡潔にまとめようと思っていましたが、かなり情報量も文字数も多くなってしまいました💦


ハムストリングスについて筋骨格系の観点だけ取り出してもまだまだ足りない(筋組織、筋線維、骨盤との関連…)くらいなので、

一言で「ハムストリングスを鍛える」

と言っても、考えなければならないことは山ほどあります。


目的次第で、同じトレーニングでも結果が大きく変わります。

その目的を達成するための手段を構築するためには、今回のような知識は不可欠だと思います。


すべてはパフォーマンスアップのために。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


理学療法士
JARTA認定スポーツトレーナー
平山鷹也

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