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渡米49日目 様々なブルーが入り混じる・・・

2023年10月10日(火)
朝目覚めてもやはり腰痛は治っていない。腰をかがめようとすると激痛が走り、家族に手伝ってもらわないと靴下を履けない始末だ。子ども達を学校まで見送りながら、どうにかこの腰痛がこれ以上激化しないことを願わずにはいられない。

先週から懸案とあっていたアカデミックライティングクラスをこの先継続するかについて、担当教授のエイミーと9時半からzoomで話した。

「もし課題を提出できないならば、参加していてもライティングの力は向上しません。ふたつのブロダクション(制作)クラスを抱えていて、家族のこともケアしながら、このクラスの課題もこなすのはとても大変だと思う。もしついていけないと感じたら、このクラスをドロップしても構いません」
「一つ確認なのですが、このクラスを今から辞めても、トランスクリプトの履歴には残りませんか?」
「このクラスはノン・ディグリーなのでその点、心配は全くありません」

各クラスの成績は通常、成績証明書(トランスクリプト)に反映され、その結果が今後の奨学金の更新などにも関わってくる。赤デミックライティングのクラスはトランスクリプトには影響を及ぼさないノンディグリーのクラスだ。様々な課題とのバランスを考えたとき、このタイミングでこのクラスを辞退するのもいい選択かもしれない。

「確かに、辞めるのは簡単ですね。いい選択肢かもしれません。でも、すでに今週の課題についてもリサーチを進めていたところもあり、そうしたリサーチが次の創作につながる可能性も考えると、やはりできるところまで続けてみることにしたいと思います」

それに、できるだけ英語で書く機会を増やした方がいいだろう。今僕にとって必要なのは、今ここにあるmomentum(成長の機会)を逃さないことだ。エイミーと話した上で僕は、しばらくできる限りの努力を続けてクラスを継続することに決めた。

18時からは、いよいよ脚本クラスだ。今週は僕の属する「グループB」3人の作品が批評される番がやってきた。僕が提出したサスペンス作品Sicilian Blue Love(シシリアン・ブルー・ラブ)」は概ね好評だった。

この物語は、男性教師へのストーカー行為をやめられずに苦しみ遠く日本を離れて長年療養していた女性が、ふとしたきっかけでパンドラの箱が開き、彼の家族を追い詰めてしまうというかなりダークな内容だ。主人公は自らを自制しようとするが、おの思いと裏腹に行動がエスカレートしていく。最初は純粋なラブストーリーなのかと思いきや、最後に大どんでん返しが待っている。誰もがそのエンディングに驚かされたといい、この作品が好きだと言ってくれた。

「僕自身はかなりその猟奇的で悲劇的なエンディングに作者としてうんざりもしている。でも、どうしてもそのエンディング以外にしっくりくるものが思いつかなかった」
「物語には作者の意図とは裏腹に、物語そのものが意思を持って動き始める瞬間がある。もちろん人とはそうだが、作者としては道義的なければいけないという考えに縛られなくてもいい。その物語の声に深く耳を傾けて、この周到に仕組まれたエンディングをもっと膨らませて楽しんでみたらどうか」

みんなの意見が出尽くしたところで、作者として発言の機会を与えられ、質疑応答の時間となり、担当教授のオーエンからはそのようなアドバイスをもらった。また主人公以外の登場人物が、ちょっと主人公のために存在する都合のいいキャラクターになってしまっているところもあるので、その辺りの人物造形をもう少し膨らませてみてはどうかとの意見も得た。

脚本家にとって、この後のリバイズ(修正と改稿)こそが大切な作業になる。提出した課題はこの後修正して、二週間後に再提出することになっている。

「日本で一人暮らしすればよかった」

授業の最中、妻から長男がそう漏らしているとショートメールが入った。長男と同じ学年の男の子で実際にその選択をした子もいたらしく、長男もその話を聞いて同じように感じたのかもしれない。長い目で見れば、今回の経験はきっと長男にとってプラスになるはずだと思い、説得してアメリカにれてきたが、やはり長男はまだそう感じているのだ。様々な思いが去来して、胸が押しつぶされそうになった。

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