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渡米50日目 僕たちは果たしてどこまでいけるのか・・・

2023年10月11日(水)

「初めて自分でやりたいことが見つかって頑張っていたところだったから」

昨日の長男の発言について、妻に尋ねてみるとそのような返事が返ってきた。音楽が好きでドラムを習ってきた長男は、東京の中学校で吹奏楽部に入り、一年生ながらも演奏会のメンバーに抜擢されるなど充実した日々を送っていた。そこから引き剥がすようにして、ボストンに連れてきてしまったのだ。そしてこちらの学校では、まだ打ち込める何かに出会えていない。果たして、アメリカに連れてくるという選択は正しかったのか。でもまだその答えを見つけるには早すぎる。

「先生が話していることが全くわからず、何のために学校に言ってるのかわからない」

週末、長男がそう漏らしていた。2年後には高校受験も控えている。この年齢で渡米するのは、小学3年生の次男に比べて、考慮しなければならないことも多く、リスクが伴う。同時に帰国後の受験対策についても今から準備しておかなければならない。週末、帰国子女向けのオンラインの家庭教師スクールにも申し込んだところだ。こちらに来たからと言ってすぐに英語が話せるようになるわけではない。適応には時間がかかるし、本人のやる気も欠かせない。今、限りになくそのモチベーションが低いので、何とか環境を整えてあげたいと思う。

12時半に脚本クラスの教授オーエンのオフィスを訪ねた。昨日返却してくれた僕の脚本「シシリアン・ブルー・ラブ」に事細かにアドバイスを書き込んでくれていて、とてもありがたく、その全てをしっかり理解したいと思い、オフィスアワーに訪ねることにしたのだ。現役の脚本家でもあるオーエンのアドバイスは的確で、かつ、僕の脚本をとても気に入ってくれるようで嬉しかった。ただ、このままの脚本でまだ世の中に出て通用するとは思わない。今、僕にできるだけの想像力を振り絞ってさらに力強い作品に仕上げたいと思う。そしてこちらにいる間に実写化できたら、これに勝る手応えはないだろう。

僕のアポイントメントの前後にも他のクラスメイトがオーエンのオフィスを訪れていて、彼の人気の高さと彼らの情熱を感じ嬉しくなった。

夕方、この秋に僕が所属する映画学部(Film and Media Arts)を卒業する二人の大学院生の卒業制作作品が大学の所属する映画館(スクリーニングルーム)で公開された。

「自分たちは一年後に果たしてここまでいけるのか・・・」

ニューヨーク大学のジャーナリズム大学院に通っていた時、上級生の作った卒業制作作品に圧倒され、と興奮と焦燥感を同時に感じたのを覚えている。

正直、今回観た2本の作品にそこまで圧倒的な力を感じなかったが、やはりそれぞれの作家の個性が否応なく反映されていて、ジャーナリズムとはまた異なる視点で、芸術の奥深さを感じた。芸術には、観る人の感性も問われる。そこに一つの正解はないためだ。その作品の奥深さを僕がまだ気づいていないということもあるかもしれない。

そこに対する謙虚さを同時に抱きつつも、やはり自分自身がニューヨーク大学に通っていた頃よりもすでに様々な経験を積んできたことも大きいと感じた。僕が卒業する時にはもっと圧倒するような作品を作ってやろう。そんな思いを沸々と抱きながら、劇場を後にした。

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