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なぜカフェで仕事をするとはかどるのか?

外出先のタッチダウンとしてカフェで仕事をはじめたところ思いのほか密度の濃い時間を過ごせたということが何度かあります。どこでも仕事ができるようになった今ではカフェをはじめとしたサードプレイスがワーカーの働く場の選択肢として進化を遂げており仕事のできるカフェカフェの様なオフィスのニーズが年々高まってきています。

カフェの環境がオフィスと比較しどのような違いがあるのか?居心地やはかどりに関わるファクターを抽出してみたいと思います。

オーディエンスエフェクト Audience effect

外部の視線によってパフォーマンスや心理状態に影響を受けることを「見物効果」と呼んでいます。人は様々なレベルの見物効果に身を置きながら活動成果を左右されています。スポーツで考えてみても個人での自主練習と大観衆の中での試合では緊張感や引き出せるパフォーマンスに差があることは想像できます。

日々の職場ではどの様な状況におかれているか。自身と関係の深い仲間が周囲に在籍し、目の届く範囲にマネージャーが座っているのが一般的です。
カフェという場を考えてみると自身と関連のない他人が相互干渉のない事を暗黙のルールとし「場」を共有しており、見物効果が非常にニュートラルな状況がうまれています。一人っきりで怠惰になるでもなく、周囲の知り合いに気を揉む訳でもない心地よく活性したマインドを維持できる場になっていると言えます。空間をつくるときはそこにどの程度のオーディエンスエフェクトが生まれるかを想定した場づくりが必要になります。

​バイオフィリア biophilia

"バイオフィリア:生得的自然愛"は科学的仮説として、1980年代の初期にハーバード大学の生物学者であるエドワード O.ウィルソンによって提起されたものです。このバイオフィリアという仮説は、人間が自然と交わりたいと望む本能、また遺伝的な欲求を指します。
森林浴をし自然に触れて悪い心地がする人が少ないのは経験的にも理解できます。自然に触れると理屈ではなく遺伝子レベルで心が動かされるという訳です。カフェには必ずといっていいほどファサードや開口があり外界との繋がりが考慮されており、そこから自然光を取り込んで時間経過や天候を感じ、風による外界のゆらぎを感じとることができます。海辺や山中などの「無作為の自然」であればなお心地が良く感じることができます。近年のインテリアトレンドの観点で行ってもブルックリンスタイルのような、「風化」や「自然な不均質さ」など、悪く表現すれば古さや粗を感じるデザインが社会的に許容され始めており空間における自然表現の幅も広がりを見せています。

インターバルアクティビティー interval activity

人間が生きていくため無意識のうちに心身機能を調節してくれる神経を自律神経と呼んでいます、自律神経は興奮や緊張などのストレス状態をつくる「交感神経」と、心身を休め体の回復に努めるリラックスした状態の「副交感神経」に分類されています。基本的には日の出ている時刻は交感神経、沈んでいる時刻に副交感神経が優位な状態になりますが、日中の交感神経が覚醒している状態で適度な休息を挟むことが心身を持続的に活動させるには重要になってきます。カフェという場には「飲食」や「音楽」「談笑」「安楽姿勢」など副交感神経と関係の深いファクターが多く、神経のバイオリズムを変えることができます。効率を追求しオーバーワークになってしまうよりアクティビティーにインターバルを挟むことで心身が健やかな状態を維持できるといえます。

オープンマインド open mind

カフェの歴史は古く、現在のカフェ形態に近いものとしては17世紀ウィーンで始まったThe Blue Bottle coffee houseや、現存するフランス最古のカフェであるパリのLe Procopeなどが歴史として語られています。当時は鏡やクリスタルガラスのシャンデリアなどの装飾的な内装で飾られた空間で、安く滞在できつつも少し贅沢な雰囲気を感じながら多くの紳士が気晴らしや議論、噂話を交わすために集まったといわれています。カフェは歴史的に情報収集や非公式な出会いを生む場として存在していました。カフェという場は歴史文脈も含め、オープンさやインフォーマルな懐の広さを現在でも醸し出しています。場が持つ空気がモードやマインドに作用し、思考に開放性を生み出していると考えられます。

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