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「新規事業の成功条件って?」

 今日は「新規事業の成功条件」というテーマで話をします。ここ数年、企業はその好業績により資金面で余裕ができ、新規事業への意欲が旺盛だと感じます。それは報道でもそうですし、実際に当社においても、様々な企業から新規事業のコンサルの依頼がきており、この流れは確かにあると日々体感しています。

そんな中、先日当社であるセミナーを開催しました。テーマは「事業の価値を伝えるにはどうしたらよいか?」というもの。セミナーにはベンチャー企業の方はもちろん、大手企業の新規企業の立ち上げ責任者まで様々な方が集まり、セッション後のディスカッションも非常に熱気を帯びたものになりました。

ただ新規事業を担当するみなさまの話をうかがって、私が思ったのは「多くの新規事業を担当する方」のなかに、以下2点に関する明確な定義がないということです。それは、

①「事業とは何か?」

②「何が達成されていると事業が成功するか?」

です。

上記に関しては、様々な意見が存在すると思います。ただいやしくも「新規事業を立ち上げ、成功させよう」というのであれば、少なくともこの両者に対する「持論」を持ち合わせていなければ、残念ながら成功はおぼつかないのではと思います。

というと「じゃあ、あなたはどうなの?」となりますが、私はそのセミナーで以下のようにお話ししました。まず「事業とは何か?」という問いに対して、私は事業とは、

社会・生活者の課題/満たされない願望を発見し、 その解決に最適な商品を提供し、解決していく活動

だと思っています。この定義は当たり前といえば当たり前。そしてベンチャーの方だとこの意識をお持ちの方もいますが、特に大企業の方だと、この視点がまったく欠落していることがあります。大企業の場合、会社の経営的観点から「自社のリソース(既存技術etc)が活用できて、成長性が高い分野はここなので…」といった企業側の皮算用で、新規事業のコンセプトが決まっていくことがよくあります。それ自体は悪いことではないですが、一方でターゲット層の課題、願望に対応しているかが二の次になっている、というケースが多いと感じてます。

では次に「何が達成されていると事業が成功するか」という問いに対して、私は2つの理解を獲得することが需要と思ってます。それは

①その事業が目指す課題解決・願望実現が、    社会・生活者にとっていかに重要であるか
②その事業の提供物(商品)が、課題解決・願望実現を
実現するにあたっていかに最適であるか

という理解です。これも当たり前といえば当たり前の話。ですが、皆さん、これらを忘れがちだと、日々様々な方のご相談に乗っていて感じます。

まず①ですが、そもそも生活者の立場に立てば、日々の生活は「解決したい課題」や「実現したい願望」であふれています。痩せたい、もてたい、おいしいもの食べたい、リラックスしたい、若いままでいたい。。。新規事業はこの中の、ある特定の課題・願望にフォーカスを当て、その解決・実現策を提供していく活動です。一方、人間の時間と財布の中身は決まっていて、この中から優先順位を選んで解決・実現行動に移っていきます。ということは、新規事業が成功するためには、あまたある課題・願望の中から、その事業がターゲットにする課題・願望が、優先順位の高いものとして認められる必要があるのです。ベンチャー企業は全く新しい着眼点で課題・願望を切り取り、事業立ち上げをしていますが、彼らに立ちはだかるのは「その課題解決・願望実現は、既存のものよりも重要かつ、お金を払ってもするべきである」という理解を勝ち取れるかどうかという壁です。

次に②ですが、その新規事業がいかに斬新な解決手段を用意したとしても、それが「課題解決・願望実現」にとって最適=最もよい手段、と認められない限り、それが選択されることはありません。例えば「不眠症を解決したい」という課題に対して「●●という成分を日本で初めて使ったサプリ」を用意したとします。事業者からは唯一無二に見えるかもしれませんが、残念ながら、生活者の視点からすれば他の選択肢はあまたあります。商品でいえば、競合サプリはもちろん、それ以外の「枕」「マットレス」などの寝具がありますし、商品購入以前にも「運動(散歩)」といった生活改善という選択肢もあり、それらにも勝っていかなくてはならない。その中で、例えば「枕」「布団」=高額/「運動」=手間がかかる/「他のサプリ」より「●●という成分を初めて使ったサプリの方が効果がある」ということが科学的に証明されているなど、この商品が「課題解決、願望実現に最適な手段なのだ」という理解をキチンとつくる必要があると思うのです。

ここまで話をすると「じゃあそれはどうやるの?」という話になりますよね?「それは事業のカテゴリー、内容によって様々で、別途検討することが必要です」というと「なーんだ…」ということをいう方もいらっしゃいます。ただ私がここでお伝えしたいのは「そもそも何を満たせば事業が成功するのか?」という大前提(成し遂げたい状況)をキチンと設定することなく、施策・打ち手から入ってしまっていることが、新規事業の現場では非常に多いと思ってます。これでは地図のない中で旅に出るようなものであり、うまくいかない・失敗した時に立ち戻る場所もありません。

今回の答えがすべてではありませんが、それぞれの新規事業のご担当の方が「事業とは何か?」「何が達成されていると事業が成功するのか?」というそもそも論・本質論を考えてみることは非常に重要と思います。なぜなら、成功のための要件が明確でなければ、何から着手すべきかは、本来見えないはずだからです。焦って小手先の打ち手に走る前に、これらの明確化をすること、とても重要だと思うのです。

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