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役に立つ”ペルソナ”って何だろう?

今日は”ペルソナ”について書きます。

マーケティング・コミュニケーションの業務をしていらっしゃる方でしたら”ペルソナ”という言葉を一度はお聞きになった、もしくは作成なさったことがあるかと思います。マーケティング活動において、ターゲット像をより明確にするために、性・年代とかデモグラフィック的な要素だけでなく、ライフスタイルとか嗜好性とか、サイコグラフィック的な部分までを踏まえ、仮想プロフィールとして見える化したものです。

ただこの”ペルソナ”、人・会社によっていろいろな定義があって、しばしばとてもモヤモヤさせられます。その一例として、以前担当した調理家電ブランドの”ターゲット・ペルソナ”についてお話しします。このブランド、高級ブランドではないのですが、まあまあオシャレ/安くない値段で売っていて、主婦をターゲットにしていました。そのターゲットについて、ご担当者から「当社ではこのように”ペルソナ”を設定しています」と見せてもらったのが以下です。

「港区在住の38才主婦。慶応大学を卒業し、子供は小学生の女の子が1人。夫は大学時代から付き合っていた男性で、現在外資系の金融会社勤務。自分はファッションブランドのプレス(広報)。子供はお受験をして、一貫校の小学校に通学。忙しい毎日だが、週末は家族でグランピングをして、ゆっくり過ごすのが趣味。家族との生活の場を大事にしたいと思い、調理家電もこだわって選ぶ。。。」

どうでしょう。いろんな会社で、これに近いものを拝見することがあるのですが、私は心の中で

「これを一生懸命作って、どんな得があるの?」

とつぶやかずにはいられないのです。実際にお会いする方に「この”ペルソナ”を作成なさったことで、どんなよい影響がありました?」とお伺いすると「ターゲットに対する社内チームの理解が深まりました」「広告のトーン&マナー統一のために活用しています」といった話が出てきます。

これはこれでよいことだと思うのですが、さらに質問を重ねて

「ペルソナをつくって、販売への影響だったり、  戦略・施策を考えるプロセスに変化はありました?」


という質問になると、残念ながら、答えられる方はごくごく一部という状況です。そもそもペルソナによりターゲット像を明確にするのは、それが売りを拡大できる環境づくり・施策に活用するためと思います。そして高級ブランド・ファッションブランドなど、ユーザー像への共感が購入の後押しをするカテゴリーは、上記のようなペルソナ設定は価値をもたらすのかもしれません。ただ現実には、非常に多くの「そうでないカテゴリー」において「売りに影響を与えない”ペルソナ”作成」を大変な労力をかけて実施しており、それによりターゲット理解ができた=マーケティングがうまくいくと満足してしまうケースが数多くあるように思います。

となると「じゃあ、どんな”ペルソナ”をつかむべきなの?」となりますよね。私が価値が高いと思うのは

「商品・ブランドを買うと決めるのに、決定的な影響を与えているターゲットの属性・背景要因」

だと思います。

ここでは(私が担当してきたw)「女性用・高級下着ブランド」の話をしたいと思います。ユニクロのブラトップなどの登場により女性下着はコモディティー化(そこそこの値段・機能でよい)が進んでおり、このブランドは長期的に販売が停滞傾向にありました。そんな中「改めてうちのブランドを愛し続けてくれている、優良顧客のターゲット像を理解しよう」というプロジェクトがスタート。その際に”ペルソナ”を理解しようという試みに着手しました。最初は上記のように現在のライフスタイルを中心に見ていったのですが、これがバラバラ。高収入で美容・健康意識の高いシングル女性から、収入は平均的で美容健康意識はさしてないのですが、下着にはこだわるマニア層まで、現状ではいろいろいたのです。

ただそもそも「そのブランドをなぜ使い始めたか?」を聞いていった時、多くの方に「実は母に下着はちゃんとしたものをつけなさい、と言われたんです」という共通体験があったのです。もともと「ちゃんとした下着をつけるのは女性としての身だしなみ」「ちゃんとした下着はからだ(ボディーライン)を守る」という話を思春期にすりこまれ、ずっとユーザーでいるという構造だったのです。

冒頭のライフスタイルに偏重したペルソナとは違い、この「キチンとした下着を薦められ、それを守ってきた」という要因は、需要・顧客拡大につながる可能性を感じます。例えば彼女たちに子供(娘)がいるのだとしたら、娘の思春期に、自分が母親からもらった教えをどう再現するか。彼女たちの根底にある「ちゃんとした下着をつけることは女性の身だしなみ」ということをこのブランドのノンユーザー層も含めて、改めて啓発するにはどうしたらよいかなどなど。

”ペルソナ”というもの自体を私は否定しませんし、うまく活用できることは多い。ただ”ペルソナ”をつくることが目的化したり、それですべてが完了したと満足するのは本末転倒。「あくまでマーケティングに役立てる」という目的は常に見失わず「どんな”ペルソナ”を把握する・作成することが大事か」を考えていくことが必要だと思うのです。



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三宅 隆之

消費者行動アナリスト。株式会社インテグレートの執行役員。https://www.itgr.co.jp/ 2児の父。ランニング中毒者(月間走行距離は200km超)。「日本のマーケティングのここが変」「生活者に買いたいと思ってもらえるルール・コツ」についての気づきを発信していきます。

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