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大麻の話(前編・モロッコ編)

今回なんだか物々しいタイトルですけど、僕は別にこの事について問題提起がしたいとかそういうことではなくて、ただただ自分がこの旅の中で見てきたものをお話ししようと思ってるだけなのでその点はご了承を。

じゃあとにかくまず、タイトルとは全く関係の無さそうな、ある美しい町の紹介から話を始めますね。


北アフリカの観光大国モロッコの北部に、別名「青い街」とも呼ばれる「シャウエン(またはシェフシャウエン)」という都市があります。


シャウエンは青い街という名の通り、街中のほとんどの建物が青く塗られている珍しい場所で、近年はその知名度もどんどん上がり、他では見られないこの美しい景観を求め世界中から観光客が訪れる有名観光都市になっています。

日本でも最近はたくさんメディアで紹介されているようなので、この街の存在を知っている方も少なくないんじゃないでしょうか。

僕もこの旅を始めてからこの街の事を知ったんですが、小さな頃から青色が大好きな僕にとっても、モロッコに行くまで、シャウエンはいつか絶対に訪れたい憧れの場所の一つでした。

で、旅を始めて4年目にようやく夢のシャウエンに行くことが出来たんですが、それからというもの、訳あって僕はモロッコ自体には何度も何度も入国し合計1年以上は滞在したので、ここシャウエンも、人の案内を含め結局4,5回は訪れ、今では相当愛着のある思い出深い場所になっています。

もちろん、数ある滞在中にはたくさん写真も撮っていたので、まずは写真を使って少しだけその青い街「シャウエン」を紹介しますね。


(シャウエンの全景。ほら、青い。)


シャウエンは、モロッコの北部、標高2000mほどのリーク山脈の中腹(560m)に位置する街で、現在4万人ほどの住民が暮らしています。



メディナ(旧市街)の中は本当にほとんどの建物の壁が鮮やかな青色の染料で塗られ、それがムスリムの国であるモロッコの雰囲気と相まってとっても幻想的な世界を作り出し、歩いているとたまに自分が絵本や物語の中にいるかのような錯覚に陥ることさえあります。

しかも、モロッコのメディナは昔敵の侵入を防ぐために迷路のように入り組んで造られたということもあり、シャウエンのメディナは「青の迷宮」なんて呼ばれることも。


そもそもなんでこの街が青く塗られているのかという理由については諸説あって、もっとも有力なのが、昔スペインからの迫害からこの街に逃れてきたユダヤ人が、ユダヤ教で神聖な色とされている青色に街全体を染めてしまい、その後ユダヤ人がイスラエルに移住していなくなった後も、街を青く染める習慣だけは残ったという説。

他には、「虫よけのために青く塗った」とか、「夏の暑さを視覚的に紛らわせるため」なんて説もあるみたいなんですけど、結局のところ、今ここに住んでいる人ですら実際の正解は分からないというのが本音らしく、それがまたシャウエンの青の神秘性を生んでる気もします(笑)


僕の大好きな写真、青い街の青い少女。


僕ら観光客にとっては非日常で幻想的な街でも、ここで暮らす子供たちにとってはただの日常世界。

彼らはそこら中で元気に遊びまわっています。


とっても貴重な、おばさんが実際にシャウエンを青く塗っている証拠写真(笑)


シャウエンの人々。


レストランの中だって青い。


夜は夜で、その青さがまた別の幻想的な世界を演出します。


そもそもモロッコにはネコが多いことで有名なんですが、ここシャウエンはそんな中でも特にネコの多い街。

「ネコ」×「青の街 」だなんて、インスタ女子にとってはなんとも最高な場所じゃないですか?


ただ、これはほとんどの観光客には知られていないようですが、実はここシャウエンにはネコ以外にももう一種類たくさん生息する生き物がいます。

それは、この写真の子供たちが必死に探しているもの。


それは、なんとこれ、サソリです。

…ひ、ひえーー!!まさかの!!

このサソリに毒があるかどうかは確かめられてないんですが、とにかくシャウエンの子供たちの中では、街周辺の山の斜面の土の中にいるサソリをほじくり出して捕まえるという遊びが流行ってるみたいなんです。

で、たくさん集めて、最後は一気に燃やすらしいです。

こ、こどもって…(汗)


この日子供たちによって捕まえられた可哀想なサソリ達。


こっちの生き物は全然インスタ映えしませんね…。

おほほ…。

ただ、サソリが生息するのはあくまでも周辺の山間部の土の中の話で、街の中には一切サソリはいませんので、その点はどうかご安心を。



そして、ここからが今日の本題です。

とにかく、最後のサソリは抜きにしても、このようにシャウエンという街は、とっても美しい有名観光都市なわけです。

ただ、実際は、シャウエンには観光都市という表の顔以外にも、もう一つ裏の顔があります。

それが、タイトルにもある通り、なんと「大麻の街」という顔。

もし、これを読んでいる人の中で一度でもシャウエンを訪れたことがある方がいたら分かるかもしれませんが、シャウエンのメディナ内を歩いているとよく「ハシシ(大麻)、ハシシ」と現地民から声を掛けられることがあります。

初めてそうやって声を掛けられた時、僕はとってもビックリしました。

お隣のヨーロッパの国々ならまだしも、ここモロッコは前述の通りイスラム教の国。

僕らにとって色々と戒律の厳しいイメージのあるイスラム教のこの国で、飲酒が良くないとされているのは知っていたので、まさかそれより格上(?)の大麻の話が出てくるなんて思ってもみなかったからです。

そして僕自身は、生まれてこの方、大麻や麻薬類はもちろんのこと、タバコすら一本も吸ったことがないというようなタイプの人間で、自分がそういうものを吸うということに関しては全く興味が無いので、それからも声を掛けられる度にただただ無視を決め込んでいたんですが、その後ようやくその理由が分かりました。


それは、さっきの写真とはまた別のレストランでの事。

長期間のシャウエンでの滞在で、僕にはいくつか行きつけのレストランがあり、その内の一つですでにとても仲良くなっていた同世代の男性オーナーと話をしている時に、僕が思い切って大麻の質問をしてみると、彼が色々と教えてくれたんです。


それはまず、ここシャウエン周辺は実は一大大麻生産地であるということ。

もちろんというかなんというか、ここモロッコでも大麻所持や、ましてや生産などは完全に違法です。

でもとにかく、ここシャウエン郊外の村々では、大々的に地元農家が大麻を生産しており、そこら中に大麻畑が広がっているらしいのです。

そしてそれを精製・街中で販売しているわけですが、物価的な安さや品質から、お隣の国スペインなどから、その大麻を求めてヨーロッパの若者がこぞってシャウエンにやって来ているということなんです。

確かに、シャウエンの街中にはやたらとスペイン人の若者の多さが目立ってるんですが、単に距離的に近いからという意味だけじゃなくて、そういう理由もあったんですね。

僕はモロッコでは個室の宿が十分に安いのであまりホステル(相部屋)には泊まりませんが、シャウエンの欧米人向けのホステルでは、テラスでみんな堂々と大麻を吸って回しあっているみたいです。

彼らにとってはヨーロッパの喧噪や現実から離れ、シャウエンはまさに「大麻の天国」なんでしょう。


(ただ、ぶっちゃけ、僕がその後モロッコの色んな地域を旅して感じたことは、ヨーロッパ人だけじゃなくモロッコ人だって大麻を隠れて吸っている人たちは結構どこでもいるということ。
でも、もうこればっかりは、イスラム教だろうが何だろうが、自分に厳しくきっちり戒律を守って生きる人もいれば、禁じられている酒をがばがば飲んだり、大麻を吸ったりする人がある程度いるというのは世の常であり、人間の世界ではいくら同じ国や同じ宗教に属していても全員が全員同じ生き方をしているわけじゃないという、ある種当然のことです。
ここに関しては、僕がとやかく言うつもりはなく、全ては個人の問題。)


でも、さっきも言った通り当然ここモロッコでは大麻の所持・吸引、ましてや大々的な生産などは大きく違法であるはずなんですが、その辺りの問題は一体どうなっているんでしょうか。

すると、レストランオーナーが言うには、そこには国の複雑な事情が絡んでいるようでした。


もちろん表向きは違法です。

ただ、どうやらそもそもがその大麻販売の利益を国自体も秘密裏で受け取っているらしいのです。

ここシャウエンの大麻産業は決して小さいものではなく、相当大規模なものです。

本来ならそんな大規模な闇産業が野放しにされ続ける訳がありません。

でも、彼が言うには、すでに国家の収入の1割以上がこの大麻産業の利益によるもので、もう国はそれを手放すことが出来なくなっているようなのです。

もちろん、警察も一切大麻を取り締まらないなんてことはなく、たまには健全アピールのために逮捕者を出すなんてこともあるみたいですが、実際はその取り締まりも賄賂で簡単に揉み消せたり、ほんとんどは見て見ぬふりで、とにかく国ぐるみの暗黙の了解状態が続いているようなのです。


ただ、これらの話はあくまでも地元レストランオーナーの彼が話してくれたものであって、全てが真実かどうかもちろん僕には断言はできませんが、確かに僕の数多いシャウエンの滞在中も、こんなに頻繁に声を掛けられる大麻の街なのに警察がそれに目を光らしているなんて姿は一度たりとも見たことがありませんし、他にも色々納得できる部分が多く、僕にとはとてもリアルな話に感じられました。

そして何よりも僕にとってリアルだったのが、この後実は、彼が実際に僕をその郊外の大麻畑に連れて行ってくれて、僕が自分自身でそれを目の当たりにできたこと…。


さっきも言ったように、僕は一切大麻を吸いませんし、また吸うことにも一切興味がありません。

でも、この世界旅の中では、世界の現実をなるべく偏見無く自分自身の目で見てみたいという想いは常に持っていて、今回も、大麻を吸う云々ではなくてこの大麻産業の闇や実態という部分についてはとても興味を持ち、彼の話を食い入るように聞いていました。

すると彼は、僕があまりにも熱心に話を聞くので、

「TAKAはいつもここに来てくれてもう俺の友達みたいなもんだし、実は俺の知り合いに大麻農家がいて、今から用事でその近くまで行くつもりだったから、よかったら車でそこまで一緒に連れて行ってあげようか?」

と持ち掛けてくれたんです。

ただ、もちろん、これが初対面の男からの提案なら、こんな怪しい胡散臭そうな話には僕も乗りません。

だって、こちらが大麻を買ったり違法行為をするわけではないけど、それでもやはり闇産業に関するセンシティブな話なのでこちらはどうしても身構えてしまいますし、ノコノコついて行って後で法外な案内料を請求されたりしてもたまったもんじゃないですから。

でも、彼はなんといっても、僕の行きつけの、しかもシャウエンの中でもかなり有名なレストランのオーナー。

僕は普段からいつも彼と色んな会話を交わしてすでにお互いの事を良く知っていますし、こんな立場の彼が何か悪だくみを考えてるとは到底考えられないので、ドキドキしながらも二つ返事で彼の提案にありがたく乗らせてもらったのです。


そしてこの後、彼は本当に僕を車に乗せてシャウエン郊外の村まで連れて行ってくれました。


シャウエンの街を出て、こんな山道を進むこと約20分ほど。



そこには、本当に、こんな風に大麻畑が広がっていました…。

いくら話では聞いていたとはいえ、このモロッコで、有名観光地からたった20分の距離に本当にこんな光景が広がっていることに僕はやっぱりどうしても驚きを隠せず、しばらく心臓がバクバク鳴って止まりませんでした。

青い街「シャウエン」の光と影。

今まさに僕はそれを目の当たりにしているわけです。

やっぱり世界はみんなが知っているような表面の綺麗な部分だけで成り立ってるわけじゃないんだなっていう、言わば当たり前の事をガツンと頭を殴られて再確認させられた気分です。



農家の方々ともお会いさせてもらいましたが、本当に普通の素朴な田舎の方々でした。

こんなに大規模な農場でも、やはり警察によるお咎めは一切無いらしいです。

ただ、レストランオーナーによると、彼らはこの産業の中のいわゆる末端なので、ほとんど儲けているわけじゃなく、ただただ細々と暮らしているということ。


ああ、世界はまだまだ僕の知らないことばっかりだ。


…と、とにかくこれが今回僕がモロッコの「シャウエン」で見てきた大麻に関するお話です。



最近は日本を含め世界中で大麻に関する是非が論じられることが多くなってきています。

もちろん僕も、大麻が、他の麻薬や覚せい剤などとは異質で、体に対する悪影響や依存性が少なかったりすることぐらいは知っています。

でもとにかく、未だに国や地域でその扱いや法律上の考えは全く違い、やはりこのモロッコのように国の複雑な思惑などもあるでしょうし、同じものでも世界中でこれほど価値観が違うというのはとても興味深いことです。


そして実は僕、ここシャウエンを訪れる2年前、この旅に出て3年目の時にも、また別の国でその国の大麻事情をもっと近くで目の当たりにしたことがあります。

その国は、カリブ海に浮かぶ島国「ジャマイカ」。

今回のモロッコとは違い、まさしく「ガンジャ(大麻)」で知られた国です。

というわけで、次回は後編として、そのジャマイカで僕が目にしてきた別の大麻事情を、また写真と共にみなさんにお話ししたいと思います。

それでは、また次回!チャオ!


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