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演奏効果が高い譜面とは

「演奏効果」という言葉があります。

調べた限りでは明確な定義が見当たらなかったのですが、演奏を聴いた人が受ける印象(特にポジティブなもの)全般を指すと思います。
例えばメロディがきれいだとか、ハーモニーがよく響いているとか、音色がいいとか、華やかでカッコいいとか、楽しいとか悲しいとか。

演奏効果が高いというのは、この印象が強いということです。
もっと平たく言えば、演奏効果が高いほど聴いたときに「上手く感じる」ということです。
逆に言うと聴いても感じることの少ない退屈な曲が、演奏効果が低い曲ということになります。

個人的にはこれに加えて、「費用対効果」や「時間対効果」に相当する意味が含まれていると思います。
つまり、「奏者にとって演奏しやすい」かつ「聴いている人に与える印象が強い」曲ほど、演奏効果が高い曲ということになります。

演奏効果が高い譜面の特徴

ひと口に「演奏効果」といっても多岐にわたりますから、特徴を網羅することは難しいです。
ここでは自分が重要だと思う項目(特に編曲する際に意識していること)をいくつか挙げてみます。

1.楽器にとって吹きやすい音域で書かれている

個人的にはこれが最も重要だと思います。

金管アンサンブルで言えば、トランペットやホルンは比較的高い音域を出すことができますが、ハイトーンばかり並べた譜面はあまり良い譜面とは言えません。
吹きやすいのはあくまでチューニングのB♭付近の中音域であり、基本的にはその近辺の音を並べつつ、重要な箇所でハイトーンを割り当てるのが効果的です。

同様に、低音楽器に低すぎる音を割り当てるのも考えものです。
バストロンボーンでチューバの譜面を代わりに吹くケースは時々ありますが、基本的にはバストロンボーンであっても吹きやすい音域はトロンボーンとそこまで変わりません。
Low-Cばかり並べたりするのは、あまり効果的ではないと思います。

2.フレーズが取りやすい

ブレスをどのタイミングで取るかは金管奏者にとって死活問題です。
適切に休みが配置されていれば奏者は自然に息を吸うことができ、のびのびと演奏することができます。

また、メロディの抑揚のつけ方が自然にできる譜面は、とても吹きやすいです。

3.ハーモニーのバランスが良い

金管アンサンブルをやるからには、決め所でのハーモニーをきれいに響かせたいところです。
きれいなハーモニーのためには音程も重要ですが、同じくらいバランスが重要です。

特に金管十重奏はトランペットが4本という頭でっかちな編成ですから、意識的に低音部を厚くするときれいに響くケースが多いです。
トロンボーンの低音部やチューバにはきちんと根音や第5音を割り振り、和音全体を下から支えるようなバランスにすると良いと思います。

演奏効果が低い譜面は悪い譜面なのか

演奏効果の高い譜面に共通していることは、「音楽づくり」の部分を譜面が担ってくれるということです。
奏者としては譜面通りに吹けば音楽になり、それなりの曲として聴かせることができます。

では演奏効果の低い譜面が悪い譜面かというと、そうではないと思います。
悪い譜面なのではなく、「奏者が自身の力で音楽づくりをする必要がある」譜面、なのだと思います。
これは簡単ではないことですが、奏者にとってはやりがいでもあり、きちんと取り組めば自分の中の音楽表現の引き出しを増やすことができます。
そうして引き出しが増えれば選曲の選択肢も増えてきて、音楽の楽しみが広がります。

しかしながら、「アマチュア団体」が「演奏効果の低い譜面ばかりを採用する」ことは避けるべきかな、と思います。
演奏会の成功はお客さんの満足あってのものです。
奏者のチャレンジとのバランスを上手く取ることが、大事だと思います。


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