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金管十重奏の良さについて

金管アンサンブルで最もメジャーな形態は、金管五重奏です。
トランペットが2人、ホルン・トロンボーン・チューバがそれぞれ1人ずつの5人で構成されるアンサンブルで、完成度の高い編成であり、多くの譜面が出版されています。

次にメジャーなのは、金管八重奏でしょうか。
これは吹奏楽連盟が主催しているアンサンブルコンテストの最大人数が8人であるからだと考えられます。
よくある編成としてはトランペットが3人、ホルンが1人、トロンボーンが2人、ユーフォニアムが1人、チューバが1人。
曲によってはトランペットとホルンが2人ずつだったり、ユーフォニアムを抜く代わりにトロンボーンが3人になったり、フレキシブルです。

そしてそれを上回る編成でありながら、金管アンサンブルの歴史の中で地位を確立している形態として、「金管十重奏」があります。
編成はトランペット4人、ホルン1人、トロンボーン4人、チューバ1人。
これは金管アンサンブルの先駆け的な存在であるフィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル(PJBE)が、試行錯誤の上で辿り着いた編成です。
金管アンサンブル界隈における古典的な曲は多くがこの編成で書かれており、それらはPJBEが解散して30年以上経った今でも、多くの団体の主要なレパートリーになっています。

この金管十重奏、五重奏と比べると人数を集めるのも大変で、特に吹奏楽畑の人からすると編成も馴染みのないものだと思います。
しかし、十重奏には優れている点がたくさんあります。
ここでは金管十重奏の良いところを、メジャー編成である五重奏と比較して述べていきたいと思います。

金管十重奏の良いところ

1.音色の幅が広い

五重奏ではトランペットを除いて、それぞれの楽器が1人ずつしかいません。
2パートあるトランペットもどちらかというと独立した動きをすることが多いので、ある意味五重奏はソロパートの集合と考えることができます。

十重奏ではトランペットとトロンボーンは4人ずついますから、同種楽器のセクションによるユニゾンやハーモニーを実現できます。
セクション単位でメロディを担当することもあれば、セクション単位で伴奏をすることもあります。
そこにソロパートを組み合わせたり、別のセクションを組み合わせたりすれば、音色の種類は掛け算的に増えていきます。

もちろん十重奏は五重奏の編成をすっぽりそのまま含んでいますから、五重奏的な音色を出すこともできます。

2.ダイナミクスの幅が広い

十重奏は五重奏の倍の人数がいるので、単純計算で倍の音量を出すことができます。
大きい音量を出せることはそれだけでも強みですが、重要なのは「強弱の差を大きくできる」という点です。

また、同じpやfの場面でも、音を出す楽器の本数を調整することで、音量だけではなく「音の厚み」に変化を持たせることもできます。

1と2に共通することですが、十重奏は音楽に変化を持たせやすいと言えます。
変化に富んだ音楽は聴き手を飽きさせないことにつながります。

3.負担を分散できる

これはイメージしやすいかと思いますが、五重奏だと休みがなく吹き詰めになってしまうような譜面でも、十重奏であれば奏者が交代交代で吹くことにより、余裕をもって音を並べることができます。
1人で吹くには難しいような早回しであっても、分担して吹けば実現できたりします。

また、五重奏が各楽器ともソリスティックな吹き方を求められるのに対し、十重奏は「皆で音楽を作る」という側面が大きいです。
奏者の精神的負荷も、五重奏に比べれば十重奏の方が小さいかと思います。

体力的・技術的・精神的な負担を分散できるというのは、アマチュア奏者にとってはメリットです。

終わりに

ここまで五重奏と比較した際の十重奏の良いところを述べてきました。
決して五重奏がフォーマットとして劣っているという訳ではなく、むしろ大変優れた編成なのですが、文字数が多くなってしまったので別記事に分けて書きたいと思います。

金管十重奏に触れたことがないという方は、ぜひ色々な音源を聴いてみていただければと思います。
楽しい曲がたくさんあります。

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