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紙の新聞を読む人だけが手にするもの

ここに来て新聞がけっこうおもしろいなーと思っています。

ぼくは紙で「日本経済新聞」を読んでいるのですが、インターネットでは得られないメリットがいろいろあることに気づきました。

今日はそのことについてお伝えしてみたいと思います。

「有限」だからこその安心感

紙の新聞がいいところ。

ひとつめは、安心感が得られるということです。

インターネットだと当然ながら記事はどんどん出てきますよね。本当か嘘かすらわからないような情報が無限に出てくる。だからこそ詳しく知ることもできるのですが、一方でずっと「消化不良」な感じもあります。

紙の新聞だと、とりあえずそこに載っている情報に目を通しておけば完ぺきではないにせよ、時代についていくうえで最低限のものが脳に入る感じがあります。ただのメンタル面の話なのですが、この「安心感」みたいなものってわりと大事な気がします。

新聞を見ていれば、世間的に「何が重要なニュースで、何がそうじゃないのか」もわかります。世間ではどういうものが「重要だ」と判断されているのか? いちおう一面に出ている記事とか、大きく紙面を割いているような記事は世間で「重要」と判断されているものです。

そこを把握できるのは紙の新聞の利点です。

「SNSの狭さ」を把握することができる

2つめは「SNSの狭さを知ることができる」ということです。

もちろんSNS自体は広大なのですが、ここでの「SNS」は厳密に言うと「自分が見てるSNS」ですね。

たとえばぼくの見ているSNSはやっぱり出版業界の人が多かったり、広告やクリエイティブ業界の人が多かったりします。

でも紙の新聞を見ると鉄鋼業界とか流通業界とか商社とか医療とか漁業、農業とかぜんぜん関係ない世界のことも載っています。

新聞を眺めていると「SNSで見ている世界は狭い世界なのかもしれないな」と思わされます。イケハヤさんとか、はあちゅうさんとかは、ぼくの見ているSNSでは「有名人」ですが、その外では知らない人も多いでしょう。ベンチャー企業のお家騒動(?)みたいなのものもタイムラインに流れてきますが、実は世界から見ると小さな事件だったりする。そういうスケール感を把握しておくのはけっこう大事かなと思います。

別にSNSを見るのが悪いわけではないのですが、SNSを見るときに「これが世界のすべてなのだ」と勘違いしてしまうと見誤ることがある。少なくともぼくは編集者という仕事をしているので、そのあたりの感覚を間違えるとどこかでマーケットを見誤ることも出てきそうです。

パーソナライズ「されない」

3つめは、興味のないことも知ることができるということです。

インターネットは、プラットフォームの会社が(よかれと思って?)「パーソナライズ」してくれます。Yahoo!とかGoogleとかFacebookとかは、ぼくが興味ありそうなものをどんどん送りこんでくれる。それはそれで便利な面でもあるのですが、逆に言うとどんどん頭の中が「タコツボ化していく」危険性もあります。

紙であれば、当然ながらパーソナライズされません。全員が同じものを見ることになる。なので、自分に興味のないことも教えてくれるわけです。ぼくは「すずの価格の相場がいくらか?」ということには興味がありません。おそらくインターネットだけ見ていたら絶対に検索しないでしょう。

紙の新聞を眺めていれば、タイの財閥企業やシンガポールの新興企業の動きが目に入ります。バイデンさんがどれくらいワクチンを供給しようとしているのかとかヨーロッパのコロナの状況はどうなのかとかもわかる。「そうか、ドイツでは書店もロックダウンで開いてなかったんだなぁ」みたいなことも知ることができます。

それらの情報はあんまり日々の生活には関係ないし、すぐに役立つものでもないのですが、そうやって強制的に自分の興味の範疇にないものを知ることができるというのはすごくおもしろいし、この感覚は長い目で見てすごく大切になってくる気がします。

この「全体が見えている感じ」を得られるのは、紙の新聞の大きなメリットかなと思います。

週イチでまとめ読み

まだ購読し始めて半年くらいなので偉そうなことは言えないのですが、ぼくが新聞をどう読んでいるかもいちおう書いておきます。

ぼくは週イチでまとめ読みをすることが多いです。「この方法がいい」と思っているというよりは、忙しくて毎日読めないだけなのですが……。

週イチで読むといいことがあります。

ひとつは重複した情報をいちいち摂取しなくてすむということです。日々情勢が変わるニュースってありますよね? たとえば総務省の人の接待のニュースとか、緊急事態宣言が出るか出ないかとか。そういう話は半日おきくらいに情勢が変わるわけですが、そういうものはだいたいYahoo!ニュースとかチェックできたりします。なので、あえて新聞で毎日チェックすることもないかなと思うわけです。そういうものは一週間に一回だけ情勢をチェックするといい。

週イチで読むと一週間分を一気に読むことになるので読むスピードも速くなります。一気に読むので世の中全体の「トレンド」みたいなことも見えてきます。「今はSDGsの話とかCO2の排出量とかが話題になってるんだな」といったことがわかります。

新聞は一文一文読むようなことはありません。かなり飛ばして読む。10秒で1ページめくるくらいの感覚です。ただそうやって流し見していても、気になる記事があるとパッと目にとまります。そこに関してはきちんと読んだり、写真を撮ってメモしたりもします。

ちなみに政治面、国際面、あと社会面とかはバーッと飛ばして読むことが多く、企業面とかスタートアップ面はわりと入念に読んでいます。

そうやって緩急をつけると全体を俯瞰しつつも、気になる記事はきちんと把握できるのですごくいいんですよね。

広告や訃報欄、首相動静もおもしろい

新聞の広告を見るのもおもしろいです。

1面の下部に「サンヤツ」と呼ばれる本の広告欄があります。そこを見ると「こんなマニアックな本があるんだ」「養豚専門の雑誌があるんだな」といったことがわかります。

2面3面には、今売れている本、注目の新刊、出版社が力を入れている本がチェックできます。「こういうテーマの本が今トレンドなんだなー」というのがわかって勉強になります。

企業の広告も「世の中の流れ」が見えてくるようでおもしろいです。「やっぱりBtoBのSaaSを展開している会社は勢いあるなー」とか「この会社はブランドのためだけに全面広告を出してて儲かってんなー」といったこともわかる。

あと気にして見てるのが「訃報欄」だったりします。

社会面にちらっと出ている訃報ですが、あれを見ると「人生って、はかないものなんだな」とか思うんです。それなりにすごいことを成し遂げた人物でも最後はこの訃報欄に載って終わり。(というか、そもそも訃報欄にすら載らない人がほとんどなわけですが。)訃報欄を見て「人生は案外短いから、やりたいことやらなきゃなー」みたいなに思ったりします。

一方で、いろいろ悩みごとがあったとしても多くの人は80歳90歳とかまで生きて死んでいくので「そんなに悩むこともないか」みたいなことも思います。

あとは「首相動静」ですね(日経は「首相官邸」)。

この欄で首相が毎日何をしてるかがわかります。いろいろ批判もされているし、改善点はいろいろあるとは思いますが、首相動静を見てみると分刻みでスケジュールをこなしていて、毎日がんばってるんだなーみたいなことを思います。あとやたらキャピトルホテル東急のオリガミに行くな、とかもわかります。

というわけで、別にぼくは日経新聞の回し者ではないのですが、紙の新聞を半年以上購読してみたらけっこうおもしろかったので試してみてはどうでしょうか、という話でした。

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