編集者がいなくても、おもしろい文章を生み出す方法はある

 前回のノートで「書籍編集者がどういう仕事をしているか」イメージしてもらえたと思います。「書き手の伝えたいこととマーケットをすり合わせる」のが編集者の仕事。書き手を客観的に見て、その人の強みやおもしろさを最大限に引き出しつつ、マーケットと重なる部分を探し出すのです。

 では、編集者がいない多くの人はおもしろい文章を書けないのでしょうか? たとえばぼくは、ここでひとりでnoteに文章を書いていますが、どうしたらひとりで文章の質を上げていくことができるのでしょうか?

 編集者がいなくても、読みやすい、おもしろい文章を書く方法はあります。

 それは、自分の中に「書き手」と「編集者」をつくりだすことです。書き手と編集者の役割を自分ひとりでやってしまうのです 。


いい文章は「主観と客観の往復」から生まれる

「編集者なし」でいかにマーケットに届く文章を書くか。その手順をご紹介していきましょう。

 まずは、ひたすら「主観的に」書いていきます。むずかしいことは考えないで、頭に浮かんだ思考を書きつけていきます。文法の間違いとか言葉の間違いは気にしません。どんどん書いていきます。思うがままに、気持ちのままに、論理もひとまずどうでもいい。とにかく書いていく。「これは浅はかなんじゃないか」「この考えはおもしろくないんじゃないか」そういうことも考えてはいけません。読者の顔も思い浮かべてはいけません。余計なことは考えずに、どんどん書き進めます。

 さて、そこからです。少し時間をおいたら「編集者」になります。

 目の前にはおそらく「ひとりよがりな文章の塊」が鎮座しているはずです。その塊を客観的に見て「てにをは」をはじめ、「ここは文章が間違っている」「論理がおかしい」「ここは言い過ぎかもしれない」など、客観的に見ながら整理していくのです。

 急に「編集者になれ」と言われてもむずかしいと思うかもしれません。でも、なれます。人は「他人の文章のどこがおかしいのか」を指摘することは得意だからです。


多くの人は客観的に批判・批評することは得意

 人は、客観的にものごとを見ることは得意な生き物です。

 たとえば、世の中のニュースを「客観的に」見てコメントすることはできるでしょう。ヤフーニュースのコメント欄は誰でも書けます。映画を観ても「おもしろくない」「いまいち」という感想を述べることは簡単です。批評のうまい人は「キャスティングがよくない」「オープニングが唐突すぎる」などの指摘をすることもできます。

 それと同様に、他人の文章を見て「どこがおかしいのか」「なにがおもしろくないのか」を指摘することは、誰にでもできるのです。

 主観的に文章を書いてるときは気づかないことでも、編集者の目で客観的に見てみると「もう少し具体的なエピソードを入れたらいいんじゃないか」とか「ここの論理が繋がらないからこういう文章を付け加えた方がいいんじゃないか」などのアドバイスをすることはできます。「ここがいい」「ここが悪い」というのは意外に誰でもできる。これを「時間を置いて」ひとりでやってみるのです。

ステップ1:まず主観的にひたすら書いてみる
ステップ2:そうしてできた文章の塊を「編集者の視点」で見てみる

『嫌われる勇気』の古賀史健さんも、ゲラを何十回と見なおして推敲を重ねていったといいます。いい文章は「主観と客観の往復」でできあがっていくもの。それをひとりでどこまでできるかが文章を磨いていくコツなのではないでしょうか。


音声入力(主観)+編集(客観)で記事を書く

 ちなみに僕は本業をやりながら、このnoteの記事を週に2〜3本ほど書いています。どのように書いているかというと、いま話題の「音声入力機能」の力を借りています。土日の2時間を使って、グーグルドキュメントの音声入力機能を使って文章の塊をつくっています。

 音声入力の段階で気をつけることがあります。

 おそらく、もともと思考がきっちり整理されて、言いたいことが筋道立てて話せる人はほとんどいないでしょう。いきなり音声入力をしても、なんだかよくわからない文章の塊が目の前に現れるはずです。文章の「ぐちゃっとした塊」ができあがる。でも、それでいいのです。

 気を配るべきは、ぐちゃっとしているかどうかではなく、言いたいことが言えているか、考えの核があるか、重要なコンテンツがそのなかにあるかどうかです。

 ちゃんと「言いたいことの核」さえ塊の中に入っていれば音声入力は成功です。あとは「編集者の視点」で、そのぐちゃっとした塊に「。」や「、」を 入れながら、論理的な文章に整理していけばいいだけです。

「客観的」の感覚がわかりにくい人は、目の前の文章の塊を自分の書いた文章だと思わずに、他人が書いた文章だと思ってみましょう。すると「日本語ヤバいだろ」「こいつ、論理おかしいだろ」「もっとエピソードがないと読まれないよ」「うーん、結論がいまいち見えないな」などの改善点が見えてくるはずです。

 ひたすら「主観」。時間をおいて「客観」。この2ステップを踏むことで、編集者のいない人でも、読まれる、おもしろい文章が書けるのではないでしょうか。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

基本的にすべての記事は無料でご覧いただけます。もし有益だと思っていただけたらサポートいただけますと幸いです。「出版をアップデート」するための活動費(イベント代、取材費等)として大切に使わせていただきます。

ありがとうございます!よい一日を!
192

WORDSの文章教室

おもしろい文章、役立つ文章、読みやすい文章を書くにはどうすればいいのか? 10年間、本をつくってきた編集者が、そのコツとノウハウを惜しみなく披露します!!
4つのマガジンに含まれています

コメント2件

大変参考になりました。"自分の中に「書き手」と「編集者」をつくりだす"ことが大切なのですね。と同時に、高いパフォーマンスを出している方は、「一流の書き手」と「一流の編集者」が自分の中にいるんだろうな、とも思いました。僕自身、少しでも高いレベルでものを書けるように意識していこうと思いました。ありがとうございました。
お読みいただき、ありがとうございます!編集者としての自分は上のnote記事をあらためて読みながら、ああすればよかった、などとずっと後悔しています…。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。