「文章が書けない人」は自分に期待しすぎ

「さて、書くぞ」

そう思って、パソコンに向かってパチパチとキーボードを叩く。ほどなくして目の前には到底「おもしろい」とは言えない文字のかたまりが現れる。

「(うーん、こんなはずじゃないんだけどな。文才がないのかしら……)」

ため息ひとつついて、パソコンをパタンと閉じる――。そんな経験はないでしょうか? ぼくにはしょっちゅうあります。

なぜこんなことが起きるのか。

それは自分への期待が高いからではないでしょうか? 文章が書けない人、筆が止まりがちな人というのは、往々にして「自分に期待しすぎ」なのです。

頭のなかに名文がポッと浮かんでそのままスラスラ書けるような人は一部の天才だけでしょう。普通は自分から出てきた文章(?)のクオリティの低さに絶望してしまいます。

ただ、絶望している場合ではありません。むしろ、そこからが勝負なのです。脳から出てきた「粘土」をこねくり回して、なんとかカタチにしていく。そうやって少しずつ文章として整えていけばいいのです。

自分の文章にがっかりするというのは、目指すところが高いということでしょう。だから、いいことなのです。理想に少しでも近づけるよう手を伸ばし続ける。そのこと自体に意味があると思います。

村上春樹もこう言っています。

 原稿の段階でもう数え切れないくらい書き直しますし、出版社に渡してゲラになってからも、相手がうんざりするくらい何度もゲラを出してもらいます。ゲラを真っ黒にして送り返し、新しく送られてきたゲラをまた真っ黒にするという繰り返しです。 『職業としての小説家』より

もし自分の文章と作家の文章を見比べて落ち込んでいるのだとしたら、こんなに無駄なことはありません。

なぜなら作家の作品は「秘伝のタレ」のようなものだからです。何年、何十年と、煮詰め、継ぎ足されてできあがった「タレ」が素人にいきなり作れるはずがない。今ここで醤油とみりんをささっと混ぜて「奥深い味」が出せるはずがないのです。

人生経験や思考を積み重ねるなかで、きっと自分なりの「秘伝のタレ」は熟成されていきます。今いきなりいい味が出せなくても焦ることはありません。書くことを続けていれば、いつかきっと自分だけのいい味が出せるようになるはずです。


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竹村俊助/編集者

編集・ライティングのWORDS代表。ダイヤモンド社を経て独立。『佐藤可士和の打ち合わせ』『ぼくらの仮説が世界をつくる』(佐渡島庸平)『段取りの教科書』(水野学)『メモの魔力』『ストロング本能』等の編集・ライティング。WEB時代の伝わる文章について研究してます。ポテトサラダが好き。

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