見出し画像

夢のはじまり

公園で飴を落とす。しばらくすると、たくさんのアリが集まってきて、自分たちの巣にせっせと運んでいく。アリは嗅覚が非常に優れていて、砂糖の香りをキャッチしてどこからともなくやってくるそうです。しかしアリの環世界ではその飴は飴ではなく、エネルギー源となる何かでしかないでしょう。僕にとってその飴は黄色くて、ドーナツ型をしていて、パイン飴という名前はあるけど、それはヒトの環世界におけるそのものへの定義づけであり、アリには黄色味も、形も、ましてや商品名など概念として存在せず、ただそこにエネルギー源が在るだけなのです。

「人によって価値観は違うよね」という話をするときは常にこの「環世界」という理論を想起します。要は、すべての生物はそれぞれ特有の知覚を持って世界を解釈しているから、あらゆる生物が共通認識している客観的な世界というものはなく、生物各々が主体的に構築する独自の世界である、という考え方です。

さて、僕はサッカー選手を引退しました。noteを読んでくださった方々が温かいメッセージを送ってくださり、本当に嬉しかったです。中には、選手としてまだまだ続けて欲しいという声もありましたし、引退してもサッカーとの関わりは持ち続けて欲しいというお声も頂戴しました。しかし僕は、サッカーとは無縁の社会で生きていきます。

僕はサッカーをすることで楽しんでいました。サッカーを見ることや、論ずることは、するための手段ではありましたが、それが主な楽しみ方ではありませんでした。ヒトとアリがパイン飴の知覚の仕方が異なるように、同じサッカーでも知覚が異なればサッカーもまた別の概念になってきます。

僕にとってサッカーとは「すること」であり、「没頭の対象」であり、「人生を楽しむための手段」です。そして引退してからDAZNで見たのはガンバ大阪の試合だけで、あれだけ観ていたリーガやプレミアも全く観ていません。これは愛がなくなったとかではなく、サッカー選手の環世界でのサッカーから、引退した身の環世界でのサッカーに移行しただけのように思います。

この環世界の移行は、僕にとって既に完遂したものであり、今では当たり前になっています。しかし、アリの世界を想像しきるのが難しいように、サッカー選手がサッカー選手じゃない自分を想像することは容易ではありません。僕もその想像し難い恐怖に慄いていました。

だから僕は、サッカー選手の環世界でのサッカーと同じように、熱中し、没頭できる対象を仕事にしようと決めました。

そして既に、その状態にあります。

10月1日づけでUSEN-NEXT HOLDINGSという会社に入社し、そのグループ企業である株式会社Virtual Restaurantに出向する形で営業として働いています。いわゆる、東証プライム上場企業に入社して、かつその中のスタートアップで裁量権を持って働くという、大企業の基盤とスタートアップの自由度のいいとこ取りをしたような環境です。

9月の研修期間から数件契約も獲得できて、久々にゴールを決めるような感覚を味わっています。15人ほどのメンバーしかいないので、リード獲得のようなマーケの領域も営業がやるし、インバウンドもアウトバウンドも担当して、代理店との折衝もするみたいな、楽しすぎる働き方をしています。(カタカナ多用は、格好つけ2割、アスリートから転職してもすぐ働けることの強調8割です。笑)

目黒セントラルスクエアというキラキラオフィスにいながら、部活をしているような雰囲気で働く、矛盾した雰囲気もまた気に入っています。

サッカーをすることを失った世界が怖くてたまらなかっかったけど、まだまだ人生には楽しいことに溢れているようで安堵しました。

120%の力で試合に臨むように、営業をしています。毎日自主トレをするように、読書をしています。栄養管理をするように、顧客データを管理しています。対象がサッカーからビジネスに移行しただけで、竹本将太は相変わらず竹本将太しています。何一つ変わっていません。

引退した僕が見るサッカーはかつてのサッカーとは違ったものに見えますが、わざわざ自分から遠ざけるつもりもありません。特にこの24年間はサッカーを通して繋がった人しかいません。だからきっと、どこかでサッカーと交わる機会は来るのだろうと、それもまた一つの楽しみでもあります。

セカンドキャリアという言葉は、サッカー選手竹本将太と引退した竹本将太に明確に線を引くようですが、その感覚さえもありません。サッカーへの知覚の仕方が変化しただけであり、私は何も変わらずに人生に熱狂しています。今がセカンドステージにいるという自覚はなく、ただ、懸命に生きています。

ビジネスマンとしての将来はまだ見えていません。3年後に100億円企業になるという会社の目標があるので、まずはそこに没頭していきます。そのために今月の個人や営業部の目標を絶対に達成する。そういった日々の中で、使命に思えるような何かが生まれてくると思います。起業するのかもしれないし、しないかもしれない。先は見えずとも、私にできることは、いまここを全力で生きることだけです。


サッカーをやめても僕は何も変わっていない。むしろサッカー選手としての挫折を力に変えて頑張っていることが伝われば何よりです。

サッカーを辞めたあの日は、新たな夢のはじまりの日です。
次は結果出します。

サポートいただけるとそのお金が僕の筋肉とエネルギーに変換されます。ありがとうございます!