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キックでバランスが崩れる原因と練習法。体幹が弱いで片付けるのはNGです。

今回は以前に書いてご好評をいただいているキックの練習法についての第二弾です。

前回の記事ではキックの練習に関する基本的な考え方についてと、止まったボールで練習していても意味がないというよく指導現場で聞く言葉に対する僕なりの見解を取り上げました。

今回は特に小学生に多い、キックの際にバランスが崩れてしまうというよくあるエラーに関して真の原因は何なのかとそれに対する効果的な練習法をいくつか解説します。

バランスが崩れる=体幹が弱いと考えて、体幹トレーニングに取り組ませる指導者・保護者の方は多いですが、それだけでは根本的な解決にならないことがほとんどです。

正しく原因を追求して正しいアプローチができるように、今回の記事を通していくつかのパターンを紹介します。


そもそもなぜバランスが崩れてはいけないのか

細かい話に入る前にバランスが崩れた状態というのがどういった状態で、その状態ではなぜ良いキックができないのかということを整理しておきます。

まず、バランスが取れたキックの代表例としてはこのようなシーンが挙げられます。キック動作を通して体がまっすぐに安定した状態が保たれていて、蹴り足を大きく振り切ることができています。

1. 蹴り足を振り切ることができない

これに対して、よく言われるバランスが崩れたキックというのは蹴る際に体が過剰に前に倒れてしまったり、蹴った後に横に体が流れて蹴り足を振り切ることなくすぐに着地してしまうといったことがほとんどかと思います。

実際にやってみると分かりやすいですが、体を前に倒したお辞儀のような状態で足を振り上げようと思っても可動域がかなり制限されて思うように動かすことができなくなります。

足を振り切れる状態を保つために体をベリンガムのシュートシーンのように体を起こしておく必要があり、これができていない場合にバランスを崩したキックになってしまっていると認識していることと思います。

このシーンについては以前に取り上げた記事があるのでよろしければこちらもぜひお読みください。

2. 目線がボールから切れてインパクトがズレる

また、体をまっすぐに保つことは蹴り足のスイングを出しやすくすることだけでなくインパクトの質を上げることにも繋がります。

インパクトの質を上げるためにはインパクトの瞬間までしっかりとボールを見ることが重要です。例えば、リフティングを連続でする時に目をつぶってしまうと当然難易度は急激に上がるし、リフティングをしながら頭がフラフラ動いてしまってもかなり難しくなることからもボールを安定して見ることの重要性は分かるかと思います。

先ほどのベリンガムのシーンを見ると、インパクトの前後で頭部が安定した位置にありボールをしっかりと見て蹴れていることが分かります。

一方で、いわゆるバランスを崩した状態でインパクトの前後で大きく頭部が動いてしまうような状態になるとボールをしっかりと見ることができず、インパクトの質は落ちやすくなってしまいます。

以上の2点からバランスを保って蹴ることは、蹴り足のスイングスピードを上げること、インパクトの質を上げることのどちらにも繋がるため、キックの質を上げる上でかなり優先度の高い課題であることがお分かりいただけるかと思います。

バランスを崩す原因

タイトルにもある通り、バランスが崩れるということは体幹が弱いということだと安易に考えてしまうパターンが多いですが、その前に満たしておかなければならない要素があります。

以下、バランスを崩す原因として3点挙げますが、番号が若いほど重要度が高いです。1番のポイントを押さえて初めて2番、2番のポイントまで押さえて初めて3番が問題になります。3番のポイントを解決しようと必死にアプローチしても1,2番のポイントを押さえられていなければ結果はなかなか変わりません。

1. 軸足の位置がずれている

まず、最も重要になるのは軸足の位置を正しい位置に置くことです。

詳しい解説は以前の記事にもありますが、軸足の位置が正しい位置からずれているとどうしてもバランスを崩してしまいます。

一番多いパターンが軸足がボールに近すぎることです。

強いキックを蹴る時には蹴り足の足首を伸ばすようにしてインパクトしますが、蹴り足の足首を伸ばすと足の長さの分、蹴り脚の方が軸脚よりも脚が長いような状態になるので、軸足の場所がボールに近いとつま先が地面に刺さってしまいます。

これを回避するために体を逃すようにして蹴ってしまうことが軸足の位置のずれによってバランスを崩してしまうパターンです。

もう一つ、特に動いているボールを蹴る時に多いエラーは、軸足がボールより後ろになってしまう、つまり転がっていくボールに体が置いて行かれてしまうようなパターンです。この時、ボールが蹴りやすい位置よりも前にあるので、蹴り足のインパクトを合わせようとすると体を前に持っていくしかなく、結果的に体が大きく前に倒れるような形になってしまいます。

逆にこのような不適切な軸足の位置でバランスを崩さずに蹴ろうとすると蹴り足が地面にぶつかってしまったり、蹴り足のつま先寄りの場所やインサイドに近い内側の場所に当たってしまったり、最悪の場合空振りしてしまう可能性もあり、綺麗にボールを蹴ることができません。

軸足がずれた位置にあるという前提であれば、インパクトの質をある程度に保つためにはむしろバランスを崩して蹴ることが最適解になってしまっているので、まずはこの軸足の位置を整えることが最優先事項になります。

2. 軸足でのブレーキが不足

軸足はある程度正しい位置に置けたという前提で次に多いエラーは、軸足でうまくブレーキがかからず体が前に流れてしまうパターンです。

軸足でブレーキをかけることによる蹴り足の加速への効果は以下の記事にて詳しく解説しています。

ブレーキをかけるためには、蹴り出し方向への助走の勢いに抗って体を後ろ方向に押し返す必要があります。

後ろ方向へ体を押し返す力は地面を押すことで得られる地面反力によって生み出さなければなりませんが、地面反力の方向は接地位置と重心位置によって大まかに決まります。後ろ方向の力を得るためには重心よりも前に接地位置を置くことが必要です。

つまり、キック動作においてブレーキを適切にかけるためには軸足が地面に接する瞬間に重心は軸足よりも後ろに残しておくことが重要になります。

このブレーキをかける姿勢を作らずにキック動作に入ってしまうとそのまま体が前に倒れてしまうことになります。

さらに細かい内容はこの後の具体的な練習法と合わせて解説します。

3. 体をまっすぐに保って足が振れない

最後のポイントは俗に言う体幹の強さに対応するであろう要素で、片足立ちでフラフラせずに蹴り足を振り切ることです。

この章の最初でも述べましたが、ここまでの軸足の位置と軸足でのブレーキができた上でこの要素に目が向くべきで、その前提がないとそもそもキック動作が片足立ちの動作になっておらずいくら片足バランスの練習をしたところでキックの技術向上には繋がりません。

片足立ちでのスイングがうまくできているかどうかは基本的には頭の位置を変えずに足を大きく前後に振ることができるかどうかで評価できます。

足を前に振る時にに頭がガクッと下に落ちたり前に倒れたりするのがよくあるエラーですが、それでは動きの中で足を綺麗に振り切り、かつインパクトの質を保つことは難しいのでトレーニングが必要です。

また、そもそもですが体幹というワード自体がかなり曖昧な使われ方をしているので定義は難しいのですが、ただ片足での安定した状態を保つ静的なバランスだけでなく、片足ケンケンのような動作でもバランスを崩さず動くような動的なバランス、その上で上で述べたようなまっすぐ足を振る動作が出せるかなど様々な要素を満たしている必要があります。

こちらも、より詳しくはこの後の練習法についてのパートで解説します。

具体的な練習法

ここからはすでに挙げたそれぞれのポイントに対応した練習法を紹介していきます。


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