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【note65】Quest Cup2024を振り返る

Social Changeへのこだわり

教育と探求社の「クエストエデュケーション」に取り組んで4年目になる。
クエストには様々なプログラムがあるが、こだわりを持っているのがソーシャルチェンジ(以下SC)である。SCは探究(探求)のエッセンスが詰まっていると感じているからだ。それゆえにとても難しいプログラムであると感じている。まず何よりも社会における課題設定を自分達で行う必要があるからだ。スタート地点からもう既に難しい。ここでいかに生徒たちがマイテーマ(厳密にはチームで行うのでチームテーマ)を突き詰めて、設定することができるかがカギになる。もちろん途中でテーマ変更することは可能であるし、それが必要なこともあるが、そこでは相当なエネルギーを必要とする。
課題を与えられることに慣れている我々にとってゼロから自分たちのテーマを設定するということは想像以上の難しさがある。そしてデータを取り、問題の背景や原因を考察し、最終的に自分たちが解決すべき問題に対するアプローチを提案する。様々な思考が入り組むプロジェクトとなる。改めて、全体として難しい、だからこそやりがいがあり、楽しさまたそこにある。

今年のQuest Cup

Quest Cupは全国が中高生がそれぞれの探究を披露する祭典であり、今年で19回目となる。SCには中高併せて実に111校が参加した。各校が12ブロックに分かれ、各ブロックのトップが2ndステージに進むという形式だ。勤務校からは校内で12月に実施しているプレゼンフェスタの上位2チームと、今年は高校生も放課後講習の社会課題探究に挑戦したメンバーによる1チームを合わせた計3チームが出場した。各チームは「よりよい反抗期のために」「席を譲ろう」「15歳の挑戦を支える」というテーマでプレゼンテーションの臨んだ。結果としては1stステージを突破することはできなかったが、それぞれに現在できるパフォーマンスを精一杯出してくれたと思っている。

余談だが、今年のQuest Cupは高校入試と日程が重複してしまい、出場すら危ぶまれたが、教育と探求社さんのご配慮と当日の運営に助けられ、何とか出場を果たすことができた。生徒にとって貴重な成長の機会を与えていただき、ありがとうございます

結果が全てではないけど…

結果が全てではない!」このことは活動を通して、意識するべきことであるし、100%その通りだと思っている。Quest Cupにおけるチェンジメーカー賞(各ブロックのトップに与えられる賞)の受賞やグランプリは、それまでの努力の結果としてもたらされる栄誉だ。そうした結果を得ることができる機会は素晴らしいものだ。だからと言って、受賞できなかったチームの取り組みが色褪せることはない。大会の冒頭に主催者より述べられていた通り、その取り組み、プロセスが何よりも大切であり、取り組んだ生徒たちにとってかけがえのない財産となる。ただし…

悔しいとは思って欲しい

チェンジメーカー賞に輝いた学校、グランプリを得た学校に対しては、心から拍手を送りたい。一方で、そこに届かなかった生徒達には、悔しさは持って欲しいと思う。それは、自分たちの活動に対する自己否定ではなく、「どうすれば、もっと問題を捉えることができた?」「どうすれば、よりよい解決策を提示できた?」「どうすれば、もっと相手の心に響くプレゼンができた?」。相手ではなく、自分たちの取り組みに対して、満足しないで次に進んで欲しいという自己対話だ。だから、「残念だったね。でも頑張ったね」だけでは終わって欲しくないと思う。まだまだ成長する可能性を秘めている生徒達には悔しいなと思って欲しい。誤解のないように強調しておきたいところだが、この気持ちは相手ではなく、自分自身に向けたものだ。担当する私自身も、「生徒にとって今年は魅力的な探究活動になっていたかな?」「場の作り方は上手くできていたかな?」「生徒の活動に介入し過ぎたかな?」などと振り返りながら、悔しい思いをすることも多い。

さて、振り返り①

全体的な振り返りは発表動画を見返してから改めてやりたいと思う。
今回は総括的な振り返り。
今年のQuest Cupのテーマは「@じぶん」
大会が終わって、改めてテーマとメッセージを読み返してみた。

@じぶん
迷いも 不安も いらだちも 喜びも 高まりも 信頼も
今、私だから感じられる
だた、自分と向き合う 新しく何かを始めてみる 仲間と走り出す
心から「誰か」に訴えかける 
届けたい 私が叫んでいる どこでもない、この場所から

クエストカップ公式ホームページから(https://questcup.jp/)

このメッセージを読み解くことで、色々と感じることがあった。「今、私だから感じられる」「自分と向き合う」「届けたい」…このフレーズが大会を終えて、改めて強いメッセージとして響く感じがする。
Quest Cup大会委員長の米倉誠一郎氏が開会の冒頭「違和感に気づくこと」といった話をされていた。私達は自分の身の回りのことを当たり前と思っていないだろうか。ちょっとした気掛かり、ちょっとしたざわつき、ちょっとした痛み…、これらはすべて社会における違和感と言えるできるならば違和感に敏感な生徒であり、教員でありたい。そして、そうした違和感を自分達で膨らましながら社会と結びつけていくことが社会課題探究の大きな意義であるように思う

少し距離があったのかも…

「子育て支援」、「児童養護施設の子どもたちに対する偏見の解消」、「若者の悩み相談」、「インターネットの誹謗中傷対策」、「席を譲れる優しい社会」、「より良い反抗期」…今年のゼミ生たちが取り組んだプロジェクトはどれも魅力的で挑戦的だったと思っている。ただ、改めて大会メッセージを読み返してみると、それらのテーマを自分達の方に引っ張り込み切れていなかったような感じもする。「それらのテーマを、どのように捉える?」、「自分との関わりは?」、「社会との関わりは?」、「自分の場所から何を叫ぶ?」こうした視点から考えるとテーマと生徒達の間にはまだ少しだけ距離があったのかもしれない。これは自身の反省でもあり、次年度に生かしたい教訓だと思う。それらが彼らの中で突き詰められた時、今より更に強い熱量が生まれるのだと思う。

あるチームの印象と公園での一コマ

今回のQuest Cupで「左利きを救いたい」というテーマで発表した中学生のチームがあった。メンバーの一人が左利きで日々、様々な苦労があるようだった。それを解消する工夫を具体的な商品提案と共に提示していた。シンプルだけど、面白く、ツボを得ている発表だなと素直に感心した。自分の長男も食事は左利きであるけれど、この社会はまだまだ左利きを想定してない場面が多くみられる。ある時、公園である遊具を見た時に体を支えるバーは進行方向(反時計回り)の右側についていた。別に規定があるわけではないけれど、子ども達は反時計回りに回っている。そうなると長男にとっては体を支える中心は右手になる。これには意図があるわけではないと思うが「左利きの子には使いにくいかも」という感覚。これがいわゆる違和感なのかもしれない。妻に言われて初めて気づいたこと。社会は良くも悪くも違和感にあふれている。それが良いものである場合もあるし、誰かにとっての大きなハードルになっている場合もある。これから探究活動を進める中で「違和感」を大切にして取り組んでいきたい。発表を聞きながら、「左利き」という現状を問題として、自分達のサイドに引っ張り込み、問題や根拠の提示、解決策を示した発表を見たとき、「こういうことだよね」と感じた一幕だった。


今年も1年間、一緒に探究してくれた生徒達、Quest Cupに向けて最後まで努力してくれた生徒達には心から感謝です。また、これからも頑張ろう!!まだまだ、みんな成長できるよね!!




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