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アイドルのファン

二次元アイドル界隈がちょっと騒がしい。

ひとつは、イベント会場で殴り合いのケンカをしたファンがいた、という話。
『同担拒否』同士が隣りになり揉めた、とか、足を組んだのを注意して揉めた、とか、ネットでは流れているけれど、原因はともかくケンカしたのは事実らしい。
『同担拒否』というのは、同じメンバーを推す人=同担とは仲良くしませんよ、ということだ。私はドルヲタ属性はないので、ちょっと理解が追いつかないのだけれど、恋愛におけるライバルという位置づけなのだろうか。
まあそれは勝手にどうぞ、という感じだが、会場でのトラブルはいただけない。演者やスタッフに迷惑がかかるし、その後のイベントの開催にも影響が出る恐れがある。大好きなコンテンツを推すなら、そんなことはわかっていて当然だろう。深く反省していただきたい。

もうひとつに関しては作品名から説明させていただかなくてはならない。

『うたの☆プリンスさまっ♪』というコンテンツだ。恋愛シミュレーションゲームから始まり、アニメ化が4期、劇場版が2本作られ、10年を越える人気作だ。
実は私も大ファンである。
この作品は音楽家である上松範康氏のプロデュースで始まった。彼は一貫してこの作品に関わり続ける中心的人物である。上松氏なしでは成り立たないコンテンツだと思っていただければ良い。

で、騒動の発端は上松氏の発信したツイートである。
上松氏は『うたの☆プリンスさまっ♪』と同時に『うたの☆プリンセスさまっ♪BACK to the IDOL』という企画構想があり、それが10年の時を経て実現する、と発表した。

一見何が問題なのか、ファンでない方には伝わらないと思う。
『うたの☆プリンスさまっ♪』の世界では、プリンセスとはファン(と恋愛ゲームの主人公)を指す。王子様であるアイドル達にとってのお姫様はあなたですよ、という訳だ。これはれっきとした公式見解であり、作中でもアイドル達はファンに向かって「プリンセス」と何度も呼びかけている。

ファンが引っかかったポイントは3つ。

①プリンセスとはファンの名称であり、他の女性(アイドル)を指す言葉として受け入れ難い

②略称である『うた☆プリ』が、『うたの☆プリンスさまっ♪』以外のコンテンツで使用されることへの懸念
(実際には『バクプリ』という略称を上松氏は使用している)

③それまで『うたの☆プリンスさまっ♪』の続編コンテンツへの期待を持って課金してきたのに、違うコンテンツが作られることへの失望

また、上松氏のツイートが4月1日であったことから、「エイプリルフールの嘘なのではないか」と疑う向きもあったのだが、実際に動き始めたコンテンツであったため、ショックが大きかったようだ。
当然、上松氏へのバッシングは大きく、ネットでは炎上した。
上松氏は驚かせてしまったことへの謝罪をし、2つのコンテンツの世界はまったく別物であり、『うたの☆プリンスさまっ♪』の中では変わらずファンがプリンセスであることを説明したが、コアなファンが納得できるはずもなく、結果として上松氏は『うたの☆プリンスさまっ♪』をしばらく休止する(楽曲提供を休む)という事態になったのである。

私個人としては、歴が浅いこともあり、またアニメから入った人間でゲームをプレイしていない(これはハード、ソフト共に購入することができない経済的理由である)こともあって、そこまでショックではなかったのだが、上松氏が休止宣言をしたことはやはりショックである。今のところ数ヶ月分の楽曲はあるらしいが。
だが、ファンの方々の気持ちはよく理解できる。

私のようなライトなファンであっても、『うたの☆プリンスさまっ♪』は実在するアイドルと何ら変わりはない存在だ。キャラクターのTwitterアカウントもあり、節目ごとにツイートされるのを楽しみにしているし、劇場版の応援上映はまさにライブツアーだった。
公式の運営のし方は実にキメ細やかで、キャラクターが実在しているのかと思わせるほどのクオリティなのだ。

私ですらそうなのだから、もっと熱量をもって応援している大勢のプリンセス達なら、今回の騒動は大変なショックだったであろうことは容易に想像できる。
アイドルが実在し、自分達ファンを大切にしてくれている、と思っていたのに、ある日突然、
「ただのコンテンツですよ」
「似たようなコンテンツを新設しますよ」
と言われてしまうのだから、混乱も困惑もするだろう。憤りを覚える方もいるだろうし、失望する方もいるだろう。
上松氏が思う以上に、プリンセスにとってのうた☆プリは現実(リアル)だったのだ。現実だと思っていたのが、突然夢でしかないと思い知らされた訳である。

二次元ヲタクとして、夢を夢だと理解しながら推すのは常識ではあるが、限りなく現実だと思わせてからの「やっぱり夢でした」はキツい。
現実でもアイドルの熱愛報道でロスに陥るファンの方がおられると思うが、それに近いと思ってほしい。
「ファンの皆のことが大好き」「皆を愛してる」「皆が恋人だよ」と散々言われ、浮かれているところに熱愛報道で「全部ウソでした」とわからされる感覚だ。
キツいでしょう?

自分もファンなので少々熱く語りすぎてしまったが、今回の騒動のキモはお伝えできたかな、と思う。
馬鹿馬鹿しいと思われる方もおられると思うが、何かにハマるとはこういう側面も孕んでいるので、ご注意されたし。
それでも何かにハマるのは楽しいし、文字通り世界が変わる。素晴らしい体験がたくさんある。深くハマればハマるほどに楽しみがある。しかし、その分、闇も深くなるので、ハマりすぎには気をつけたいと思う。

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