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初めて飲んだスクリュードライバーの想い出。(亡くなったマスターを偲んで)

母の旧友の、ジャズバーのマスターが亡くなったそうだ。77歳。

母は若い頃から芸事を教えており、
稽古の後にはお弟子さんたちと会食し飲むことも多かった。

そのジャズバーは、仲間と行くこともあるが、
主に1人で飲みたい時に足を運んでいたようだ。

富山の繁華街から一つ通りを入ったところにあるその店に、私も数回お邪魔したことがある。

1度目は中学生か高校生だったように思う。

(母は私をたまに大人の集まる場に連れて行き、
そこでの振る舞い方を学ばせる癖があった)

マスターは微笑み、カウンターへ通してくれた。

サンドイッチや、ナッツやポッキーなど
私でも食べられる何かを出してくれたと思うが
そこは細かく覚えていない。

強烈に覚えているのが、
スクリュードライバーを出してくれたことだ。

アルコールを入れずに作ってくれたのだが、

シェイカーの音、
グラスの形、
オレンジの皮をカットし
グラスに飾り付けてくれたこと

目の前にグラスを差し出された時
スポットライトが当たったように
光って見えたこと

今も鮮明に覚えている。

マスターは、我々親子にかかりきりにならず、
すっとなにげなく他の作業をする。
でも、また、良き頃合いに話を振ってくる。

母は言った

マスターの、来て欲しい時にはカウンターの前に来てくれて、外して欲しい時はスッと外してくれる、その感覚が絶妙で心地よいのだ、と。

気の置けない友人が少ない母にとって
マスターのいるこの店は

心を落ち着けたり、

家に持ち込めない気持ちを吐き出したりできる

稀有な場所だったのだと思う。

外出自粛が続いたり、
母も体調が優れなかったりで、

そのバーには数年行けていなかったようだが、

たまたま、4月の終わりに
母と、母の友人と2人で行ったそうだ。

マスターとその時会っておいてよかった

「黄昏のビギン」を歌ってくれたようで、
その歌声を思い出すと言っていた。

私もその曲を聴きながら、
今日はマスターを偲ぼうと思う。

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