僕はエンジニアでもサイエンティストでもなかった

先週一週間、業務に忙殺されていた。ダメなループに完全にハマっていて、なかなか抜け出せなかった。少し立ち止まって冷静になればやるべきことは分かるし、睡眠時間なんて削らなくてすむのに、一度その溝にはまり込むともうやるしかないやるしかないで思考停止して、睡眠不足がさらなる思考停止を呼んで、救えない状態だった。

このとき、入社三度目の挫折を経験した。1度目と2度目は社内イベントというか、社内制度であり、ソフトウェア・エンジニアと関係ないことではないが、まぁ、技術者としてはできたほうがいいことで、失敗した。今回の3度目はまさに本業のソフトウェア・エンジニアリングで失敗した。ずるずる約束の期日を守れず、最終的には達成できないまま別のひとへ引き継ぐ判断をした。もうこれ以上僕が持っても誰も幸せにならないからだと思い、素直にごめんなさいをした。

オープンソースの世界で生きていく。僕には敵わなかった。誰かが作ったコード。誰かが作り込んだバグ。誰かがした修正。修正そのものと、大規模なソフトウェアの仕組みの理解。「困難は分割」すればいいんだけど、あまりに未知すぎて分割する前に僕の頭がやられてしまった。

無茶振り、多くの業務変更によって、「全然そんなの知らないしできる気もしないけど立ち向かう」精神力は身についた。1年前は「んなもん知らんし経験ないしできるわけないやんクソ」って思ってたけど、「知らないことをなんとか調べてわかったように言う」ことが仕事だと気づいて、やれるようになった。今回もその感じで、あきらかに難しいのだけど、立ち向かってみることにした。

ああ。つらかった。分からないこと、未知の恐怖にこんなに簡単にダメになるんだなって。あー、ソフトウェア、得意だと思ったことは一度もないし、全然ダメだから、同期で1番ダメだから1番頑張らないとって思ってやってきたけど、やっぱダメだったって感じ。

そんな感じで金曜日を終え、金曜の夜と土曜の夜、それぞれ友達と飲んで酒を飲みながらたくさん思考した。これがまた至高(踏んだ)だった。

金曜日は高校時代の友達と、当日いきなり連絡が来て、出張で東京に来ているのだけど、ご飯でも、と言うので会いに行った。こういう誘いは絶対に断ってはいけない。彼は今千葉にいるのだけど、千葉と神奈川は、存外遠い。

彼は化学系のドクターを出ていて、僕がいた高校(県の公立5番手以下?)にしてはぶっちぎりの優秀な人間だった。なんで彼と気があったのかはよく考えてもよく分からない。でも、なんとなく近くにいた。たぶん僕が興味を持って声かけたんだと思う。それを単純に受け入れてくれていたんだろう、優しい彼のことだ。

高校の同級生で、卒業後も関係が続いているひとはかなり少ない。お互いに。それで、まぁ僕の近況から入ったんだけど、んなことどうでもよくて「もっと抽象度の高い話をしようぜ」って言って。ソフト開発のセンスないんだよね。ネガティブな意味じゃなくて、「センスって何?」っていうのを言語化したりして、とっても楽しかった。

こうやって話をして、分からないところは確認して、お互い知らない世界でもたとえたりして、伝えて、考えて、わかったり、わからなかったりする。最高だよなって。こんなことできる相手わずかしかいないよなって。そんな友人をこれからも大事にしたいと思う。

そして土曜日は付き合いの長い会社の同期との飲み。化学系につづいて、この日は(現在は同じソフトウェア開発をしているというものの)数学と生物系卒のメンバーで、まぁよく自然科学の人間が連日集まったなぁと思った。ぼくは何のひねるもなく情報系なんですけどね。

僕の挫折の話をしても、「誰もが通る道を通ってるだけで、その素晴らしいひとたちになるための途中なんじゃないのかなぁ」と優しい彼女は言ってくれた。

そのとき出た話題に(やっとタイトルに触れるが)自分がエンジニアとサイエンスどっちをしているのか意識しようという話があって。

もちろん、サイエンスではないのは確実で、(修士の研究でも挫折した)エンジニアを自称してきた3年間だったけど、実はエンジニアは向いてないとか、好きじゃないとか、合ってないとか、もっと違う道があるんじゃないかって、(今回の挫折をあわせて)思ったのね。

エンジニアって、技術を使って、ものを設計、開発、運用、保守する職業のことだと思う。ぼくはさんざん自分の技術は何か、自分が極めたい技術って何か、考えてきたけど、自分に秀でた技術スキルがあるとも思えないし、エンジニアとして何か生み出してきたかっていうとひとが作ったものの使い方を学んでただけだった気がする。

こうやって挫折を繰り返して、今の僕があるっていうとクッソつまんねぇから言い直しますが、今回の挫折は、ただでさえ自分が何をしたいのか?自分の得意なことはなんだ?と考えていた途中でのソフトウェア・エンジニアでの挫折なので、ちょっと重たかったです。

数学屋の彼がうちに泊まって家を出るときの「仕事、がんばんなよ」に応えるべく、(やっと落ち着いたので)次の仕事をしつつ、自分が何者であるかを考えます。

誰もが何者にでもなれたはずなのにね。いつからなれなくなったんだろう。

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