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【地域リーガーによるポジショナルプレーのすゝめ】①


ポジショナルプレー。

数年前からサッカー界に流行し、今となってはどのチームでも当たり前のように取り入れている戦術的な概念に当たります。



バイエルン・ミュンヘン時代のペップ・グアルディオラが実用的にし、ブンデスリーグで猛威を振るい、それをプレミアリーグのマンチェスターシティーに持ち込んだ事でサッカー界に大きな革命をもたらしました。



ポジショナルプレーの概念自体はかなり前からあったのですが、より実用的にチームに落とし込むことを実現したのはペップ・グアルディオラでした。



今回は、そんな世界で大流行しているポジショナルプレーとは一体なんなのかを選手目線でなるべく噛み砕き、個人的な解釈も合わせながら話していきたいと思います。かなり長くなってしまうので、分けて掲載すると思いますがお付き合いください!


ポジショナルプレーとは

ポジショナルプレーとは、フィールド上で起こりうる数的優位性(量的)、位置的優位性、質的優位性を最大化し、試合を優位に進めるための思想・概念だと私は考えています。


この3つの優位性を相手チームよりも多く作り出し、試合の主導権を握って試合を優位に進めよう!というものです。


①数的優位性


現代サッカーでは、システムが存在します。1-4-4-2や1-4-3-3、1-3-4-3などピッチに並ぶ選手たちを数列のように表記し、監督やコーチはプレーしている選手たちに分かりやすく配置を伝えています。同時に試合を観る、観戦者にとってもありがたい表記でしょう。


この時、表記の順番としてGK→DF→MF→FWという順になっています。より区分けが多いと1-4-2-3-1や、1-3-4-2-1などがありますがポジションの区分けは大体上記の通りになります。


まず、数的優位とは両チームのシステムを噛み合わせた時に起こるミスマッチに注目します。例えば、Aチームが1-4-4-2、Bチームが1-4-2-3-1である場合BチームのFWの1人は、ボール非保持の際、基本的にAチームのCB2人を見なくてはなりません。


いくらこのFWが足が速くて体力があろうとも、横に並んでいる2人を1人で監視するのは難しいです。なのでAチームのCBは比較的余裕を持ってボールを保持し、前進させることができます。

上記の画像のゾーンの区分けに従うと、ビルドアップ時にAチームはゾーン1で2vs1、GKを含めると3vs1を作ることができており、Aチームはゾーン1において数的優位が出来ていると言えるでしょう。


チームのプレーモデルや思想によって数的優位をどのエリアに作り出すかという考えは異なります。どのエリアで数的優位を作れれば、相手の守備を困らせることができ、より優位に試合をコントロール出来るのか。


サリーダ・ラボルピアーナ、偽サイドバックなどは、数的優位を作り出すための動きを言葉に表したにすぎないと思っています。

(サリーダ・ラボルピアーナについての詳しい解説はこちら↓)

https://yuukikouhei.theletter.jp/posts/1f816cb0-08e5-11eb-bb80-ff960f719cbe



このように局地的に数的優位を作って、より安全にボールを保持、前進させ、主導権を握って試合を進めようというチームが近年増えています。ポジショナルプレーの解明が進み、効率的に優位性を獲得することが勝利に繋がる可能性が高い事が理解され始めたのでしょう。



なので数年前より世界各国のリーグ、Jリーグ、大学サッカー、高校サッカー等の多くのカテゴリーでサッカーのスタイルに大きな変化があったように思います。


自陣ではボールを失うリスクを負わず、長いボールを素早く前線に放り込むような縦に早いダイナミックなサッカーをするチームはかなり減少したように思います。


自陣からより丁寧にビルドアップを行い、相手とのシステムの兼ね合いで生まれる数的優位を有効に活用してボールを保持する時間を長くして、主導権を握るようなサッカーを目指すチームが多くなりました。


ゾーン1〜ゾーン3の中で、最も相手からのプレッシャーが少ないのはゴールから遠くなるゾーン1になります。従って相手のプレッシャーが少ないゾーンで数的優位を作りビルドアップを安定させ、ボール保持時の狙いを出せる可能性を高めようという発想になっているのではないでしょうか。


②位置的優位性


サッカーでは人が目まぐるしく移動し、同じ所に留まっているシーンはほとんどありません。ボールという基準があり、敵味方22人が常にポジションを移動させています。



基本的なシステムはあっても、その形の通りに11人が並んでいる事はあまりなく個人の判断によって立ち位置を変えることがあります。
何故、立ち位置を変えるのか、それは単にボールを貰う為、ボールを奪いに行くためというだけではなくチームにとっての利益になる立ち位置というものが存在するからです。



特にボール保持の際に、相手の背後や人と人との間に立ち位置を取ることで相手の守備陣を困らせることができると言われています。最近では、ライン間、ハーフスペース、ポケットと言われています。


ただ、選手や指導者の間で、「相手の背後や中間を取れ!」と、言われることがあります。意図は分かるのですが、チームとしてビルドアップが整理されている上で初めて使える言葉なのではないのか、とも思います。相手の背後や中間ポジションを取ることで優位性が生まれる事は確かですが、どんな状況であってもそれが優位性を生み出す訳でありません。



重要なのは、「誰が」、「いつ」、「どこに」立ち位置を取るのかという事です。チームのプレーモデルによって使いたいスペースや共有したいプレーは異なります。



マークについている選手の背後や人と人との間でボールを受ける事で、相手選手がボールと人との同一視を難しくすることができます。その状態を作り出せれば、パスの受け手がマークを剥がすことに繋がりフリーになることができます。



また、個々人がフリーになろうとする動きを単発で行うよりも複数人で連動した動きをしてフリーの選手を生み出す方がより相手を困惑させることができます。



立ち位置について説明していくにあたって、ポジショナルプレーと共に5レーン理論の存在が挙げられます。5レーン理論とはピッチを5分割して、選手の攻守における立ち位置をより明確にしていくという考え方です。



この2つは紐付けられがちですが、ポジショナルプレー=5レーン理論ではないということは先に書いておきます。詳しくは、後程説明していきます。


先述した、連動した動きというのにはローテーション、レーンの移動、列を降りる動き、旋回などがあります。 ボール保持の際にはDF、MF、FWという枠組みに囚われず相手のシステムに応じて立ち位置を変えることも有効な手になるのです。


またボール非保持の際には、相手に使われたら嫌なスペースに選手を配置することによって相手の使いたいスペースを消すことができます。また、相手のビルドアップ時の枚数や形を見て、守備の3ラインの枚数を変化させることも主流になってきています。


③質的優位性

質的優位性とは、至ってシンプルに試合中にマッチアップする相手とアスリートの能力、技術などを比較した時にどちらが上回るのかという事です。


イメージとしては単純に1vs1の局面になった場合、どちらに分があるのかという話だと私は考えています。


これまで上記で説明してきた数的優位性、位置的優位性はチームとしてのプレーモデルを軸にしているものですが、質的優位性は選手個人の能力によって優劣が決まります。


基本的には試合中に3つの優位性を多く得られているチームが有利に試合を進めることが多いですが、質的優位性のみでも試合を優位に進めることができます。


例えば味方FWが周りとの連携無しでも得点を量産してくれるような選手であれば、チームとしてのプレーモデルで組織的な数的優位性や位置的優位性が多少無くても、試合に勝つ可能性はあります。そのチームが質的優位性の獲得を重視しているのであれば尚更だと考えられます。




さて、とんでもなく長くなってしまったので一旦ここで第1部を終わりたいと思います。まとめるとポジショナルプレーとは何か、3つの優位性について、私の頭の中にあるモノを書き出してみました。


第2部では3つの優位性を獲得するために必要な要素や私自身のポジショナルプレーに対する考え方について書いていこうと思います!お楽しみに!


それでは、また。





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