打ち合わせ

もう数えることが出来ないほどの「打ち合わせ」をしてきました。

打ち合わせってどの仕事でもあるとは思うんですけど、マンガや小説の打ち合わせってどんなのだと思います?

雑談で終わることも多いのですが、だいたいこんなお話にしましょうという粗筋の話で終わることがほとんどです。

キャラクターをイチから作らなければならない場合は、編集者とアイディアを出し合って、こんな人がいいよねこんな設定がいいよねと、何回か顔を突き合わせて持ち帰って練り直し、メールで送ってそれを元に向こうもアイディアを出し、また会った時に発展的な話をしましょうなんて感じで進んでいきます。


案外地味な部分なのであまり描かれません。

基本的にテレビに出てくるマンガ家や小説家は、ペン入れをしていたり、カチャカチャとキータイプをしています。

たいていはおしゃれな場所で。


でも現実の作家の仕事場は、コピーや資料の山で雑然としていて「ヘヘ!そんなんじゃねぇよ」って思いながら観ることが多いです。

医者や刑事、弁護士、教師というドラマに出てくる専門職モノの当事者の皆さんもそう思ってるようです。机の上は概ね雑然としています。

でもまぁそれはいいんです。
リアルに描くことより、観てる人が登場人物にリアリティを感じてくれればいいのです。

例えば『バクマン』の主人公二人は、マンガ家と原作者としては超人レベルです。マンガ家としてはいやいやそりゃ不可能だろうと感じるのですが、読者や映画を観ている人にとってはそんなこと知るよしもありません。

ほんとうにこういうやりかたが可能かもしれないと思わせるだけで良いのです。

マンガ家や小説家って一人一人労働実態は違いますから、なかなか「こうだ!」といえないところもあって、それもリアリテイの構築に一役買っています。

水木しげる先生の奥様の武良布枝さんの自伝をベースにした朝ドラ『ゲゲゲの女房』は、水木プロの方からみたらどうかはわかりませんが、同じマンガ家からみたらかなりリアルな感じだなぁと感じました。


劇中「てんてん」と呼ばれていた点描専門のアシスタントさん役の柄本佑さん。
彼の弟であられる柄本時生さんも、またマンガ家を演じてます。


BSプレミアムの『本棚食堂』


グルメ漫画を描きたいのだけれど女の子を描くのが苦手な中村蒼さん演じる錦、かたや男を描くのが下手な柄本時生さん演じる二郎の二人が、ひょんなことから遊井亮子さん演じる編集者桜田に、姫川ロザンナというペンネームで組め!と言われ「気まずいモーメント」を描かされ、なんと1200万部ものヒット作になったものの、グルメ漫画を描きたいという夢が忘れられずに、なにかあると逃避しキッチンで小説やマンガに登場する食べ物をレシピ通りに再現するという、面白いドラマなのでオススメします!


もっともそのマンガ家としての実態がちゃんと描けているかといえば、むしろファンタジックです。

締め切りまで24時間を切ってるのにネームをイチから切り直しとか、10枚しかペン入れできてないのに締め切りまであと7時間とか、1200万部も売れてるのに編集者桜田に足蹴にされるとか、アシスタントが山下リオさん演じる梅ちゃん一人しかいないとか、いろいろツッコミどころはあります。

けど主題が「グルメ漫画のレシピを再現する」なので、気になりません。
いまのところNHKオンデマンドの見逃し番組に入っていないのが残念です。
(2015年11月調べ)



マンガ家という仕事のディテールを細かく描写した例としては、こちらがオススメです。WOWOWOオリジナルドラマ『闇の伴走者』

11月27日にBlu-ray&DVDが発売されたて!レンタルもされておりますのでもし興味があったらぜひ!

内容がミステリなので多くを語りませんが、原作小説があの長崎尚志さんなので、ほんとに面白いです!

フリーの偏屈な編集者古田新太さん演じるフリーの編集者醍醐真司と、松下奈緒さん演じるEKリサーチという調査会社の社員水野勇希のコンビが、亡くなったマンガ家の原稿棚から発見された連続殺人が描かれてるマンガの調査を依頼されます。

これが現実の連続殺人事件と合致する…しかしどうもその亡くなったマンガ家の作品ではないのではないか?この漫画を描いたのは誰かというのを追いかけていくうちに…というのが粗筋です。


これはもうマンガ家の実態から小道具までものすごく気を配って作られた作品です。原稿用紙の厚みはボクの感覚からすれば薄すぎるのだけど、例えば手塚治虫先生は薄い原稿用紙を好んだらしいから、それも間違ってない。


田中圭一さんと伊藤潤二さんによって描かれた作品内マンガも見どころです。

さて面白いものをおすすめしたところで打ち合わせのお話に戻りましょうか。

エロマンガの打ち合わせでも色々あって、編集者が自宅まできてくれて次はどんな話にしましょうかね?というところから始まって、なんとなく出来ていくものもあれば、スマホ・ケータイ配信ではあらかじめ「こんな話にしてくださいよ」という原案めいたものがpdfでskype経由で送られてきて、みなみ先生が「こんなんじゃあだめだなぁ(笑)」とか言いながらちゃんとストーリー組みになった原作にしてくれて、OK が出るとボクがネームを切り始めるとかそんな様々なスタイルでやっています。

そういう会社では時々会いはしますが、ほとんどの打ち合わせはネット上で行なわれます。


またネコ四コマの『ノルウェーの森のニャン』の担当さんに至っては、一度もお会いしたことのないまま8年以上連載が続いています。
打ち合わせはメールか電話で。面白いものです。

小説の場合は駅前のファミレスで待ち合わせをするのが常なのですが、会社によって全くスタイルが違うというか、編集者次第なところが大きいです。

よくGTと呼んでいる『怪ほどき屋』の担当者は、最初は概ねマンガ的に細かく打ち合わせをしましたが、キャラクターが出来上がってからはプロットを投げ五月雨式に出来たお話から送りますと言っておけば、後は放っておいてくれます。

彼女は事務能力が低いことを自負していて、後輩からもその事務能力だけは真似したくありませんと言われるほどで、むしろ原稿を受けとりましたくらい返事をください(笑)


T社の担当Fは、まだ新人さんなので編集長と一緒にやってきます。
でも『怪ほどき屋』を読んでくれて、とても好きになってくれた人なので悪い人でなさそうです。
編集長は元富士見ファンタジア文庫の人なので、担当GTと似たような概ねマンガ的な打ち合わせをします。

でもある程度固まってからは担当Fに任せていますので、育てようとしているのでしょう。作家としても編集者として聞くべきことは聞いて判断を仰ぎます。そうやって編集者も独り立ちしてゆくのです。


S社の担当A氏は先に上げた二人とは真逆で、とても文芸の編集者らしい人です。
「ウチでもお願いしたいのですが、なにかアイディアはありますか?」
「実はこういうお話がありまして…」
「ふむ、それは面白そうですね。その時代に関してはボクも大変興味がありますので、資料集めなら任せて下さい」

それ以降は時代考証に関する打ち合わせや資料検討はしているのですが、お話の内容については「まず予断なく読みたいので、書き上がるまで見せないでください」という人です。



マンガ時代にはありえないやり方ですが、文芸にはたとえばK談社のKさんもそうであったし、そういう編集者のほうが結構いると小説の師匠でもあり友人でもある津原泰水に聞いていたので、戸惑うこともありませんでした。

「完成の目処がつきましたら発売のスケジュールを組みます」という方針では、締め切りに追われる生活の長かったボクら的には、いつ上がるんだろう?と不安にはなりますけど(笑)


でも一番困るのは、あれだけ打ち合わせをしたのに、ネームも提出したのに、下描きも提出したのに、完成原稿を渡した後で「ココを描き直してくれない」というスマホコンテンツ制作系のマンガの担当者です。


これが一番怖いのです。一から説明せねばならないのです。



ここまで提出した以上判断できなかったのはそちらの問題でしょう?と描き直しは丁重にお断りしていますけど(苦笑

育てる意味もあって。

でもそこの編集プロダクションの社長とはもう7年のつきあいですし、最近のボクのスランプにも辛抱強くつきあってくれる人で、信頼もしています。



いろいろ書きましたが、個人的にひとつだけ心がけていることがあります。

それは編集者を敵だと思わないこと。
以前は共犯者と呼んでいましたが、なんだか悪いことをしているみたいだし長崎尚志さんに習って改めることにしました。


”伴走者”


たしかにいい響きですよね。


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