痴漢に安全ピン

ボクは先立たれた妻から、許可なく他人の体に触れてはいけないと、常日頃から厳しく言われていたし、全くそう思っているので、男女問わず同性であろうとも、他人の体に勝手に触れるのはダメだと思っている。だから痴漢など以ての外である。

この頃Twitterでは痴漢の手を安全ピンで刺して何が悪いと言っている人がいるのを見かけた。割と古くから伝わる方法ではあるが、実際に行われているのかどうかといえば、些か懐疑的である。

ボクはそれを満員電車で実際に痴漢をされた女性の恐怖心と、助けてくれなかった男性への不信感が募り、今度やられたらこうしてやる、細やかだが正当な報復が待っているからなという、威嚇だと受け取った。「女だと思って舐めてかかると痛い目にあうわよ」的な、戦う女宣言。

いや、むしろ宣言というより女性同士では、前提のいらない、痴漢にあった友達を励ましたり、過去の自分を鼓舞するための会話なのではないか?
そこに男が会話に混じると、いけない。間違って違う相手を刺したらとか、法的にどあこうだという話になってしまう。
いつもの男女のスレ違いの会話である。

おそらくは実行されないだろうし、安全ピンで刺すより、伸ばした爪で抓ったり引っ掻いた方が早いだろう。

確証のない犯罪の容疑者を、例え小さなものでも刺すというのはとても勇気と決断力が要る。
それは男だってそうだ。
その勇気は「この人痴漢です!」と、実際に触っている手を掴んで声を出すのと比較して、小さくて済むのだろうか?

電車やバスのすし詰め状態さえ解消できればたしかに痴漢は減らせるだろうが、実際には混雑していない車内でも痴漢は起きている。満員と痴漢のセットは代表的なイメージに過ぎないし、痴漢は犯罪であると同時に、精神的な病でもあると最近ではいわれ始め、治療に取り組んでいる医師もいる。

痴漢の取り締まりは警察の仕事ではあるが、違法薬物や万引き同様取り締まるだけで一向に減る気配はない。ここに挙げた三つはいずれも依存症であり精神的な病でもある。安全ピンで刺すのは犯罪だと女性に諭すより、厚労省と法務省を動かすような声を上げたいものである。

#痴漢 #エッセイ #コラム

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