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「半端ない」を超えていけ

No.1高卒ストライカー

歴代の鹿島アントラーズに入団した高卒ルーキーの中で、高校時代の実績とスター性で比較するなら、おそらくNo.1と言えるのが大迫勇也であろう。世代トップのストライカーとして早くから注目を集め、高校3年時での選手権では、4試合連続複数ゴールに加え、今も破られていない1大会最多個人ゴール記録となる10ゴールを記録。大会中の相手選手からの発言から生まれた、彼のもはや代名詞ともなった「半端ない」の言葉が相応しいくらいのパフォーマンスを見せてくれた。

そんな大迫は2009年に6クラブの争奪戦を制した鹿島に入団。チームは当時、オズワルド・オリヴェイラ監督の下でJリーグ2連覇を果たしており、黄金期の真っ只中にあったが、そんな中でも大迫は開幕から試合に絡んでいく。リーグ戦第3節のサンフレッチェ広島戦でリーグ戦初スタメンを飾ると、第5節のFC東京戦ではリーグ戦初ゴールも記録。一時はレギュラーを奪うほどのパフォーマンスを見せ、高卒ルーキーとしては充分すぎるほどの結果を残していった。

鹿島のエースに

だが、その後はゴール数こそ年々伸ばしていたが、イマイチ殻を破り切れていない感があり、本来の期待値からすれば物足りないパフォーマンスが続く日々となる。2年目からは背番号9を背負うものの、エースの証である最多得点者の座はマルキーニョスや田代有三に譲っていたくらいであった。

転機となったのは、2012年のジョルジーニョ監督就任だろう。大迫のポテンシャルに目をつけたジョルジーニョは大迫に「シュートを打て、ゴールを意識しろ」と言い続け、大迫の思考をシンプルなものに変えていった。その結果や、それまでその世代としてのエースとして君臨していたにも関わらずロンドン五輪のメンバーから落選して吹っ切れたこともあるのだろう、大迫は格段にゴールへの意識が増し、それに比例するようにしてゴール数が増えていった。

さらに、チームが低迷して残留争いを強いられたこともあり、ロングカウンター主体の戦術に舵を切ったことも、大迫個人にとっては追い風となった。1トップとしてボールを収め、攻撃においては数的不利でもフィニッシュに結びつけてくる。そんな役割を託された大迫は、ここから前線の軸として欠かせないプレーぶりを見せ始める。結果、チームは何とか残留を果たし、ナビスコカップのタイトルも獲得。大迫個人としても、リーグ戦のゴールは自己最多の9ゴール、ナビスコカップでは7ゴールを奪い、得点王に輝く活躍を見せ、飛躍のきっかけとなるシーズンとなった。

その翌年、大迫は名実ともに完全なる鹿島のエースストライカーとして君臨した。小笠原満男の欠場時にはキャプテンマークも巻き、前線で奮闘しながら、大事なところでゴールを奪ってくるそのプレーぶりは、点取り屋と呼ぶにふさわしく、圧巻だった。結果として、リーグ戦のゴール数は前年の倍以上となる19ゴールを記録。初選出された日本代表でも、東アジアカップでゴールを奪ってアピールに成功すると、欧州遠征ではオランダからゴールを奪う活躍も見せた。

だが、その年の鹿島での最終戦に悲劇が待っていた。リーグ戦最終節、優勝へのかすかな希望を繋いで、広島をホームに迎えた鹿島だったが、前半に先制を許すと、前半終了間際には大迫が2枚目のイエローで退場となってしまう。エースを失った鹿島はそのまま反撃することができず、結果として0-2で敗戦。目の前で広島の優勝を見届けることになってしまい、またこれが大迫の鹿島でのラストマッチとなってしまった。

世界に羽ばたく

2013年オフ、大迫は以前から目標にしていた海外でのプレーを叶えるため、またブラジルで行われるW杯のピッチに立つため、ドイツ2部のTSV1860ミュンヘンへと移籍を決断。5年間過ごした鹿島を離れることとなった。

その後の活躍ぶりは言うまでもないだろう。半年でドイツ1部へのステップアップを果たした大迫は、ケルン、ブレーメンといったクラブを渡り歩き、7年に渡ってブンデスリーガの舞台でプレーを続けた。

また、日本代表でもブラジルW杯のピッチに立つという目標を達成すると、ロシアW杯ではコロンビアを相手にチームの勝利に大きく貢献する決勝ゴールをゲット。その後も日本代表のエースとして活躍を続けるなど、まさに日本トップクラスのストライカーにふさわしいプレーぶりを見せていった。

https://youtu.be/y4SeAfCg7-o?t=85

「半端ない」を超えていけ

そんな大迫であったが、昨夏に日本へと帰還。だが、選んだクラブは古巣の鹿島ではなく、ヴィッセル神戸だった。そこに関しては、今更とやかく言うことではないだろう。しかし、今週末鹿島は神戸とのホームゲームを迎える。前回対戦ではケガで欠場していた大迫だが、今節出場すれば初の古巣戦、また日本復帰後初のJリーグの舞台におけるカシマスタジアムでのプレーとなる。

開幕から低迷し、残留争いに甘んじている神戸であるが、2度目の監督交代で吉田孝行監督が就任すると、そこからはリーグ戦3連勝を含む公式戦4連勝中と上り調子。大迫自身も途中出場ながら、ここリーグ戦2試合では共に決勝ゴールを奪う活躍を見せ、個人としても調子を上げてきている。元々、タレント揃いで地力はあるチームなだけに、このタイミングで対戦するとなると、鹿島にとっては厄介極まりない相手となるだろう。

それでも、首位横浜F・マリノスを追走し続けるためにも、ここ2試合ドローが続いている嫌な流れを食い止めるためにも、今節は勝点3がマストとなる試合だ。当然、そのためには大迫を封じることが必須となってくる。「半端ない」かつてのエースを慣れ親しんだ庭で自由にやらせず、逆にこちらのアタッカーの力を全面に見せつけたい。

「半端ない」を超えていかなければ勝利はない、今節はそういう試合だ。

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