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コロナウイルスによってグローバリゼーションは終わったのか?(The Economist 2020年5月14日版)

The Economist 2020年5月14日版から、「Has covid-19 killed globalisation?~The flow of people, trade and capital will be slowed~」の記事を取り上げてみたい。 直訳すると「コロナウイルスはグローバリゼーションを殺したのか」だ。

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世界でグローバリゼーションへの疲れが見える。
そして、コロナウイルスによってさらに顕在化された。

フランスの歴史学者エマニュエル・トッドも
「グローバリゼーション・ファティーグ」という言葉を何年も前から使っている。

世界は、なるべく自国で自立するようなかたちになるのか
それとも、グローバリゼーションが復活するのか。

この記事では、グローバリゼーションが弱まった際に起こりうる、リスクについても述べられている。

「感染症が流行る⇒人の移動を制限する(貿易を制限する)⇒自国でなるべく経済活動をする」
こういった流れの全ては否定しないが、リスクももちろん検討すべきだ。

基本概念の整理

■economies of scale(規模の経済)
・ある一定の生産設備で、「生産量」を高めることで単位当たりのコストを低減すること

■decoupling(デカップリング)
・直訳すると「分離」
・「米中のデカップリングが進む」といった表現が、日経新聞などでもよく取り上げられている

■地政学(geopolitics)
・地理的な環境による国際政治・軍事・経済などへの影響を、マクロ的な視点で研究する学問

■G0
・グローバルなリーダーが不在であることを指す
・以前まではアメリカがリーダーとなっていたが、トランプ大統領就任後はそれがなくなってきた

記事の簡単な要約

コロナウイルスのパンデミック以前にも、グローバリゼーションはたびたび問題を引き起こしてきた。
ただ、今回のコロナウイルスの影響による、グローバリゼーションへの打撃は過去に比べてもかなり大きい。

多くの国や地域では、「自分たちでいかに経済をまわしていくか」ということにフォーカスしはじめている。
ただこれはエディターいわく「経済を脆弱化させるし、地政学的なリスクも高める」とのことだ。

コロナウイルスのパンデミック以前から、米中は貿易戦争を続けている。
日経新聞などでも、「米中のデカップリングが進む」などの記事をよく見かける。
では、実際に貿易という観点ではグローバリゼーションは今どうなっているのだろうか。

一見すると、食糧は確保されているし、世界のサプライチェーンは分断していないように見える。(⇒詳しくはこちら。世界の食糧サプライチェーン
また、身近なものの例の1つであるアップル製のiPhoneなども出回っている。

しかし、エディターいわく世界の貿易はどうもうまく機能していないようだ。
実際に貿易大国の韓国の輸出は46%(対前年比)で減少しており、これは1967年以来最悪の数字とのことだ。

世界的な政治に目を向けると、G0の時代に突入している。
欧州内、中国とオーストラリア、米中など様々な政治的な対立も起きている。

そんな中で、各国では自国で経済をいかにまわしていくかという考えにシフトしてきている。
実際に、5月12日にインドのモディ首相は、「経済的自立の新しい時代が始まった」と国民に伝えた。
日本においても、海外にある工場を日本に戻すための補助金も準備されている。

ただ、エディターはこれに対しての意見を述べている。
「サプライチェーンは、国内化によって規模の経済を失うことではなく、それらを多様化することが必要だ。そして、経済の国内化を進めることは、ワクチンの発見や経済回復の確保など、世界的な問題の解決を困難にする可能性がある。」と述べている。

自身の見解

短期的には、経済を守るために、生産拠点を自国に戻すなどの措置をしても良いと思う。
ただ、これをいつまで続けるかということは考えどころだ。

実際に、発展途上国で輸出に頼っている国などは相当苦しい経済状況に追い込まれる。
また、先進国に至ってもすべてを「メイドイン自国」にすると、製品の価格上昇も起こる。

歴史から考えると、経済危機が起こると保護主義の思想も出てくる。
(詳しくはこちら⇒世界の食糧サプライチェーン

短期的な経済だけに目を向けず、中長期的なグローバル連携を見据えて、各国が話し合えるようにすべきだ。

まとめ

これからどのように経済を戻していくかが、大きな課題だ。

その際に、グローバリゼーションという言葉は間違いなくキーメッセージになっていくだろう。

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