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中国あるあるローカライズ〜情熱中国大陸〜

「現地が何で言う事を聞かないんだ!」

「一体何をしてるんだ!アホ中国人め!」


腐るほど見聞きしてきた事である。
日本人は中国に来ると、昔も今も日本(自分)の考え方が絶対正しいと思い込んで疑わない傾向が強い。現地の状況に合っていようがいまいが、Japan Standardをとにかく押し付ける。

「言い訳せずに、とにかく言う通りにしろ!この馬鹿め」

20年前はこれが当然のようにまかり通っていた。

まず「ここは日本じゃない」という当たり前の絶対的事実。これすら忘れている人が多い事に驚く。また気づいたとしても見て見ぬ振りをする。

「人さまの国に入ってきて仕事させて頂いている」わけで、

「嫌ならお前が出て行け」、という話だ。

そこの国、フィールドに立ち入った以上、まず必要な態度は、以下であろうと思う。

現地の文化、習慣を知り、理解しようとする、興味を持つ。押し付けるのではなく、まず自分を現地にアジャストさせる。これが出来て初めて現地スタッフとのコミュニケーションも始められる。

中国人スタッフがいくら流暢な日本語を話していたとしても、忘れてはいけない事は、「彼女は中国人」であるという事実である。日本語が話せるからといっても日本人と同じ感覚を持って普通に意思疎通が叶うなどと考えてはいけない。大切なのでもう一度言うが、「日本人ではない」のである。更に言うと、人は信じても良いが、仕事は信じてはいけない。

現地の状況(好い事悪い事両方)を正直に話してもらい、把握、分析、理解、を正確にする。正直に、というところが肝である。言うは易し行うは難し。「信頼関係」がお互いに築けていないと、誰もあなたに正直に話してはくれない。

日本からの指示内容を、命令という形ではなく、まず内容を理解してもらう。
必ず1つづつ分かりやすく簡潔に要点だけを切って、通訳してもらい、それが本当に伝わっているか、確認が出来てから次に進めて行く事。
いつ、誰が、何を、するのかを具体的に、はっきり伝える事だけに集中する。一つ話したらその一つを丁寧に再度確認する、この作業を積み上げる。

絶対に3個以上の項目を一気に話してはならない。

なぜかというと、理由は「聞いていない」からである。前後の経緯、後で問題にならないように、保険なども含めて、まとめて筋道を立て綺麗に話したい、かもしれないが(殆どの日本人がこれをやる)、誰も分からない言葉でダラダラ長く喋られても、聞いている側は、言葉が完璧に分かるわけではないし、いくら日本語検定1級を持っていたとしても、焦点がボケた、「だらだら日本語」を、通訳も意味を100%正確に全員に伝える事はほぼ不可能に決まっている。そして4つ目の事を話している時には、1つ目の事などはもう忘れてしまっている。

万が一、とても優秀な人がいて、完璧に通訳し伝える事が出来たとしても、問題は聞いている側が全部わかるか、という事だ。具体的に何をしなければならないのか、その日本人の話の直訳を聞いて、自分の行動に100%イメージを直結させて理解出来る人など、殆どいないと考えて良い。

優秀な通訳は日本人がダラダラ話している内容の殆どを切り捨て、時には話を遮り、大切な部分だけを具体的に上手に伝える技術を持っている。

意味のない60%を切り捨てて、40%の要点をしっかり伝え、30%の結果を出す。

優秀ではない普通の通訳は、

切り捨てないで100%の言葉を伝えようと懸命に頑張り、60%の言葉をかろうじて伝え、20%しか要点が伝わらず、5%しか結果が出せない。

というのが常である。だからあなたが普通の通訳と話していても、結果は5%しか期待できず、優秀な通訳とコンビを組めたとしても、あなたの言っている事は相当うまく行って30%しか結果が出ない、と思った方がいい。

それが、よその国の人と一緒に仕事をするという事である。

そもそも日本語は複雑な言語であるし、更にそれに輪をかけて日本人はハッキリ物を言わないので、外国人にとってみれば、全く意味がわからないし要点が分かりにくく「無駄」な話が多い。

日本の自分の会社に外国人が突然やって来て、午前中に仕上げなければならない仕事を急に中断させられて、11時半に会議室に招集され、中国語やフランス語で、ランチタイムを過ぎてもずーと喋られる事をイメージしてみれば分かる。空腹は我慢するにしても、途中で切って要点を通訳してもらわないと全く何を言っているのかわからないし、大変疲れる。また会議にも一帯感は全然生まれてこないだろう。だから会議はできれば、要点だけ三つに絞り、短時間ではっきりと伝え、決定する事、が理想である。15分から30分がMaxと考えた方が良い。無駄と誤解の原因を最大まで削ぎ落とし、ポイントだけを伝える事にフォーカスする。実際の全員の行動に直結させる事が、何より重要だからである。

不都合、現状で出来ない事、日本の指示が、中国側から見て理にかなっていない、おかしな所などがないかを「教えてもらう」。「報告させる」のではなくて、教えてもらうという態度が重要である。威張っていては本当の事は知ることが出来ないし、本音も聞くことが出来ない。日本人には普通理解や想像が出来ない困難が、いつも沢山四方八方に潜んでいるからである。

⑤に問題があったとしても、どうしても進めなければならない場合、本当に出来ないのか、何かいい方法がないかを、再度「考えてもらう」。これも威張って押し付けるのではなくて、君らならどうする? と、彼らに自主性を持って意見を出してもらわないと意味がない。自分達の共通共同の問題と考えてもらう事が重要である。

変更、代替え、妥協案を一緒に考え、「俺が日本に説明するから!」と責任を持ち、日本への変更報告及び提案の内容を「一緒に」練る。俺が盾になって皆を守る、と約束する事が、信頼を得る基本である。日本のお客は怖い、無理と言っても許してくれない、言う通りにしないと怒られる、返品される、お金がもらえない、などという不安がいつもあり、自由な発想も良いアイデアも出てこないことが多いからである。


1~7 、これが当然進めるべきスタンスとプロセスであるが、この当然踏まなければならないスタンスとプロセスを全てすっ飛ばし、準備しておいた「完璧な」指示書を、人数全員分綺麗にコピーして配らせる。

会議は一方的に、10時から昼食時12:00を過ぎても喋り続け、誰も聞いていないのに13:00まで「演説」をする。ちなみに中国の工場では、食事の時間は絶対に侵してはならない。早く食堂に行かないとご飯がなくなるかもしれない(食物の恨みは恐ろしい)し、昼休みに用事がある人だっている。

スタッフには会議が終わったのか、出て行っていいのかもわからない、ダラダラした珈琲&タバコタイムが続き、13:30過ぎにようやく、では「これを全部やっておくように!」と言い残し、「会議」は終わる。

そこから通訳の子が慌てて車の手配。そして彼は社長のベンツで、ホテルの料理店に向かう。。。ベンツに向かって笑顔で手を振る中国スタッフ達は、13:50にようやく解放されるのだが、14:00、午後の始業開始のベルがすぐに鳴るのである。

こうして当然遅れたり変な物が出来上がる事になるのだが、帰国してから、それを見て彼は激怒する。

「私は3時間かけてあれだけきちんと説明したのに!」

「あいつら本当にバカで低レベルでどうしようもない!」

と。自分の度量や能力がない事を棚に上げ、上司や同僚に上記のように愚痴る。

「おいお前、一体何をしに来てるんだ、このアホ日本人め!」

である。私も日本人でありながら、このような言葉が何度頭をよぎった事だろう。またこの言葉は工場の社員食堂やトイレで聞かれ、冒頭の方の「アホ中国人め」は、日本の居酒屋で夜飛び交う事になるのである。

通訳の彼女は次の朝からネチネチ電話で彼から責められる。更に工場側からも無能と突き上げられ、我慢できずに辞めてしまうのである。

彼らと一緒になって考え、日中両側のおかしな部分、出発点の違いを探し、お互い納得した上で、正しいと理解さえ出来れば、彼らはキチンと行動し、結果も出せる。今や日本人よりも情熱も能力もある人が多い。

日本人の彼も「要点を正しく伝える努力」をし、「本当に伝わったかどうかの確認」は、最低限必ずしなければならない。「それが仕事だ。」相手の状況を把握、理解しようと努力せず、ただ「押しつけ」るだけでは、仕事をした事には全くならない。

また最悪で良くある例。

「なんじゃこりゃ!」「こんなのダメに決まってるだろ」「何で言った通りにしないんだ」「明日までに修正しろ」「出来ない?やれ!」「方法は自分で考えろ」「出来たらホテルに持って来い」「間に合わなかったら自分で日本まで持って来い」

次の日出来上がったものを中国スタッフがホテルに届けるが、良く見もせず、ありがとうの一言もなく、褒めもせず、OKか、修正箇所があるかも判断せず、

「持ち帰って上司に見せる」「お客に確認してもらうから待ってろ」

と言って日本に帰国してしまう。

「おいおい、ちょっと待て。何だそれ?ただでさえ時間ないのに。今ここであんたが判断してくれなきゃ間に合わない」「その為に出張に来てるんじゃないのか?」「飲み食い遊びに来ただけかお前?」「こんな事ならDHLで発送すりゃもっと早く安くできたじゃねーかこの野郎」と中国の人は思うのである。


また現地駐在の日本人たちも、中国の発展と、凄さ、日本と全く違う価値観で動いている人間を、日々見て実感しているのであれば、その見たもの、感じているもの、日本との「明らかなズレ」を、しっかりと本社に伝え、「具体的実際的対策」を遂行する責任があるに決まっている。

「俺も言ったんだよね~」って、甘ったれた事を、夜飲み屋で愚痴るのは、非常に見苦しい。二重の給料と、手厚い保護を受け、折角最前線の「特等席」にいながら、それを生かさず、本社と闘いもせず、まして自社の現地スタッフを守ろうともしない。ただ保証された自分の心地よい生活を謳歌し、飲み屋でお角違いの自慢話に酔いしれる。面倒な争いは避け、任期が終わるのを楽しみながらゆっくり待つ、、、

「恥知らず」 とはこういう人のことを言うのである。


つづく

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