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ものづくりの基本とは何か〜情熱中国大陸〜


「駕籠に乗る人、担ぐ人、そのまた草鞋をつくる人」という言葉がある。
「駕籠に乗る人」「駕籠を担ぐ人」「草鞋をつくる人」それぞれがいなければ社会そのものが成り立たない。人は皆、駕籠に乗る人になりたいと思うのが当然であるが、誰でも彼でもなれるものではない。

日本が明治維新を経て、近代化の時代、アジアの中でいち早くトップに躍り出る事が出来たのは、この「草鞋をつくる」価値を強く自覚したからではないだろうか?

中国大陸では、数千年の歴史の中で、「紙」「印刷」「羅針盤」が発明され、人類の進歩に大きな貢献をしている。しかし、権力至上主義からくるものだと想像するが、物をつくる人の価値をあまり認めず、物をつくる行為自体をどちらかというと高等ではない仕事として軽視する風潮が長く続いた為、近代化に立ち遅れたのではないだろうか。

またもう一つの大きな要素としては、「文化大革命」であろう。権力維持の為の思想政策は、健全な経済発展を大きく妨げてしまった。また、文革を推し進める為に大いに利用した若者を、今度は体制を守るために過度に警戒し「下放政策」という、国を挙げてのとんでもない「実験」をしてしまった。「農民と苦楽を共に!」というスローガンを掲げ、それを理由に若者たちを全部田舎に追放してしまった。実際は党に対する危険の芽を早期に潰す、という目的の為であった。これらにより、中国は大きく世界から遅れを取った。その後も「共産党維持」を国家最重要課題とし、「思想重視」「資本主義性悪論」を固持し続けた結果、二重三重の遅れを取ることになったのである。

「鄧小平」が政権から失脚させられたが、周恩来に認められ、また周恩来の純粋に国を思う努力の甲斐あって、鄧小平は不死鳥のように蘇り、大胆にも正に命がけで「資本主義性悪論」をはっきりと否定、大鉈を振るった。今までは「間違いだった」と宣言したのである。中国全土に激震が走った。それから中国は一気に舵を切った。「経済発展」を何よりも優先させ「改革開放」の道を突っ走った。

彼はまず、真っ先に日本を訪れ、経済、工業の発展に驚き、日本に学ばなければならないと言い、そして実行した。「上海宝山製鉄所」を作る為、新日鐵稲山会長に、中国に力を貸して欲しいと頭を下げた。新日鐵は全力で力を貸す事を約束した。何度も挫折しかけたが、新日鐵の「日中の架け橋を作るのだ」という気概と情熱、根気と努力、大きな資金提供により、8年の歳月をかけ、1985年9月、上海についに中国初の「製鐵所」が完成した。両国の政府の後押しのもと、試練を乗り越えた、いわば日中両国の歴史的な「初めての大きな大きな共同作業」であった。それ以降の中国の発展はめざましく、数十年の歴史がそれを十分に証明している。

   一方一昔の日本では、西洋の進んだ文物を見て、「あれと同じもの、いやそれ以上のものを、自分で作ってやる」という発想と意気込みが、近代化の原動力になった。そしてその「情熱」は、その後日本の底力となってずっと流れて来たものではなかったか。気の遠くなるような一途な積み上げと、出来るまで絶対諦めない頑なさ。そこに美とイキを感じ取る独自の価値観。それが脈々と北から南まで列島に溢れている。その風土と価値観の日本では、芸術作品や工芸品の数々、カメラや電子機器、車、農作物や、楽器、建築物等等、全てのものづくりの花が開花した。

美しい工芸品を生み出す無数の天下無類の職人たち、一本のネジに一生をかける人、高品質な自動車を協力企業皆で連携して作り上げる「情熱と連携と高度な技術」。我が国ニッポンには、「美意識」「情熱」「丁寧な仕事」どれを取っても天下一品、有名無名を問わず世界一流の人々が数えきれないくらいいた。

ものづくりにおいては、他国に真似の出来ない、至大至剛の基礎を持つ、世界に誇れる国なのである。「MADE IN JAPAN」 という言葉は、日本人が思っている以上に、世界では圧倒的な響きがある。世界共通の信頼の証と言っても過言ではなく、事実日本には世界に誇れるものが随分沢山あるのである。

100年続いている企業も、日本には20,000社以上あると言われるが、こんなにたくさん100年企業がある国は他にはない。この「本物の歴史と本物の価値」が、実は中国企業が一番欲しくてたまらないものなのだ。向こうから見れば本当に「宝の山」なのである。

その我らの「強み」を横取りされたり、パクっと買われたりするのは、あまりにも情けないではないか?自分たちで、この強みを時代に丁寧にアジャストさせ、もっとパワーアップ、自主的に発揮していかない手はない。

しかし、昔の栄光にあぐらをかき、日進月歩をやめ、安穏な生活を享受し続けて来た結果、骨抜き、隙だらけのところを、屋台ごと全部持っていかれているわけだ。今の日本にもうそんなパワーは残ってはいないよと諦め、指を咥えて乗取られるのを、黙って見ていて良いわけがない。

良く考えてみて欲しい。「原子爆弾」を世界で初めて、しかも二個もアメリカから落とされ、間違いなく「世界一悲惨」な状況だったこの国を、戦後の焼け野原、何も無かったこの国を、100年遅れをとっても仕方がなかった状況の中で、たった数十年で、【JAPAN AS No.1】と、アメリカの社会学者Ezra・Vogelに言わしめた、のはどこの誰か?

このJAPAN AS No.1という本は、「アメリカへの教訓」として出された本であるが、戦後奇跡の高度経済成長を遂げた日本を分析、高く評価した書である。不死鳥のようにこの国を蘇えらせたのは、紛れもなく「日本人自身」である。それをアメリカさんは勉強研究しているのである。

この事を今こそ思い出そうではないか!「あの時」に比べれば、「今の困難な状況」など取るに足らず、苦難とさえ言えない。そろそろ休憩は終わりにして、ピシッと立ち上がり、走り出せばそれだけで良いと思う。

そして、今これを読んでくれている「あなた」が今やるべき事は、しのごの言わず、自分の今の持ち場、仕事を、自分が納得いくまで全力でやる、という事である。全力でやって先輩とぶつかり喧嘩したって良いじゃないか、全力でやって専務と嫌な雰囲気になったっていいじゃないか、全力でやって社長に怒られ、給料減らされてもいいじゃないか。そもそも自分の信じた事を、全力で一生懸命やる勇気のある人間は、社長や役員は絶対見ているものだ。そしてあなたのその努力や挑戦は絶対報われる。そういう人間は、適材適所で必ずどこかで会社の役にたつからである。

もし大失敗したとしても、戦国時代のように、まさかあなたの命までは取らない。それすら信じられないのなら、明日即辞表を出す方が良い。それも出来ないくせに、人の批判や文句を言って時間を無駄にしているのは大変みっともない。今報酬を貰っているステージ(会社)が、自分の舞台ではない、と判断すれば、すぐに降りて自分の信じる道を探し行動すべきである。

金を貰って、報酬・保証・保護を享受しておきながら、自分のやりたい事じゃないと文句を言い、ダラダラと時間を浪費する程、無駄な事はない。

それは会社にとっても「迷惑」、社会にとっても「お荷物」、人様だけでなく、最も大切な「自分の一度きりの人生さえ無駄にしている」事だからだ。そういう極めて不誠実な態度であると知るべきである。そしてそのような人間が沢山ぶら下がっている企業は、当然良い物は作れなくなるし、厳しい競争にも勝ち残れない。昔の栄光と名前だけ、人に横から盗まれるか買われてしまう事になるのである。

ここで話を戻すが、ものづくりの基本は、非常に単純明解である。

ご飯は食べる人の事を考えて作る。
家は住む人の事を考えて建てる。
車は乗る人の事を考えて作る。
家電は使う人の事を考えて作る。
洋服は着る人の事を考えて作る。
玩具は遊ぶ人の事を考えて作る。
お酒は飲む人の事を考えて作る。
楽器は弾く人聴く人の事を考えて作る。

これで気がついただろう、

人が「人の事を考えて」「人のために」「ものをつくる」のである。

これこそが、「ものづくりの基本」である。

   ちなみに、上記8項目に関するものだけでも、日本には全て有名なブランドがたくさんあり、世界中の人が知っている。列挙するまでもないだろう。
これ以外の物でも、日本のブランドを数えたらきりが無い程ある。

これは当たり前の事ではない。日本はそれほど真剣に、ものづくりをして来た国なのである。そう簡単に他国に抜かれたり取られたりしていいわけがないのだ!

伝統にあぐらをかかず、技術を磨き、時代を先取りした、イノベーションを考え続け、そして、「世界一クレイジーな情熱」で、ものづくりを続けていく事こそ、最大限に我が国の長所を発揮する事につながると思う。それが、世のため人のためになり、平和の要素にもなるのではないかと思う。

そして実はそれこそが、日本が一番得意で、しかも本当はやりたい事であり、そして確実に出来る事、ではないだろうか?私はそう思う。文句や泣き言を列挙している暇があったら、得意な事、本当にやりたい事を、まずしっかり伸ばして行くように、一人でもいいから行動すればいいのである。

とは言うものの、「そんな事言ったって、今、自分の本当にやりたい事なんて良くわからないし、そんな簡単に見つけられないよ」「この会社に入ったのも、なんとなくだし、今与えられた仕事が、本当に自分の舞台か、そうじゃないかなんて、どうしてわかるんだ」と思っている君は、頭が良い。

そう、その通り、そんな簡単に見つけられるものではない。正解だ。
だからこそ、探さなければならないんじゃないだろうか?そこで、どうして何もしないでぼーっと生きていられるのか?ヤバイと思わないのか?それこそが大問題である。

今「チコちゃん」が大変ブームであるが、今の日本の世相を照らし合せて考えてみるに、とても面白い形で問題提起をしている番組だと思う。物凄く大量の人間が、「ボーッと生きている」のに気付かせてくれる。自分も含めそれを想像すると、ゾッとする。

頭が良いのはとてもいい事だが、行動出来ない、しない、馬鹿になって打ち込む事が出来ない、のはとても不幸な事だ。一方的に与えられた舞台であろうが、自分で好き好んで登った舞台で後悔していようが、関係ない。まずはとことんやってみる、失敗しても良いから、自分が「納得出来るまで」とにかくやってみる事だ。

自分の物にしてみせる、と決めて行動する事だ。やけっぱちでも、テンポラリーでも、何でも良い、今これが自分の舞台と「決める」事、そして「行動する事」。この積み重ねがを作る。「ものづくり」とは、その積み重ねの結果として、人が人の為にやっている事、なのである。

本気で試行錯誤して初めて「良いもの」は出来る。人生もまた然り。「ものづくり」とは「人づくり」。これを忘れてはいけない。会社から給料を頂き、贅沢な舞台まで準備してもらっておきながら、「なんか違うような気がすんだよね〜」などと、本気でやってもいないのに言う資格はない!

つづく

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