痛いファンの話。②
川副さんが好きだ。
川副さんとは、このノートにも度々出てくるが、
バベルというコンビを組んでいるお笑い芸人だ。
ランジャタイの伊藤さんが行うトークライブで初めて絡み、
それからよく会い酒を呑む仲になった。
僕はこの川副という人間が大好きである。
というかこの人間に憧れていると言った方が正しいかもしれない。
僕はどうしようもなく彼に惹かれてしまう。
どうしてそんなに惹かれるのか。
まず見た目が良い。
はいコレ良い川副。
俯いて前髪で目元が隠れている時の良い川副。
ちょっと無精髭が目立つけど許容内。
初めて喋ったのは新宿バッシュという劇場の出入り口前、
いきなり川副さんから挨拶して来た。
「真夜中クラシックさん、バベルの川副です」
「あ、すいません、わざわざありがとうございます」
「ずっと挨拶しようと思ってて。すいません」
驕ることなく腰が低いのも川副さんの魅力である。
トークライブでガッツリ話すようになったのはその後である。
はいコレ良い川副。
無地の黒Tを着ているのは中々レアである。
マスオチョップの西園さんと肩を組み、下をペロッと出している淫靡さがまた良い。
川副さんにはエロさがある。
川副さんが好きな人は分かってくれるのではないだろうか。
もうこの時にはへべれけで、
この後ランジャタイの伊藤さんと西園さんと四人で呑んでいるのに勝手に一人で店を出ていって、
コンビニで買った酒を外で呑みだし、伊藤さんが戻れと言いに行ったら逃げ出して面倒くさくなったのはいつもの事。
愛嬌である。
勿論伊藤さんは
「なんなんだあいつは!」
と頭を抱えていた。
はいコレ良い川副。
高架下を歩いてるだけで絵になる。
手には缶ビールと缶チューハイを持っている。
缶チューハイをチェイサーに缶ビールを飲む川副さん。
以前僕は下北沢のパンクショップで購入した古着の時計仕掛けのオレンジのTシャツを着ていた。
「下北沢のパンクショップで買った古着の時計仕掛けのオレンジのTシャツ」ってのが良くって、
とても気に入っててよく着ていた。
一緒に呑んだとき、僕のTシャツを見た川副さんが
「それ凄く良いね」
と褒めてくれ、僕より似合うだろうと思って僕はそのTシャツをあげた。
川副さんはとても喜んでくれ
「嬉しい!ありがとう!タケイ君マリーズは好きかい?」
と聞いて来た。
マリーズとは毛皮のマリーズというバンドの事である。
僕はこの川副さんの「~かい?」が大好きである。
そしてマリーズも好きである。
「今度唯一持ってるマリーズのTシャツ、タケイ君にあげるよ!」
そうして貰ったのがこのTシャツである。
川副さんとは趣味が合う。
着倒して色褪せたボディには漂白剤の跡もある。
そんなことはどうでも良い。というよりそれが嬉しい。
僕は凄く感動したのだ。
もっと友達とこんなことがしたかった。
川副さんはそれを叶えてくれる。
僕はそんな川副さんの服装なんかも大好きだ。
「そのバッグなんですか」
「コレ?これコーチだよ」
川副さんはコーチのバッグを愛用している。
手に入れた。
「川副さん、僕もコーチのバッグ手に入れましたよ」
「本当だ、これも良いなぁ!でも俺のはヴィンテージのバケツ型っていうやつなんだよ」
手に入れた。
「川副さんコンバースよく履いてますね」
手に入れた。
「川副さん、僕も水色のコンバース手に入れましたよ。あれ、黒も持ってるんですか」
手に入れた。
「川副さんそういえば赤のローカットも持ってましたよね」
手に入れた。
「あれ、この時履いてるのってドクターマーチンで」
手に入れた。
冬になったらよく着ている軍物のコートも欲しいし、こないだ身に付けていたレザーのサコッシュみたいのも欲しい。
バンズの靴も履いてたし、リネンの黒のシャツも着てた。
Tシャツの首元もカットして、デニムの裾もカットしないと。
そういえば川副さんは最近はカセットウォークマンじゃなくCDプレイヤーで音楽聴いてたな。
家にもまだ一度しか行ってない。また行かないと。
次会えるのはいつかな。
夢の一つに自分の書く文章でお金を稼げたら、 自分の書く文章がお金になったらというのがあります。