げんたん

たけしと生活研究会2~正解を求めないいいとこどりの暮らし方


2019年07月27日02:59  久保田翠ブログ「あなたのありのままがいい」から


7月22日
1回目は東京の風雷社中の中村さん。風雷社中が運営するトランジットヤードには重度の知的障害ある自閉症のゲンちゃんが、ヘルパーさんと一緒に生活している。その問題や、課題、日常風景を切り取ったドキュメンタリー上映から始まった。
とても刺激的だった。たくさんの示唆にあふれる言葉や矜持があった。

 レッツが障害福祉施設アルス・ノヴァを立ち上げる少し前、障害者の法律が大きく変わった。「措置から選択へ」。
障害者が自分で自分の生き方を選択できる制度が始まった。
その時に障害者の自立について多くの議論があった。
特に身体障害の人たちを中心に、「地域で生活する」「一人暮らしをする」ということが盛んに言われ、現実、重度の身体障害者の人たちが支援者とともに一人暮らしに挑戦していた。その一方で知的障害者の人たちの自立はきっと議論はされていたのだと思うけれど、「一人暮らし」ではなく、「地域で生活する=グループホーム」という形がある意味理想となっていったのだと思う。

1人暮らしを目標にすると、グループホームは否定的に見えてしまう。結局、入所施設と変わらないではないか。という人もいる。

今回、「たけしと生活研究会」でやりたいのは、一人暮らしか、グループホームかといった2項対立ではない。そもそもたけし(重度の知的障害者)の生活はどうあると楽しいのか。また障害があろうとなかろうと、人が幸せに住まう住まい方はどんな形なのだろうか。
ということをじっくり考えてみたい。
その中に、親との同居もあってもいいし、友だちと住む住まい方もあっていいし、全くの他人と住むことだってあっていい。
そういうことを自由に研究してみたいと思っている。

レッツがいつも、障害も福祉も文化も丸っとアートでくくる理由は、この2項対立的な議論を避けるためだ。
どちらが正しい、正しくないの議論は結局、既存の価値観の上塗りでしかない。それよりも、どちらも混ぜて、時にははいいとこどりもして、解体したり、また構築したりしながら全く違った方法や価値観を編み出して行きたい。
それは「たけしの生活」においてもそうありたいと思っている。

たけしたちは言葉を持たない。だから「私はこうしたいのだ」と明言しない。だからこそその周りにいる人たちが、あーでもない、こーでもないと、自由に考える余地がある。結局真実なんて誰にも分らないのだ。とにかく今の感覚を頼りに、仮にやってみる、実験してみる。そしてどんどん改良していく。
本当にクリエイティブな作業だと思う。

とかく人は答えを求めたくなる。答えがあると信じたくもなる。
しかし、それは仮のすがたであって、時と場合と状況によって、「答え」はいつでも変化する。それに柔軟に対応していくことが何よりも面白い。

私は入所施設も、グループホームも、家庭も、一人暮らしも否定していない。
どう組み合わせるのか、どう編み込んでいくのか。それが私たちが今考えるたけしの生活なのだろう。

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