見出し画像

【お仕事回顧】海賊が活躍する海洋ロマン

【お仕事回顧】この記事はなにか?
・これまでに従事した仕事の振り返りです
・ポートフォリオ的に見せるものです
・自分がスランプに陥ったときに振り返るお話の作り方の備忘録
です

公開許可を取っていないものもあるのでタイトルはボカしてあります
お話の作り方などを記載してあるのでネタバレがあります
(タイトル非公開なのでネタバレも何もないですが)


概要

海が舞台の「逃げる」をテーマにした海賊ストーリーのシナリオ制作


期間

2016年5月~2016年6月

依頼元、依頼経緯

ゲーム制作会社、リピート依頼

関係者

企画窓口担当の方、打ち合わせ無し

仕事内容

ストーリーシナリオ、キャラクター設定、ストーリープロット制作、ストーリーシナリオ制作、その他テキスト各種制作

資料

特になし

納品物

キャラ設定、ストーリープロット、シナリオ、キャラボイス台本

ボリューム

60分尺のアニメくらいのボリュームをイメージ

時系列

各ストーリー依頼→作業→納品

概要

 剣と魔法のファンタジー世界を舞台に描くストーリーです。
 ひとことプロットは 「国を追われたお姫様が海賊の助けを借りて逃げる中で成長する物語」でした。

 季節は夏、舞台は海、ということで海で活躍する海賊達をメインキャラクターにしました。海賊達に助けを求めるサブキャラクター的な登場をするお姫様が主人公でした。
 キャッチワードは「海洋ロマン」「逃亡」です。特に「逃亡」についてはかなり奥行きのある言葉で、角度を変えて切り口工夫し、色んなライトを当て、このストーリーのメインテーマにしました。

 ストーリーの軸は「逃亡物」です。
 主人公が逃げ、協力者の助けを得て、追跡者の追求からどう逃げて戦うか、果たして逃げ切れるのか? を楽しむストーリー型です。

 海賊側には2人メインキャラクターがいて、モチーフは18世紀に活動した実在の海賊アン・ボニーとメアリー・リードをイメージしました。女性2人組で活動した点と、ボニーという名前などからキャラクターの設定をイメージしていきました。逃げることが大得意な海賊で、逃げられた相手は馬の尻尾を眺めるだけ。船はその名も「ポニーテール号」。キャラクターは設定・デザインともにとても気に入っています。

 「逃げる」という言葉にはネガティブなイメージがつきまといます。現実問題から逃げる、戦闘から逃げる、傷つきたくないから逃げる、などなど。口にする時にどうしてもマイナスな意味合いを持つことが多いです。これをポジティブな印象に代えられないか、という着想から物語を構成していきました。

あらすじ

 日本の戦国時代をイメージした東方の国で後継者争いが勃発し、国の血を引く姫様は国宝を持って海を渡って逃げることになります。力がないゆえに争いに負け、都落ちする姫様は敗北感と無力感でいっぱいです。そんな姫様が逃亡するために協力を頼みざるを得なかったのが、逃げることを特技とし、奪うことを生業とする「無敗の海賊」でした。箱入り娘として育てられ、世間知らずな姫様は外の世界を知りません。粗野で粗暴な海賊の船に乗って苦しみますが、海賊達が「逃げる」理由や、「逃げる」ことの意味を知るにつれて、やがて海賊達へ理解を示していきます。姫様は安全な場所に逃げることができるのか? その中でどう成長するのか?

感想

 逃げ始める、というスタートポイントと、逃げ切る、というゴール。 最初と最後が決まっていたため、そこに至るための要素を設定し、各所に散りばめながらほぼ即興でストーリーを組み立てていきました。ライバル海賊との戦い、伝説の海賊、謎の人物とその正体、かつて父親が挑んだ未知の海域、友を守るためにその海域に挑む海賊。それぞれ中二心をくすぐる設定とワーディングを心がけました。
 描きたかった感情は「矜持」です。自分の生き方を恥じることなく誇る感情。身近な例では仕事に通じるでしょうか。警察官が正義の心を持つように、救急隊員が人の命を助けたい、という気持ちを持つように、自分の仕事や役割に対して正しくプライドを持って生きる。仕事に貴賤はありませんが、そんな人は非常にかっこよく見えます。

 武士道と誇りを持ち逃げることを恥じる姫と、矜持などを持っているようには見えない海賊。高貴な生まれ故に世間知らずで薄いプライドを持つ姫と、自由気ままに逃げ回っているように見えてしっかりと芯のある海賊。立ち位置も生き方も違う2人の対比と、友情が生まれていく過程がうまく描けたと思います。

 主人公たちは最後の戦いを経て、大嵐から晴れ渡る海へと「逃げる」ことに成功します。嵐の海からバトルを経てそれを表現することができました。  お気に入りのシーンはいくつもありますが、やはりRPGのシナリオなので、バトルというゲーム性とシナリオが融合した演出を表現できた時はシナリオライター冥利に尽きます。

まとめ

 当時は時代的に「ブラック企業」といった言葉が出てきた頃かなと記憶しています。逃げないことは美徳ではありますが、それに固執すると大切なものを失ってしまいます。現代ではかなり考え方が変化してきていますが、まだまだ頑張りすぎる人は多いように思います。 全力で戦うコマンドは使い所を考えたいものですね。 逃げることは恥でもなんでもなく、選択肢のひとつとしていつでも選べるようにしておきたいと思いました。

 今回のエピソードは独立した物語ですが、姫様を主人公にしたシリーズの一作目、という側面も持っていました。姫様の今後の成長についてはまた別のエピソードでまとめたいと思います。


印象に残っているシーン&セリフ

姫が海賊に対してツンツンする序盤

「脅威から逃げてばかり。あまつさえそれを喜ぶなど。
 貴女達は、敵と正面から戦おうとは思わないのですか?」

「はっはっは! トウドの人間らしい言葉だな。トウドでは玉砕戦法が流行しているのだろう? ブシドウと言ったかな?」

「敵を前にしたら潔く戦うのがトウドの武士です。」

「はっはっは! ポニーテール号の船長がトウドの戦士だったら、切腹ものなのだよ。なにせ我らは、3代に渡って逃げの名手! 親父殿の逃げっぷりは、東の列島の語り草なのだ。」

「逃げ足を誇るなど、恥ずかしいとは思わないのですか?」

「……矜持は人それぞれだ。しかし、祖国から逃げようと頑張る姫が言っても説得力はないのではないか?」

「っ……………………!」

「私には国で待つ母がいるのです。民や、残してきた家臣たちも……。
 力さえあれば……力さえあれば、私は彼らを見捨てずに戦いました。
 逃げたりせずに……! なんのしがらみもない海で自由を謳歌している貴女たちにはわからないでしょうね。」

「はっはっは! 自由を歌うにも力がいるのだぞ、姫。海賊の生き様は不自由との戦いの歴史だ。それらと戦う覚悟があるからこそ、我々は自由なのだよ!」

逃げることに理解を示し始める中盤

「戦って負ければ、人間はそこまでだ。
しかし、逃げればもう一度戦うことができる。」

「……………………。」

「本当に戦わなければならない時はいつか訪れる。そこで全力を出せるように、ポニーテール号は逃げ続けるのだよ。」

「姫。逃げることは恥に思えるかもしれないが、
その時を五体満足で迎えられるように、今は共に逃げるのだよ。」

「……逃げるだけの臆病者と思っていました。
あのような戦い方も、あるのですね。」

お別れのシーン

「まもなくお別れだな。ライトニングポニーはいつでも姫の乗船を歓迎するぞ。」

「雑用ならいつでも歓迎だ、コラァ!」

「雑用などしている暇はありません。私には、使命があるのですから。」

「海の犯罪者の力など、極力借りたくはありませんし。」

「はっはっは! 賢明だな! でも、無理はするなよ?」

「大丈夫です。いざとなったら……逃げますから。
 その時は、また……。この船に、乗せてください。」

「……………………。」

「いつでもこいや、コラァ!」

「……うむ! 逃げたくなったら、ライトニングポニーの
尻尾を思い出すのだよ!」

「……………………はい。」


最後まで読んでいただきありがとうございました!
面白ければぜひハートマークをポチり、お願いします。
ではまた!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?