訪問看護〜発熱時はどうする?〜
訪問看護で不安なことの一つは、緊急時の対応だと思います。
今回は『在宅で出会う「なんとなく変」への対応法』の著者の家研也先生の講義を元に発熱評価と対応の仕方についてお伝えします。
発熱評価の3ステップ
発熱時には次の3ステップで対応を考えます。
緊急性判断
全身状態の把握
熱源探し
順に説明していきます。
1.緊急性判断
発熱時にはまず、緊急性が高い敗血症を除外できるかを考えます。
敗血症はqSOFAスコアで評価します。
qSOFAスコア
以下のうち2項目以上該当の場合、重症感染症の可能性あり
収縮機血圧100mmHg以下
呼吸数22回/分以上
意識レベルの低下
qSOFAスコアでは普段の状態と比べるのが大事です。
普段の訪問でみている状態と比べて判断してください。
意識レベルなどご家族からの情報収集も大事です。
また、悪寒旋律があるとさらに敗血症が疑わしいので要注意です(15分ぐらい連続してふるえていると可能性が高いです)。
2.全身状態の把握
緊急性判断後は全身状態を把握して、これから重症化しないか?を考えます。
全身状態は普段と比べて経口摂取や排泄、ADLの状態などが悪化していないか、症状の経過はどうか考えます。
特に、普段を知るご家族から情報収集することが大事です。
ある研究では、「発熱+普段と比べてなんとなく変」という状態の77%に感染症が関連していたそうです。
普段を知るご家族の「なんとなく変」はあなどれないですね。
この時点で緊急性があると判断したらすぐに医師に報告します
それ以外は熱源のアタリをつけていきます。
3.熱源探し
熱源探しは
よくあることはよくある
患者背景が大事
という視点で考えていきます。
在宅高齢者の研究では、発熱の原因は肺炎が最も多く、それに続いて軟部組織感染(蜂窩織炎など)、尿路感染の順で多くなっています。
つまり、肺炎が最も多いのでまず疑います。
その後多い順で考えていくとアタリがつきやすいです。
実際訪問していても高齢者の発熱は肺炎が多い印象です。
患者背景から考えることも大事です。
ウイルス感染者との接触歴がある方はウイルス感染を
尿道留置カテーテルをしている方は尿路感染を
静脈留置カテーテルがある方はカテーテル関連感染を
脳梗塞後などでむせ込みがある方は誤嚥性肺炎を
慢性化した褥瘡がある方は骨髄炎を
それぞれ疑い、アタリをつけることができます。
よくある感染症のチェックポイント
最後によくある感染症のチェックポイントをあげます。
感染症を疑ったらこのチェックポイントをチェックしてみてください。
肺炎チェックポイント
呼吸数(>26回/分以上で可能性上昇)
咳・痰(ないこともあるので注意)
Spo2低下
軟部組織感染(蜂窩織炎など)
局所の発赤・腫張・熱感・疼痛
褥瘡があれば周囲の発赤や痛みの増強を確認
全身くまなく皮膚を観察!
尿路感染
頻尿
尿の変化
腰背部叩打痛
ただし、高齢者の場合は典型的な症状が出ないことがあるので、普段の状態と比べて全身状態から評価することが大事です。
※海外の高齢者対象の研究だと重症でも高熱とならないケースがよくあるようです。口腔温37.2度以上で菌血症が増え、口腔温37.8度以上で重症感染症が増えることが示されています。
医師への報告
先生への報告は緊張しますし中々難しいと思いますが、家先生の講義ではうまく伝えられなくても「なんとなく変」を共有して欲しいとおっしゃってました(先生は「なんとなく変」と報告してもいいと言っていましたよ)。
明らかな重症じゃなくても、「なんとなく変」と感じたら臆さず報告して医師と共有するのが大事だと思います。
参考までにSBARという元々米海軍で使用されていた情報伝達スキルをお伝えします。
Situation(状況)患者さんに何が起こっているか?
Background(背景)臨床的背景と状況は何か?
Assessment(評価)何が問題だと思うか?
Recommendation(提案)どんな対応をした方が良いと思うか?
まとめ
今回は訪問時の発熱評価についてお伝えしました。
発熱時はまず緊急性を判断し、緊急性があると判断したらすぐに医師に報告してください。
緊急性の判断にはqSOFAが有用です。
また、「なんとなく変」という視点が大事で、普段の状態と比較して全身状態を評価することが大事です。
熱源探しでは「よくあることはよくある」「患者背景」の二つの視点から考えると熱源のアタリがつけやすくなります。
発熱に遭遇したら慌てずに3ステップで評価して対応してください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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