見出し画像

【解説】高難度作詞作曲「ヨメイリマールクナリマスロマンス」

今年のクリスマス曲「ヨメイリマールクナリマスロマンス」の解説記事となります。未視聴の方は記事読む前に聞いてもらえると嬉しいです。

コンセプト

1・2・3・4…という順番で並んだ歌詞を、
①1・2・3・4・5・6・7・8
②1・3・5・7
③2・4・6・8
という3パターンの読み順で読めるように作り、かつそれぞれ別個の意味を持たせようというコンセプトとなっております。
①の時は普通っぽいクリスマス曲、②③だとアンチクリスマス曲とかデP曲になるイメージですね。

…それだけだったら簡単なんです。いや嘘です。簡単じゃなかったです。
歌詞だけでなく、1・2・3・4…という順番で並んだ楽曲も、
①1・2・3・4・5・6・7・8
②1・3・5・7
③2・4・6・8
という3パターンで成立させることが出来るか!?というのが今回のもうひとつのテーマとなっております。

何が大変なの?歌詞編

歌詞に関しては改めて解説しなくてもなんとなく大変そうだなぁというのはわかってもらえると思います。
文章って普通は、
〇〇が △△だ、〇〇を △△した、
というような構成になっています。
それを並べ替えて、「〇〇が〇〇を」「△△だ△△した」としても決して文章にはならないわけです。意味も通じないわけです。
普通の文章を作って、並べ替えても成立する文章が偶然できた、ということは非常にレアだと考えるべきでしょう。

もう少し突っ込んで具体的な話をすると、
①1・2・3・4・5・6・7・8
②1・3・5・7
①と②で意味を逆にすることは可能な場合が多いが、全然関係ない文章にするのは非常に骨が折れます。例えば…
①1君を・2死ぬまで・3愛する・4という・5気持ちが・6完全に・7なくなる・8ことはない
②1君を・3愛する・5気持ちが・7なくなる
のように、文章のどこかに否定形を含んでいれば(この場合8)それを切り取れば逆の意味には簡単にできるわけです。
しかし結局文章の「内容」としては、愛するかどうかという話をしているのは①も②も同じなわけで、「並べ替えたら全然関係ないが意味が通じる文章になる」ためには、「単語を中途半端な場所で区切る」という方法が一番手っ取り早い方法になってきます。
しかしこの、「途中で切って前後に意味を持たせられる単語/文章」というのが無いんですわ…少ないんですわ…

また、先ほどの例文を再度見てみると、
①1君を・2死ぬまで・3愛する・4という・5気持ちが・6完全に・7なくなる・8ことはない
③2死ぬまで・4という・6完全に・8ことはない
と、③の部分が意味をもたない文章になってしまっています。
②を成立させたいがためにむりやり文章を作ると③が成立せず、逆に③を成立させようとすると②が成立しない…とまぁ、完全にシーソーなわけです。アンヴィヴァレントな関係なわけです。(全然関係ないけどアンヴィヴァレントって単語はアリスソフトで覚えました)

まとめると今回の作詞は
1.そもそも言葉ってもの自体、並べ替えて意味通じることが少ない
2.並べ替えて逆の意味にできても別の意味にすんの激大変
3.並べ替えて意味通ったとしても、残りの単語は意味通らない
の3つの壁が大きく立ちはだかるわけです。

何が大変なの?楽曲編

そもそも音楽の構成とは。TSDTとかありますが。わかりやすく書くと、ざっくり下記2パターンがいわゆる楽曲の構成としてわかりやすいかなと思います。

A. 安定→不安定→不安定→安定
Cメジャーの曲だったら、Cからはじまって、FとかGみたいな不安定なコードに動いて、最終的にCで着地する、というパターン。

B. 提示→返答→提示→返答
いわゆるクエスチョンアンドアンサーという構成、マーリーアーと提示したらドーラークウーと返事するということです(伝われ)
かえるのうたが、部分が提示、きこえてくるよ、部分が返答といったほうがわかりやすいか。

さてA.を並べ替えてみると。
安定→不安定 & 不安定→安定 が出てきますね。
これ正直、どちらも曲になりません!急に始まる事故案件&ブツ切り途中でなげっぱなしジャーマンさようなら案件です。

B.を並べ替えても、
提示→提示 & 返答→返答
これはまぁ、曲にならないわけではないんですが、まぁ…ならないんです。
かえるのうたが、けろけろけろけろ
きこえてくるよ、ぐわっぐわっぐわ
と歌ってみるとわかると思うのですがまったく繋がらず違和感のみになってしまうわけですね。

じゃあ「並べ替えて成立する曲」はどうすればいいか?を簡明に考えると、一部のHipHopのようにメロディがなくコードもほぼ動かない構成にしてしまえば、並べ替えても何の支障もない…という結論になるわけなんですが。そんなことでは楽しくない。ので色々がんばってみました。
(厳密に言うと、「音楽」を保ったままでは厳しい可能性が高いですし本曲でそれが出来てるかというと疑問ですが許してください何d)

本曲の構成

間奏(間奏AとBを交互に鳴らす)
Aメロ(1・2・3・4・5・6・7・8)x2
Bメロ(1・2・3・4・5・6・7・8・9・10)
サビ(1~16文字)x2
間奏(Aのみ)、間奏(Bのみ)
Aメロ(1・3・5・7)x2
Bメロ(1・3・5・7・9)
Aメロ(2・4・6・8・10)
Bメロ(2・4・6・8・10)
サビ(奇数文字目)x2
サビ(偶数文字目)x2
余興(マロンシマリス)

本曲の構成は上記のようになっておりまして、サビ以外の間奏・A・Bメロは(ほぼ)楽曲のデータを切り刻んで順番を組み替えただけとなっております。
今回の曲の唯一優秀な点として、一回曲データ作ってしまえば、切り刻んで並べ替えれば2番の作詞作曲をしなくていいという点…とか作業する前は思ってたんですが正直全然楽ではなかったです。

Aメロ

2小節ごとに区切って、切って順番並べ替えて貼っただけで作ったのがAメロです。
「Aメロ」として全部通した場合と「Aメロ左側」を通した場合はCメジャーの曲なのに、「Aメロ右側」を単品で聞くとFメジャーになります(多分)。…とだけ書いても「ふーんよかったねすごいね」で終わりそうなんですが…血と涙とうんぬんかんぬん。頑張ったからだれか褒めて。とりあえずメロディーのクオリティは犠牲になりました。なってない?照れるね

  クリスマス はじまるころ
  互いにあい しあい 二人
手をふりあって 笑い合う
    悲しむ ことはもうない

この左側はシンセベース+ギター、右側はフレットレスベース+ピアノの組み合わせで楽器構成が2小節ごとに切り替わる仕掛けとなっており、前半で違和感あっても後半の並べ替えセクションでそこまで違和感なく通るようになっています。
違和感のある部分を散らせたため(A全体では楽器編成、A左側ではコード進行、A右側はキー)全部が全部気になるってのはあまりない…はず…
メロディとコード進行に関しては、はじまるころしあい~のキーがFになるパートのメロディをいかにCと融合させるか、みたいなコンセプトだったはずなんですがなんかもう曲作り終わったから脳みそから記憶が抜け落ちててやばいおぼえてない、B♭殺すっていう感情は覚えてます

Bメロ

Bメロは、(同じコードx2)x5という構成になっており、1小節ごとの並べ替えを行いました。要するに、Bメロ(1・3・5・7・9)とBメロ(2・4・6・8・10)のコード進行はまったく同じです。
Bメロに関しては正直メロディの違和感が強い…、技量及ばずという感触です(技量でなく企画に無理があるのかもしれない)
Aメロと同じく偶数小説と奇数小説でキーごと変える方法の方が活路があったかもしれない。
同じ企画で曲作ろうと考えている人(いないよね?)は是非そうすることをおすすめします。というより、並べ替えの単位は2か4小節が現実的だと思われます。1小節並べかえは無理がある。

サビ

サビは「奇数文字目」と「偶数文字目」で両方文章もメロも成立するようにしております。
が、
切った貼ったで曲にするには犠牲が大きすぎるという判断のもと、文字と音符のみ共有、バックのトラックは別個作成しております。
歌詞のしたにアルファベットがありますがあれが音符です。ドレミで書いたほうがわかりやすかったと今気づきました。てへ。

それはそうとぎりぎり歌詞の意味通じてませんね。薬押すシマリスって…何だって感じですし良い丸なマロンとかも何?って感じですもんね。日本語と私の限界です。

おわりに

今年の春ごろ、「よーし今年はモールス信号の曲にするぞー」とか思ってモールス信号の勉強をしてたんですが(9か月前からクリスマスの用意をするデPの鑑)、夏に「54字の物語」を見ていたらその中に「上下に区切って読むと意味が逆になる」という作品がありまして。「あーこれ曲にできそうな気がするなー」とか安直に思ってしまったのが元凶でした。

マロンシマリスに関しては正直、やり切った感が非常に強いです。
〇マ〇スという単語を探していた時、「シマリス」「ロマンス」を見つけたのがきっかけです。
「メリークリ〇〇ス」「se X-MAS」の二つはいつか使いたいと思いつつ10年以上「なんか安直なんだよな…」と先延ばしにしてきたので今回両方消化できてとても光栄です。

作詞作曲に強い縛りを設けながらも、デPらしさから逃げない…そこに痺れるけどあこがれてはいけません。

そういえば、今回の曲作りという名前の修羅の道において一つ悟りを開きましたので皆様と共有します。
「物事、やらない理由はいくらでもあるがやる理由は無い」
また賢くなってしまいました。縛りプレイは多々あれど、縛れば縛るほど気持ちよくなる人種は少ない。ここから先デPはどこへ向かうのか。今から来年のクリスマスが恐ろしいです。

長文乱文にお付き合いいただき、ありがとうございました。良いお年を。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?