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ワンマン列車について

最近、人員削減という目的もあり、全国的にワンマン運転が増えていますね。以前はワンマン運転=田舎の列車というイメージがありましたが、今では都市圏の比較的乗降が多いような線区でもワンマン運転を実施している路線もあり、逆にワンマン列車が存在しない地区を探す方が難しいのかもしれません。

ワンマン列車、やはり運転士さんはあまり好ましくないものと感じているようです。
運転士さんから車掌である僕に対して「会社はお前たちの車掌の仕事を〇〇円で買っているんだぞ!」と、言われたことがあります。
これは運転士がワンマン運転を乗務した時に貰える手当てが○○円と僅かだったことから、人件費を削減に走っていることへの皮肉と、なんでもワンマン運転にしていく流れを危惧しての言葉だったかと思います。
余談ですが、その〇〇円というのは、ワンマン列車に乗務する本数に限らずその乗務する日に対して付与されるので、例えば1往復しかワンマン列車に乗らない(他は車掌乗務列車など)日でも、ひたすらワンマン列車に乗務しなければならないような日でも、同じ金額の手当てというのも、不満の槍玉にあがっていました。

ワンマン列車にすれば、当然の如くその分人件費は削減できます。
勿論、ワンマン運転に対応する機器を整備するための費用は掛かりますし、多少の経費は掛かりますが、人件費に比べれば微々たるものでしょう。
ラッシュ時間帯もワンマンで対応できるレベルのローカル私鉄であれば、車掌を完全に無くすことによってかなりのコストカットが出来ますし、朝晩は車掌が必要…という場合でも、日中は車掌を他の主要線区に回すことによって、全体的に人件費を減らすことが出来るようになります。

簡単に説明すると、
主要幹線であるA線の乗務員が、9時~翌9時の勤務をメインに回しているとします。当然24時間勤務。拘束時間が長い分、それだけの間賃金も発生します。
しかし、近隣のローカル線・B線が日中時間帯のワンマン化により、車掌は日中、ヒマになってしまいました。
ということで、B線の車掌が日中はA線に出稼ぎし、A線の乗務員の持ち分を一部担当することにより、A線の乗務員の勤務を例えば15時~翌9時などに減少させることも可能です。
これは僕の職場でも行われていたことで、恐らく他の都市部とローカル線が近いような職場でも行われていることでしょう。

安全に関する仕事というと、運転士の仕事は走行中の運転操縦。停車してから発車までのドア扱いなどは車掌の仕事と、うまい具合にわかれています。
ずっと張り詰めるのではなく、やはりそれぞれ、少しは気を抜く時間も必要なわけなんですね。

それがワンマン運転となると、運転士は運転業務だけでなく、ドア扱いやお客さんの対応なども一手に引き受けなくてはならず、実際の負担ももちろんのこと、心理的な負担もかなり掛かると思われます。
時々、ワンマン運転の列車であっても、高校生のテスト対策などで増結し、昼間も車掌が乗務するというパターンがありますが、そんなときは運転士さん、ラッキー嬉しいわ~!なんて言っていたりするので、やはりワンマン運転と車掌乗務列車ではかなり違うのでしょう。
まあそんな時、車掌はアケ番で延長戦になっていたりするので、あ~眠いよ~なんて思いながら追加の1往復に臨んでいたりもするのですが。

まあ僕の乗務線区は朝晩のラッシュ時間帯は増結するとともに、殆どの列車で車掌も乗務するので、まだマシと言えます。
場所によっては、5両であってもワンマン運転。ドアへの監視カメラ設置などで安全は確保しているということですが、大勢の人が乗り降りするようなところでは、運転士だけに全てを任せるのは何かあった時の不安としては大きいと思います。

確かに現在、技術の進歩により、自動化・安全装置の拡充などは進んでいます。運転に関しては自動運転の研究も進み、近い将来には在来線であっても、車掌が運転保安要員として乗務し、運転士はいないという形のドライバレス運転も始まるでしょう。(東日本の山手線などでは、そういった形を目指しているみたいですね)
恐らく、現在の車掌にプラスアルファで研修を受ければ、国家資格を取得しなくてもよいという形になるかと思われます。そうすれば研修に対する費用も圧縮できますし、運転士に対する諸手当も削減できます。(とはいえ、より責任が重くなる車掌に対して手当てを増額するのは必要と思います)

しかし数百人いや千人を超える乗客が乗る列車に対して、乗務員が一人というのもどうなんでしょう。
二人でもそんなに変わらないという意見もありますが、運転士と車掌は万が一のときに相互に補完しあえる関係でもあります。
例えば事故等で片方が何らかの事情で動けなくなったとしても、もう一人がお客さんの誘導をしたりということも可能です。

そう考えると、安易に人員を削減するばかりでなく、もう少しある人員を確保した上で、他のムダなことを削減することを考えてもいいのではないでしょうか?
それなりに人は乗っている(利用者が充分にいる)というところでさえ、極限までコストカットを進めなければいけないという現代の鉄道。そもそもの収益構造に問題があるのかもしれません。

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